第10ゲーム『二人目の失踪』
僕らが意気揚々と完全試合を決め込み、青の柱国にある本拠点である荒波の家へ戻ると珍しい人物がいた。
「カルビにロース!豪快に久々にインしてきたな!」
「やぁクロス。それにみんな。だいぶ快勝だったようだね。」
「久しぶりでございます、クラスが変わって以来のインです。なんだか家具がだいぶ増えたようですね。」
荒波の家にいたのは六人いるうちの残りの二人のメンバー。
『カルビ』そして『ロース』だ。
カルビ、本名は大形 瑠火 性別は女性。
基本的にやや男勝りで軽い口調で話す。
軍服を着ており真っ赤な髪の毛が特徴だ。リアルだと真反対の緑色だが。
ポジションはオペレーター/ディフェンダー、敵からはスーパートラッパーと恐れられているトラップ使いだ。
ロース、本名は香丹 労須 性別は男性。丁寧語で話す。
キャラはメガネに執事姿で性格もリアルともども紳士的だ。
ポジションはリベロ/アタッカー、忍者のような隠密、暗殺が得意。
特にロースは僕とミカと小学校からの親友……幼馴染というやつだ。
一方カルビはメノとタクローと同じ中学からの親友だ。
どちらも僕らと同じ高校の生徒で、隣のクラスだ。去年までは結構このゲームで遊んでいたのだが、二人ともクラス替えとともに遊ぶ頻度が少なくなった。
だがそれでも彼ら二人もこのクラン荒波の家のメンバーであることに変わりはない。
この二人がそれぞれのポジションに着くと僕を含むほかのメンバーが、別のポジションで動けてなかなかに楽しいのだ。
なお二人ともがフロントに出ると敵は何も知らぬまま、身動きが取れずにじっくりコトコトHPを減らされて退場するえげつない戦闘をしてしまうのだ。
凶悪なプレイの数々のせいで、他国のプレイヤーからは『悪意そのもの』『邪悪な二人組』『暗黒の化身』『破滅のソレ』などなど言われているプチ有名人だ。
本人達はたぶん知らないけど。
「さて、久々で悪いがオト。少し昔馴染みから聞いたんだが今いいか?」
カルビは女性でありながら力強い言葉で僕へと詰め寄る。
彼女の言うところの昔馴染みって言うのはおそらくリュフォーのことだろう。
リュフォーはカルビと同じ小中学校だったはず。
おそらくその件でこちらへログインしてきたのだとうかがえた。
「ああ、いいよ。僕もちょうど話したいと思っていたところだ。」
僕はメンバー全員と予言のこと、失踪事件のこと。
そしてリュフォーについていろいろと話し合った。
▽ ▽ ▽
「なるほど……変化していく予言……。そして奴が数日、学校へ来なかった理由がコレか……。」
「確かに自分としても気になりますね。」
ロースが僕を見つめつつ奇跡の書を読んでみる。
「オト君、安請け合いはあまりよろしくありません……ですが、運がよろしいですね。
このクランに自分がいるということが……。事件性ややありと自分が親から一応、相談させていただきます。
危険が及ばない範疇で、できることを我々もすると致しましょう。」
「ああ、頼りにしているよ。警察官。」
ロースは落ち着いた口調で奇跡の書をスクショしている。
このロース、実は家がゴリゴリの『警察一家』なのだ。
母親は交通課、父親が捜査一課の刑事、兄が交番勤務。
ロース自身も高校を卒業したら警察官になるつもりらしい。
当然、事件性などの判別から、そっち方面からも情報が得られるのだ。
さらに言えば、模試もかなり高水準の判定で頭もキレる。
「ただそうなるとこれから何が起こるか、マジでわからないな……。
少し運営を信用していいのかも怪しく思えてくる。失踪事件だなんて……。
たしかに探せば、同じような事件は発生しているな……。
予言に関しては一切情報はないが……。」
カルビはソファに寝転がりながら、険しい顔で掲示板か何かの情報を見ている。
カルビもリュフォーの親友だ。長年の友人の不安な様子を知ったのだ。
その心中はおそらく複雑で暗いはずだ。
「だが、オト達のその心意気は見事としか言いようがない。
アタシも協力しよう。リュフォーやあいつの失踪した妹のためにもな。」
「ああ、ありがとう二人とも。」
二人とも僕の返事に頷いたことで六人全員で『失踪事件』について協力することになった。
「うーーっし!せっかくだからカルビとロースのお肉コンビ!
豪快に暴れて周ろうぜ!俺、まだまだ暴れたりねぇぜ!」
「うん、クロスの言う通り少しフロントへ赴くとしよう。参加メンバーは?」
「ミカがオペしまーす!クロスも出るとして最後の一人は……。」
「じゃあ最後はアタシかな。せっかく来たんだ。トラップの腕を腐らせたくないからな。」
ロースとカルビが意気揚々と参加を表明すると僕を含む他、四人が『相手チーム終わったな』と確信する。
▽ ▽ ▽
それから二時間、カルビとロースが出た試合はどんな不利な地形であれ。
相手チームからしたら凄惨な拷問に近いトラップの数々。
気が付かぬ間に退場した両陣営を内部崩壊へ導いたり。
敵プレイヤーそのものを人間爆弾という罠へ変えて暗殺したりする。
倫理観や正義感を度外視した悪意の塊のプレイの数々でほぼ全勝した……。
これは、国家レベル上がるなぁ~きっと!
「じゃあまたねー。おやすみー。」
ミカが手を振りログアウトする。
「今日は楽しかったなの!明日も頑張ろ!」
メノは笑いログアウトする。
「明日も豪快な朝が来るぜ!んじゃな!」
クロスはガッツポーズとともにログアウトする。
「あいつの件についてはアタシも支えてみる。不安だろうからな。
だからアタシに対してもお前らが支えてくれ。今日は楽しかった。」
僕はカルビと拳を合わせカルビはログアウトしていく。
「ああ、またお会い致しましょう。警察とともにこの事態を切り崩します。
オト、奇跡の書についても任せてください。
立て続けにいろんなことが日常で起こっていますが、こういう時こそ頼ってください。」
「うん。大丈夫、君を信頼している。僕らは僕らでできることをしよう。」
「ええ、それではまた学校で。ほかに困ったことがあったら言ってくださいね。
それではこれにて……。」
ロースは深々と礼をし微笑みを見ながら、僕もログアウトした。
――――……翌日、ロウスは失踪した。まるで世界から消えてしまったかのように。
――――これが僕らのフロントライゲームのステージ1-1だったんだ。
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――第1章『学校と失踪//奇跡の書』完
――――→NEXT.第2章『相談と探偵//深紅の鎧』へ続く。
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この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。
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~FrG豆知識のコーナー~
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ロース「カルビ君はこういう口調ですが意外にかわいい奴です。
こういうあだ名ですが自分と同じくベジタリアンで、結構ファンシーな部屋で寝ていて、男性アイドルソング好きでそして…………」
カルビ「やめろやめろ!…………まてどこで知った!?」
ロース「どこでしょう?フフ。」




