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ダンジョンの町に移動しようと話し合った翌日。
まずは家の仲介業者に会いに行く。
二週間ほどしか住んでいないけど、すでに居心地のいいマイホームになっている。できれば買い取りたい。
男二人にはでかい家だけど、風呂付きだからしょうがない。庶民の個人宅に風呂はない。自宅に風呂をと思えば金持ちの家になってしまうのだ。これでも小さい家を選んだんだけどね。
町を移るのに買ってどうするかって?
アイテムボックスに入れて持って行くのよ。
この世界には水道も電気もガスもない。たぶん。
水道は井戸だし、電気は魔道具になるし、ガスコンロは竈になる。もちろんIHもない。
配線が一切ないんだから、ごそっと持って行けるだろう。たぶん。
とりあえず業者との交渉の結果、家は買えた。
家を持って行くという説明にかなり驚かれたけど、土地代はかからなかったため、家の代金だけですんだ。
できれば売り払いたかった訳あり物件だから、金持ち仕様の邸宅なのに、金貨五百枚!
この大きさの家では破格の値段だ。
もちろん庶民には大金だ。
持ち金のほとんどがなくなったけど後悔はない!
マックスが何か言う前に
「世帯主は俺ね!だから金は気にするな。マックスはまず自分を買い戻しなって。それからまた色々決めようよ」
「……ありがとうございます」
だいたい俺しかアイテムボックスに出し入れできないんだし。
それからギルドに行く。
お世話になったアネモネさんとギルマスに挨拶をしよう。
町を移る報告義務はないかもしれないけど、この町から俺の冒険者生活がスタートしたんだし、なんて俺の気持ちは、思いもよらないゼルコバさんの言葉で吹っ飛んだけどね!
「ちょうどよかった、俺もヨシトに話があったんだ。冒険者登録をして二週間とかなり早いけど、ギルマス権限でおまえをDランクにするよ」
「ええぇぇ!!ランクアップ?なんでですか?!」
マックスは当然。という顔をしている。なんで!
ゼルコバさんはニヤッとした。
「そりゃそうだろ?一度にジャイアントボア五頭、フォレストウルフ四頭、あげくにA+のキングフォレストベアまで倒しちまったんだからな」
「倒したのはマックスです!」
「それでもさ。おまえらパーティー組んでるんだし、マックス一人じゃ狩れる数じゃねえだろ」
うんうん。隣でマックスが頷く。
まったく一切、手も触れてないのに?
いいんだろか?
「キングフォレストベアなんてAランクのパーティーで倒す魔獣だぜ?本当なら二階級上げたいところだけど、登録して二週間じゃひとつがせいぜいだ。まぁがんばんな」
「……はい!がんばります!」
登録二週間でワンランクアップしてしまった。
びっくりだけど!ちょっと混乱している!
いや、ご挨拶に来たんだった。
改めて別れの挨拶を述べて、ギルマスの部屋を辞した。
みんなが帰ってくる夕方には少し時間があるな。
市場で食料や必要な買い物をしてギルドに戻る。いい頃だろう。
ギルドに戻ると、お!ブライアンが見えた。
こいつはここで一番最初に声をかけてくれたヤツだ。人は見かけによらないという事も教えてくれた。ブライアンにも挨拶をしておこう。
「色々ありがとう。俺たちダンジョンの町に行く事にしたわ」
「えぇ!って、早ーだろ!もう移動か!
……まぁおまえらの力があればどこにでも行けるだろうけどよ」
「ブライアン元気でな。 彼女さんと仲良くな(こっそり)」
「大きなお世話だよ!! おまえらも元気でな」
なんてやり取りをしていたら、聞きなれた声が聞こえた。
「ブライアンうるさい。何大声出してるのよ!」
「あんたたち仲良しね~」
「おかえり!お疲れさん!依頼報告したらちょっといい?三人に言っておきたい事があるんだ」
「何よ、改まって。今でいいわよ。別に急いでないし」
そう?じゃあ手短に。というか、長い話じゃないか。
「俺たちダンジョンの町に行く事にしたんだ。短い間だったけど親しくしてくれたから、一言いって行こうと思ってね」
「「えーー!!」」
「何で?何でラビュリントゥスに行くの?!」
ダンジョンの町、ラビュリントゥスっていうんだ。
「だってヨシト冒険者になってまだ二週間くらいじゃない!」
「……ヨシトたちならここでなくてもやっていけるか」
「「リズ!何言ってんのよ!」」
二人の大声に、周りにいた皆さんからも声がかかる。
「え!おまえらラビュリントゥスに移動すんの?」
「え?新人どっかいくのか?」
「ラビュリントゥスに行くんだってよ」
何かもう、思ってたより大騒ぎになってしまった。
その後、奢られたお返しだと、みなさんからご馳走になった。
なんだか大盛り上がりだ。俺も勢いでアイテムボックスの中の料理を出す。
ちゃんと酒場の店長?には了承は取ったよ。
「何だよこりゃあ!美味ーじゃねぇか!」
「こんなの食った事ねーよ!」
「できたてだな!アイテムボックスってそんな性能あったんだ?」
「美味ぇな!これも、これも、どれも全部美味い!!」
帰ってくるやつらがどんどん加わって大宴会になっていく。
途中からゼルコバさんも参加して、宴会は夜遅くまで続いた。




