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第20ゲーム『一対一の大将戦』



 『撃鉄甲冑のゲンジョー』

 このゲームをしていて耳にしないものはまずいない。

 赤の柱国の最強クラン、テスラレッドのリーダー。

 巨漢であり、基本ダメージを受けつけない。

 さっきの言動からHPにステータスを振っているとのことだが、恐ろしいのはそのスピードだと誰もが言う。

 行動の動作がまるで歴戦の兵士のように素早く、さらに接近戦を仕掛けたものはその素早さに翻弄され一撃必殺の攻撃を叩き込まれ戦闘不能に追い込まれる。

 理不尽が鎧を着ているような存在。

 試合に出れば歴戦連勝。結果としてわずか半年強でこのゲームのコアプレイヤーまで上り詰めてしまった。



 その人物が目の前にまさにいる。

 広場はすでに土煙のエフェクトは消えており、その深紅の鎧についている歴戦の傷跡までくっきりと目に見える。

 僕のアバターの二倍三倍もあろうかっていう身長。

 VRゲームの特性上、平均的な男性がこれくらい体躯大きいアバターを使う場合、リアルの肉体と感覚が狂うはずだ。

 となればプレイヤーもきっと巨漢で名のあるスポーツ選手とかの可能性もある。

 リアルのフィジカルや技量とかもこのゲームは割と反映してくる。

 このまま肉体だけの勝負をやった場合、おそらく負ける。

 まだ間合いはあるが生半可な攻撃だと受け流されてしまうだろう。







 ――相手からしたら、これは決闘という名の『処刑』だ。



 ▽ ▽ ▽ 



「まずは俺から行くぞォ!」

 ゲンジョーの斧の一撃が僕へと迫る!

 僕は左へとよけようと体を傾ける。

「左か!」

「グッ!?」

 斧は肩へと直撃する!反応速度が速い!これが上位プレイヤーか!?

 僕はチェーンソーを回転させ脇腹めがけて一撃を入れようとする!

「甘い!」

 いつ手を動かしたのかわからないほど素早く斧で、チェーンソーをはねのけさせる!

 そしてそのままカウンターの回し蹴りを僕はボディにもらう!

「素早い……!」

 今のでHPが結構削れたし、軽いノックバックを食らい後ろへと下がる!

 まずい!隙ができている!?ペースにのまれている!?

 そう思い顔を上げるとタックルが来ることに気づく!



 ならこのままチェーンソーで受け止めてその体を斬る!

「そうはいくか!」







 ん?

 僕が動くより先に相手はバックステップを取った?







 ――なんだ?この妙な動き?







 いくら上位プレイヤーだからって行動が速いからって、僕が攻撃するより先に回避するのはいくら何でもおかしいな?



 チーターか?いや、でも最上位プレイヤーなんて運営が調べていないとは考えづらい。

 残りHPは少ないが、確かめるか……。



 アイスチェーンソーを左賭けめがけて振りかぶっていうように陽動しつつ、ボディめがけて右足でケリを繰り出してみる。

「右足か!?」

 僕の繰り出した右脚をゲンジョーは掴み、僕を上空へと投げ飛ばす!

 僕は落下ダメージを受けて広場へと落ちて転がる。



 やはりか……どういう絡繰りがあるのかはわからないが、僕が入力した行動が先に相手に読まれている。

 まるで()()()()みたいなスムーズすぎる動きだ……。

 行動に無駄がなさすぎる……。

 だが斧は銃よりも慣れていないな……むしろ体術を使ってくる。

 だけど僕も残りHPが3、4割近くになってきた。一気に決めなきゃ……。

 僕は何とか立ち上がり体制を立て直し、敵を見定める。



 あの素早く、こっちの手の先を読んでいるような敵にどう攻撃を当てればいい?

 死角を突くだけじゃだめだ。何にか手はないか……?







 そう思っていた矢先ゲンジョーは斧を大きく構える。







 ▽ ▽ ▽ 



「こうなったら必勝必殺の一撃で終わらせてやる!!

攻撃アタックスキル:ボルケーションクラッシュ!!」

 ゲンジョーは僕へ向けて斧を振りかぶる!!射程距離はある……

 だが明らかにこの攻撃はまずい!!

