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異世界転生二日目。
朝飯を食べ終わったら、今日は装備をそろえに行く予定だ。
いくら戦わないといっても、村人Aの格好のままじゃ浮いてしまう。一応冒険者として仕事をするんだしな。
でもその前に、まずは鍛冶屋に行く。
昨日の魔獣との戦いでマックスの剣が刃こぼれしてしまった。直してもらわなければならない。
鍛冶屋につくと、中は狭そうなので俺は外で待つ。
朝早い時間だというのに街はもう起きていて、行きかう人々は活気に満ちている。
みんな働き者だな。
剣を預けたら次は俺の番だ。
最初に武器屋に行く。
「おはようございます」
開いているドアから入りながら、朝の挨拶をする。挨拶は世界共通だろう。異世界でも。
「元気のいい坊主だな!何の用だ?」
坊主って…。
三十過ぎて言われるとは思わなかった。
いや、今の実年齢は十五だから合っているのか?
「何の用っておっちゃん、武器を買いに来たんだよ。昨日冒険者になったばっかりなんだ。初心者用の剣ってどの辺り?」
坊主あつかいされたので、子供らしくしゃべってみた。
店の中を見回すと、大剣や長剣なんか派手にカッコいい剣の他、短剣や槍や弓なんかも並んでいる。
「初心者用ならそこだ。お、先輩がついて来てくれたのか?選んでもらえ」
「うん」
マックスと並んで、短剣の前に行く。
「これなど初心者でも扱いやすいかと」
「俺戦わないからさ、殺傷力より調理しやすそうなの選んでくれる?」
「調理ですか?」
「うん、野営っていうの?外での飯、俺が担当するからさ」
「わかりました」
調理目的で選んでもらったら、ダガーになった。うちにあった包丁よりちょっと長いくらいかな。
包丁と違うのは、片刃じゃなくて両刃という事。気を付けよう…。
それと薬草採集用の小刀も買う。小刀というかナイフというか。
次は防具屋に行く。
ここでは丈夫な服と丈夫なブーツ、それとローブを買う。ローブは強い日差しや寒さ対策にもなると勧められたから。その他野営セットも買う。
物理の盾はいらない。魔法の盾があるからね。
うん、見た目はいっぱしの冒険者(初心者)になった。
やっぱ見た目が揃うとテンションが上がるな。
俺は単純なのだ。
一応装備が整ったので、冒険者ギルドに行く。
今日は剣がないからマックスも薬草の採集につき合ってくれるという。
通常マックスは、剣がない時は休みか、短剣で出来る依頼をするそうだ。
こういう場合も地味に収入が減るとか。
目標金貨千枚!頑張ろう!!
まぁ今日は薬草採集だけど。
掲示板には常設スペースに、ヒール草やマナ草、毒消し草なんかの採集依頼が貼ってある。
回復薬の需要は高い。
この国は魔獣が多く生息しているし、ダンジョンも多いと聞いた。
そりゃあ回復薬は必須だよな。
パーティーメンバーに回復魔法使いがいればいいけど、回復魔法使いは少ないらしい。
回復魔法に頼れないなら薬に頼るしかない。
だけど採集依頼って、新人とかランクの低い冒険者の仕事になりがちだ。
魔獣にもよるけど、薬草より魔獣の方が金になるし、何より早く一人前、もっというと強い冒険者と認められたい。採集依頼なんてしたくないのが心情だろう。
という訳で、需要に対して供給が追い付いていない。そりゃ回復薬の値段は上がるわ。
採集依頼の報酬額もだいぶよくなったらしい。
安全第一の俺としてはありがたい。さっそく行ってみよう!
町を囲む外壁を出ると、とたんにのどかな風景が広がる。
大門からは大きな道が何本か延びているけれど、それ以外は草原や、少し先の方には森も点在している。
こういった町の近くには魔獣はいないそうだ。
襲われたら危ないから、討伐しつくすらしい。
野生の獣なんかはいるらしいけど、それくらいならマックスは倒せると言う。
小刀で。すげぇな!
ヒール草が生えていると教えられた辺りまでやって来た。
「さて始めようか」
「はい」
前世で事務職だった俺は、集中して何かする事には慣れている。
意外とチマチマした作業も嫌いじゃない。
写し絵を渡されているので、マックスと確認しながら採集していく。
ヒール草十本まとめて銀貨一枚。
銀貨一枚は飯一食分くらい。安い酒なら二杯分くらい。日本円で千円くらいかな?
マナ草十本まとめて銀貨二枚。
お、マナ草の方がちょっと高いんだ。あまり生えていないのか?
毒消し草五本まとめて銀貨二枚!
需要が高いのか、あまり生えていないのか。
こんなだだっ広い草原で、同じ緑色の草を探すのは難しい。
だけど俺にはいい魔法があるんだな。
“探索!”
「マックス! こっちこっち! ここら辺にヒール草がけっこう生えてる」
「ヨシトさん、よく探せましたね」
「探索したからね。ここはマックスが採っていいよ。俺はまた探すから」
「ありがとうございます」
なんて感じで、午前中だけでずいぶん採集できた。
探索って便利だな!
チマチマ作業好きです^^