26
四日目と五日目も同じように過ごす。
今まで、遠目に野生の獣を見かける事はあったけど襲ってくるような事はなく、今のところ盗賊も現れていない。
六日目、今日は小さな町まで行く予定だ。
通常それなりに人口のある町では自衛団や、もう少し大きな町になれば騎士団もいたりする。
という訳で、盗賊は町から離れた場所に出るというのが定説なんだけど。
なんで出るんだよー!
まだ町から距離のある場所とはいえ、来るならもっと町から遠いところだろ!
しかも朝から出勤?しなくていいから!盗賊はそんな勤勉じゃないだろ!!
いつ何があるかわからないから、出発と同時に全員には身体強化の魔法がかけてある。マジックシールドも二重にかけてある。けど!
盗賊は前後に挟み撃ちの形で十四~五人くらい見える!
マックスと青い雷光の四人は素早く動いた!
ちょっと待ったー!
切り合うの?人同士で?!
盗賊なんて読み物でしか知らないよ!人同士の切り合いなんて時代劇でしか見た事ないよ!
襲ってきたんだから殺らなきゃ殺られるだろうけど!!
無理!無理!無理!無理!!
目の前で殺人とかありえないから!!
そんなん見た日にゃあ、そいつと一生親しくなれる気がしない!
たとえ守ってくれたマックスだとしても!
“スロウ!”
ガクンと、俺以外全員の動きが遅くなる。
マックスが驚いた顔で俺を見る。うん、わかる、わかるよ!
だけど待って、ちょっと待って!!
俺は急いでステータス画面の魔法表示を見る。
何か!何か使える魔法はないか?!
あった!!
“麻痺!!”
わっ!盗賊どもがノーガードで倒れた!
頭打った奴とか大丈夫か!死んでないよね?
痺れさせただけじゃダメだ。
“拘束!”
目に見える綱とかはないけど、盗賊どもは不自然に両手を背中に回して両手首をクロスさせた。
…………。
仲間のスロウ解除。
「ヨシトさん!」
「ごめんて!だって殺人とか絶対無理!!」
「…………」
青の四人とフィリップさんたちが説明を求める視線で見てくる。
説明しない訳にはいかないか。
とりあえず、盗賊どもは“厳重に拘束”
あの後、あれは麻痺と拘束の魔法だと話して驚かれた。
そういう魔法がない訳じゃないけど、あれほど強力な魔法をあの人数いっぺんに!と、広範囲に使った事にさらに驚かれる。
その盗賊どもはというと、息も絶え絶えに走っている。
見えないからどうなっているかわからないけど、拘束している綱は馬車に繋がっているようで、強制ランニング中だ。
トップランナーほどの速度じゃないからいけるだろう。悔い改めなさい。
そうして夕方、町に着いてすぐ冒険者ギルドに盗賊どもを引き渡す。
盗賊どもは抵抗する力も残ってないようで、というか、助かった… という顔をして連れて行かれた。
助かってないから!これから罪を償うんだからな!
あの盗賊どもには討伐依頼が出されていた。
報酬は金貨二十枚。思わぬ臨時収入だ。
俺たちと青の四人でわける。一人金貨三枚ずつ。あまった二枚は夕食代にしようと全員でギルドお薦めの居酒屋に行く事にした。
もちろんフィリップさんたちも一緒だ。
「かー!美味い!」
「やっぱ仕事終わりは酒だな!」
「ちょっと店員さん!この煮込み追加ね!」
「それと酒もだ!」
お薦めされただけあって、なかなか美味い。
俺は酒を飲まないから、ひたすら食べる。
「ヨシトも飲めよ。酒が飲めて一人前だぞ」
「からむなって。俺はまだ半人前だから飲まなくていーの」
中身大人だからな、煽られてものらないよ。
俺の中で十五で飲酒はないのよ。まったく飲む気にもならないしね。
「その分食べるから気にするな。店員さーん!厚切りステーキひとつお願い!」
「ステーキもうひとつ!」
「俺も!」
隣のテーブルのステーキが美味そうで注文すると、何人か後に続いた。
「えっと、いくつになりますか?」
店員さんは困り顔だ。すみませんね。
居酒屋は賑やかで声が聞き取りにくい。
「ステーキ食べる人ー!」
俺が手を上げると、俺も俺もと手が上がる。
いち、にぃ、さん…
「全部で五つお願いします」
「はーい!」
そうして運ばれてきた熱々のステーキは美味かった。
美味いんだけど…
「ヨシトのステーキの方が美味いな」
「俺もそう思った!ステーキだけじゃないしな」
うん、俺もそう思った。手前味噌でナンだけど。
たらふく食べてたらふく飲んだ後。
皆さん町の宿屋じゃなく、今夜もうちに泊まったよ。