 手に持っていた斧が地面へ突き刺さり、地面がひび割れる。

 射程がある、見た感じ遠距離攻撃ではない。

 考えられる可能性があるとすれば一つだけ。





「高威力範囲攻撃か!!」





 地面が揺れ僕は膝をつきバランスを取ろうとする。

 ひび割れた先から赤いマグマがほとばしりアスファルトを天高く穿ちながら生えてきたのは、龍のような火柱!!

 四方八方から同じようなマグマの火柱が昇って、それが僕を()()()()

 ゲンジョーはマグマの向こう、僕の武器のアイスチェーンソーはさすがにマグマを凍らせるなんていうことはできない!

 攻撃手段はないし、上から少しずつマグマの火柱は形を変え上という逃げ道をふさいでいく。



 ▽ ▽ ▽ 



「青の中堅、確かプレイヤー名はオトだったな。お前はこれで終わりだ。」



 どうすればいいどうすれば……。

 あと数秒で終わりだ。

 考えろ、一秒でいい!打開策を……!!

 火……火……ひ………?





 ――最近、あったよな。





 教室、小さな太陽。

 路地裏、爆撃。



 あの時は盾になったものがあったよな?





 ――盾……。



 僕のスキル、パラライズ&ガードは手前までしか防ぐことはできない。

 だが守り方さえ工夫すれば、これはきっと打開できるはずだ。

 路地裏の時迫りくる炎に対して押し負けた。

 あの時は後ろにタクローがいたから、進むしか手段がなかった。

 教室の時は後ろに飛び下がり、校舎の外壁が太陽を防いでくれた。



 押して駄目なら引いてみな。

 今は僕一人だけ、教室の時みたいに進むんじゃなくて後退さえできるなら……。





 四方八方全面にマグマが広がるこの状況下……。すでに鼻先はマグマ……。





 そうだっ!!向きは!!後退する方法は!!





 ▽ ▽ ▽ 



「まぁ中堅なんてこんなものだ。赤き本の保有者の言う通りだったな。

眉唾だと思っていたが……。」

 くるりとマグマに背を向き、斧を手に取り深紅の鎧は青きフラッグへと向かう。

 勇ましく堂々と。

「オペレーター。こちら、ゲンジョーだ。ああ、あっけなく片付いてしまった。

素晴らしく中堅らしき、浅はかな終わりだった。残念でならない。

これから一気に決める。」

 オペレーターと事務メールの様に淡々とやり取りをする男はマグマを一瞬疑うように一瞥した後、小さくため息を吐く。

「期待しても仕方がない。まぁHPをここまで削ったのだ。

中の上だっただけでも良かった方か。速攻で終わらせてやろう

上昇バフスキル:絶対加そ」










 ――ここだッ!!このタイミングだ!!









「捕まえたぞ!!ゲンジョーォォ!!」

「きゃ……なにぃ!?」



 僕はマグマを払いのけて、一気に飛び出し後ろからゲンジョーを羽交い絞めにする!

「な、な、なんなんだよ!お前ッ!

放れろよ!放れなさいよ!!」

「嫌だね!!」

 このタイミングをずっと待ってた!!こいつが隙を見せるこのタイミングを!!

 どれだけ格下に油断しないといっても、油断を見せるこの一瞬を!!



「お前は倒したはずッ!なぜッ!?」

「僕のスキル、パラライズ&ガードは周りのオブジェクトから盾を生成する。

お前の一撃必殺のマグマ、アレは『マグマ』というフィールドに残る性質上、『実体のないエフェクト』ではなく『物質オブジェクト』として判定されるんだ。だから物質マグマを盾に変化させしゃがみ。

スキル再使用可能になったあと回数限度、最後のパラライズ&ガードで地面をえぐり、開いたくぼみの中でずっと息をひそめてお前の隙を伺っていたのさ!」



 後ろに後退できないなら、下へと後退すればいい!





 こうやって解説している間もゲンジョーは僕を振りほどこうとする。

 だが僕は必死にしがみついている!こうしていれば派手な攻撃は撃てない!

 このまま、なんとか発見した()()へ誘導できれば僕の勝ちだ!!

「離れろ!体にしがみつくな!!」

「嫌だね!」

 僕は口でチェーンソーの紐を引っ張り、相手の足を切断しようとする!!

 だが相手もしがみつく僕めがけて、斧をめちゃくちゃ振り回す!



 相手は突然の僕に混乱している!

 自分の背中にいる相手ってのはVRゴーグルやH(ヘッド)M(マウント)D(ディスプレイ)の画面の都合上、攻撃が当たるわけがないんだよ!

