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声の主を見ると ……ゴロツキじゃねーか!

いや、一応冒険者か。見た目と言動が悪いだけで。(失礼!でも事実!)


マックスが俺を庇うように前に出る。


「あ?何だぁその顔は?話しかけただけだろ?」


ますますゴロツキ感が増してるよ。


俺は“鑑定”を使って男を見た。なんだ年下かよ。

老けてんな。(以下略)


ほぉほぉ、Cランクの冒険者ね。

Aランクのマックスに敵わないだろうに。

奴隷のマックスは一般人に手を出せないとか、何か制約があるのかな。


男のステータスを見ていると、面白い事に気づいた。ステータス画面の一番下に、【備考欄】があったのだ。

備考欄?そんなのステータス設定にあったっけ?


ふぅん…。


ギルド内を見渡して、ある人のステータスも見せてもらう。


「兄さん、ちょっと耳をかして」

「あぁん?」


そのチンピラ感やめなって。

重力魔法をかけて頭を下げさせる。


「うぉ!?」

「意中の人に告白してみなよ。想いは叶うよ」


男にだけ聞こえるように、ひっそりと言う。


「なっ! 何言ってんだ、おまっ」


男は重力魔法をぶっちぎって、数歩後ろによろめいた。顔は真っ赤だ。


ニッコリ笑って(我ながらキモイと思うが)もう一度言う。


「大丈夫。想いは叶うよ」

「…………」


男はもう何も言えないまま、フラフラと行ってしまった。

よしいけ!がんばれ! 大丈夫!両想いだ!


「ヨシトさん?」

「まぁよかったって感じかね? お、そろそろいいんじゃない?」


マックスと空き始めたカウンターに向かう。


それにしても。

冒険者がダメなら占い師って手もあるか?

いやダメだ。見える事しかわからないからな。




「こんばんは、良人よしとといいます。冒険者登録をお願いします」

「ようこそ、シルウァの冒険者ギルドへ。受付のアネモネです。登録ですね、ではこちらにどうぞ」


マックスが依頼達成の報告とフォレストウルフの買い取り手続きをしている間に、俺は冒険者登録をする。


受付のアネモネさんは茶色い髪に茶色い瞳の、ふわっとした可愛らしい女の子だ。

十代に見えるのに手慣れていて、サクッと手続きが終わった。


マックスの方はというと、マックスが受けた依頼は一頭だったけど、ちゃんと二頭分の報酬がもらえた。

それから、Aランクの魔獣の素材は高値で買い取ってもらえた。


依頼報酬が、フォレストウルフ二頭で金貨四十枚

買取は、皮が二頭で金貨十八枚

角や牙なんかが二頭で金貨十枚

合計金貨六十八枚になった。


皮の破損が少なかったら、もっと高額買取だったらしいけど、一対二で死に物狂いで戦ったんだ、傷とか気にしてらんなかっただろう。


山分けなので、一人金貨三十四枚!


これで今日の宿代と飯代の心配はなくなった。

冒険者にもなった事だし、装備も整えた方がいいよな。金足りるかな。




十九歳の子に頼りっぱなしは情けないやら申し訳ないやらだけど、こっちの世界に来てまだ一日目、右も左もわからない状態で頼れるのはマックスだけだ。

恩を感じているなら危害を加えないだろうという安心感もある。


いま俺たちは、マックスの常宿の仔馬亭という宿屋で夕飯を食べている。

金貨三十四枚がどのくらいの価値なのかわからないけど、なんとなくホクホクした心情でご機嫌だ。口も滑らかになる。


「一日で金貨三十四枚も稼げるなら、自分を買い戻せるのも近いだろう?」


あまり美味くない飯を食べながら、そう言うと


「いえ、一年の半分は無収入ですし、私はソロなので回復薬や(これがけっこうな値段がする)装備のメンテナンスにも金がかかります。ケガだけではなく、病など休まなければならない時もありますし、日々の生活にも費えがかかります」


仔馬亭も、Aランクの冒険者が泊まるような宿屋じゃないらしい。なりたての冒険者が選ぶくらいの安宿だそうだ。俺にぴったりだな。


「そうか…。 自分を買い戻すのってどれくらいかかるんだ?」


マックスは少し考えて


「半年頑張って稼いで貯められる金額は一年で金貨百枚くらいでしょうか。もっと倹約したり(マックス比)稼げる者ならもう少し貯められると思いますが…。

目安は十年といわれています。早い者でも七年から八年くらいだと」


長っ!!

生まれたての赤ちゃんが小学生かぃ!


しかも買い戻し制度の内情が悲惨すぎる。

十年も酷使すれば、たいていの奴隷は使い物にならなくなる。そこまでじゃなくても、戦力の落ちた奴隷を所有していたり、ただ捨てるより、金が手に入った方がいい。というものらしい。

国!鬼畜だな!非道すぎるだろ!


「マックス…」


俺は悩んだ。これを言ってもいいのだろうか。

冒険者になっても、生き物を殺せない俺は薬草なんかの採集をしようと思っていた。

植物だって生き物だけど、動物を殺す事は俺にはできないだろう。


奴隷がどんなもんだか、ちゃんとは分からない。

勝手なイメージで悲惨なものだと思っている。

自分だったらなりたくない。


知り合って、助けてくれているマックスが自分を買い戻したいというのなら、できるなら協力してあげたい。

というか、きっと俺の方が助けられる事が多いだろう。


覚悟を決めろ。

この世界で生きていくには、俺は誰かに助けてもらわなければならない。

それならそれは、マックスがいい。


「マックス、聞いてほしい事があるんだ…」




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