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「マックス、聞いてほしい事があるんだ…。
俺は、この大陸の人たちが知らないくらい東にある島国からやってきた。
単一民族の住む島国だからか、俺の生まれ育った国は平和でね、人を殺す事は罪になって厳しく罰せられる。それから人を傷つける事もいけないと教えられて育つんだ」
「東の島…。もしかしてヨシトさんは東大陸の方なのですか?龍人族の方なのですか!だからあんなすごい魔法が使えたのですか!」
マックスが興奮気味に言う。
え!龍大陸?龍人族?
心躍るワードが聞こえたけど!
先にこっちの話を進めよう。
「いや違うよ。話を戻すけど…
そういう事がまったくないとはいわないけど、俺の生まれた国では、多くの人が人を殺さない。俺も人を殺せない。それどころか動物も殺せない。襲われたら抵抗するだろうけど、俺は戦った事がないから簡単にやられると思う」
「……ヨシトさんの国では動物も殺さないのですか?肉は食べないのですか?」
え、そこ?
「いや食べるよ。食肉に携わる職業の人たちがいて、その人たちのおかげですぐに調理できるように精肉になって売られているんだ。魚を獲る漁師さんたちもいるから魚も食べるよ。もちろん農家さんもいて農作物も食べている。
いけないのは人を殺す事、意味なく動物を殺す事」
マックスは小さく笑った。
「意味なく動物を殺す事は我々だってしませんよ。危険な魔獣や、食べるために獣を狩るのです。
人を相手にするのは戦の時や盗賊などにです。冒険者や傭兵でもない、普通に暮らしている人たちなら、生涯人を殺す事はないでしょう」
なんだ、同じか…。
小説のイメージが強すぎたかな。あぁでも
「でも俺は冒険者になったからさ…。
俺はきっとずっと生き物を殺せないだろうから、負担はマックスだけにかかると思う。だけど俺は支援魔法が使えるし、回復もさせられる。俺にできる精一杯援護するから、マックス、俺とパーティーを組んでくれないか」
マックスは真っ直ぐ俺を見た。
「命の借りは命で返すと言いました。ヨシトさんの側で仕えさせてもらえるならこちらこそ望みどおりです。よろしくお願いします」
言って、頭を下げた。
おぉ、こっちの文化でも頭を下げるんだ。
さすがジャパニーズポップカルチャー!
じゃなくて!
「仕えるとか、そういうんじゃなくてパーティーだから!仲間だからね!言い辛いけど俺の方が弱いし、お願いする方なんだからね!
……ありがとう。よろしくお願いします」
俺もしっかり頭を下げた。
食事を終えて、部屋に引き上げる。
本当なら一人部屋にしたいところだけど、なんせこの世界の勝手がわからない。
鍵も信用ならないような、ちゃちい個室のドアじゃ安心して眠れない。
という訳で、二人部屋をとった。
マックスは一人部屋から引越しだ。
「なんというか……」
部屋には、両サイドの壁につけてベッドが一つずつ。真ん中は通路くらいの狭さだ。
ベッドの枕元にある少しの床は、ここが荷物を置くスペースなのかもしれない。
窓があるから換気はできるし、朝には光も入るだろう。
心配していた寝具はちゃんと布だった。
よかった。文化レベルは元の世界の近世あたりのようだ。だけど…
「不衛生だな」
これだ。異世界あるあるの、衛生面はやっぱりひどかった。
そういや風呂も入ってない。やっぱ風呂なしなんだろか?安宿だし。
マックスは黙っている。
こんなもんだって顔をしているし、実際こんなもんなんだろう。
けど俺は い や だ !
飯は美味くなくても我慢する。衛生面は気になるけど、火が通っていれば、まぁOKにしよう。皿が汚れていたらNGだけどな!
だけどこんな、寝たらかゆくなりそうな布団で寝るのは断固拒否する!!
まず横になる気にもなれない。
“清潔!”
一瞬で布団が白くなった。(元比。元々生成りっぽい)部屋の中の空気も清浄化されたようで気分が落ち着く。生活魔法様々だ。
「おぉ…。やっぱりヨシトさんはすごいですね。こんな魔法も見た事はありません」
「見た事ない?生活魔法だよ?」
「見た事ありませんでした。皆、気にしてないというのもあるのでしょう」
やだな、俺が気にしいみたいじゃないの。
別に俺は神経質という程じゃない。
綺麗好きといわれている日本人なら、これくらい普通だ。と思う。
「風呂は一日くらい我慢するか」
というか、あるのかな…。
“清潔!”
自分とマックスにも清潔魔法をかける。
ついでに服も綺麗になった。
マックスが目を見開いて驚いている。
「身体がさっぱりしました!清潔魔法とは、こういう感じなんですね!服の感触までサラサラです!ありがとうございます!」
不衛生が普通の?ファンタジーの世界でも、やっぱり清潔が気持ちいいのは共通の感性なんだな。
清潔第一!