「ぬぅん!!」

「まず!?」

 だが相手は僕が足に突き刺していたチェーンソーへ斧をぶつけ互いの武器が壊れる!



「このまま壁に押し付けて潰してやるのよ!!」

 ゲンジョーは叫びながら勢いよく後ろへ下がる!

 バックステップをしタワーの外壁で僕を押しつぶす気だな!?








 ――ようやくこのタイミングが来た。







「へ!?」





 僕とゲンジョーは天地がクルっとひっくり返る。

 思惑通り転んでくれた。

 今、僕らはきっとサマーソルトのような体制で転び、地面へと向かっている。

 僕をつぶすことに夢中になった。

 足元がおろそかになってくれた。

 VRってのは体感型一人称ゲームだ。

 そこで一番欠落するのが足の触覚だ。

 このゲーム(VR)で後ろ向きに進むのは難しいよなぁ。

 だから僕がしがみつきながら取り出しておいた、僕の()()()()()()()、回復水晶(巨)を踏んづけて転んだんだよ。



 そして地面へ向かっているが、そこはさっきまで僕が隠れていた場所。

 マグマの中にある不自然なくぼみ。





 僕は最初ミカにこの場所の詳細を聞かされた時思ったんだ。

 ミカはこう言っていた。

『みんな少しよく聞いて、このエリア超絶狭い!

見た感じツインタワー型のビルが一つぽつんとあるだけ!

臨時で急ごしらえに作られたテストエリアっぽい!』

 じゃあ、このエリアが仮にテストエリアだとして、()()()()はどういう設定がされているの?

 地中はどういう判定なの?

 こいつと初めて戦った時のあのバグ以来、壁抜けとかがどう判定されているのか少し気になっていた。

 ゲンジョーの技で破壊された地面オブジェクト、そして周りの物質オブジェクトを取り込んで生成される僕の盾。





 それによってこのエリアの地中を検証ができた。

 地中という存在の答えはシンプルだった。





「このエリアに地中なんてねぇんだよ!!」



「な!?」

 僕は体の重心を傾け、空中を回転していくゲンジョーをさっきまで潜んでいたくぼみ……つまりは地中(エリア外)へと引きずり込む!

 ようは『床抜けバグ』でこいつを倒す!!





 このエリアの下は強制退場ゲームオーバーゾーンが広がっている『虚無』だ!

 ゲームの地面はある一定の判定と『床』という物質オブジェクトだけで構成されている!

 その下にあるのはプレイヤーを排除する強制退場ゲームオーバーゾーンだ!!

 地中なんて容量が重くなるものゲームに搭載されているわけないだろ!!

 僕はその仕様もバグもを手に入れた時、してきたからよく理解している!!





 ()お前が落ちろ!!ゲンジョー!!





 僕は転んだゲンジョーを穴に叩き落す!

 落ちないようにこらえ、頃合いを見計らっている間、掘り進んできた希望だ!

「うわっ!?や、やめろ!!」

「これで終わりだぁあああ!!」

 それへこの転んだ位置エネルギーで巨漢こいつをねじ込む!!



「きゃああ!!」

 ゲンジョーは穴にするすると入っていく。

 僕は巻き込まれまいとゲンジョーから放れ、穴の縁に手をかけて引っかける。

 現実世界では地面があるものの、下を見るのは少しヒヤッとする。

 ゲンジョーは悲鳴を上げながら虚無の中、強制退場ゲームオーバーゾーンへ落下していく。







「こんな勝ち方、絶対許さないのよ!!このクソマンチキッズがああああッ!!」







 そういいながらゲンジョーは退場した。

 悪いね、ゲンジョー。

 色々と()があってピタゴラ装置を組むのが、僕は得意なんだ。

「リベンジ完了だ。ミカ、乗り物枠のドローンを操縦して撹乱して。」

『おつかれー了解だよ♪オト!』

 僕は地面へとよじ昇る。急いでフラッグを破壊するぞ!

 早くしないとカルビとクロスがやられて僕らのフラッグが壊されてしまう!!












 ――そんな時、僕がフラッグめがけて駆け出そうとした瞬間、試合終了のアナウンスが流れる。






※ブックマーク、評価、レビュー、いいね、やさしい感想待ってます…!!

この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。



■ ■ ■ ■

~FrG豆知識のコーナー~

■ ■ ■ ■

???「まったくあの子は何をしているの……?」

???「ちょっと行ってくる。」

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