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『あれはジャイアントボアですね』
マックスが、ほとんど唇を動かすだけで伝えてきた。
ジャイアントボア=大きいイノシシ。
そのまんまじゃねーか!
そりゃ野生の獣であの大きさはないだろうよ!
異世界産は知らんけど!
サイズで野獣と魔獣にわかれるのか?
いや魔がつくんだから、何らかの魔性があるのか?
なんて少々混乱していると、一番大きいイノシシがこちらに気づいた。
声を出したマックスの隠蔽が解けてしまったようだ。凶悪な目でこっちを見ている!
「行きます。ヨシトさんはここでじっとしていてください」
言うが、素早い動きで飛び出した。
目にも止まらぬって、初めて体験したよ!
あぁ、それより援護しなきゃ!!
何がある? 何ができる? 初めての事でパ二くっている!
ステータス画面から使えそうな魔法を選ぶ。
“スロウ!”
ジャイアントボアたちの動きが遅くなった。
よし!
それから重力魔法をかける。小さいの(小さくないけど!)三頭は動けなくなった。
あぁでも大きいの二頭はそこそこ動いてる!
特に一番でかいのはわりと動けてる!!
あとは? あとは何ができる? これいけるか!
ジャイアントボアに弱体化の魔法をかける。
それからマックスにスピードアップの魔法をかける。
マックスとジャイアントボアに真逆の魔法をかけた事になるな。
これ、威力は二倍?四倍になるのか?
そんな単純なもんじゃないか。
スピードアップしたマックスは、二頭のジャイアントボアと対等以上にやりあった。
すげぇ!
そしてそれほど時間をかけずに二頭を倒し、動けない三頭にもしっかり止めを刺した。
マックスの無駄のない力強い動きは、めちゃくちゃカッコよかった!
まぁ止めを刺すところは目を逸らしたけどさ。
動かなくなったジャイアントボアは血抜きをしてからアイテムボックスに入れる。
こいつは肉が食用になるので血抜きが必要との事だ。
皮や牙も使えるらしく、依頼報酬は少ないけど、これで稼げるとマックスは笑顔で言った。
「それにしても、やっぱりヨシトさんの魔法はすごい。私はAランク同士の一対一なら負けないと言いましたが、今回はAランク二頭でしたから、じつは少し危ぶんでいたのです」
「え!そうだったの!」
「はい。子どものジャイアントボアも三頭同時にこられたら危なかった。ヨシトさんが押さえつけてくれていたので、そちらを気にせず戦う事が出来ました」
「そうだ!二~三頭じゃねーじゃねーか!村長め!」
どうやら五頭は家族のようだとマックスは推測した。
あれで子どもか。二メートルの子ども…、でかすぎる。
いや、それより
「俺の魔法よりマックスが強いんだよ。俺は剣とかわからないけどさ、マックスすごくカッコよかったよ」
「……ありがとうございます」
そこで照れないで!
BLは切にご免こうむりたい!!
村に戻って村長に依頼達成の報告をする。
あれはイノシシじゃなくて魔獣のジャイアントボアだった事、三頭じゃなくて五頭いた事を告げると、村長はポカンとした。
「……すまんが、倒したジャイアントボアを見せてもらえんか?疑う訳じゃないが、そんなに大きい魔獣をたった二人で倒したとはとても信じられん」
いや、その発言は疑ってるんじゃねーの。
でもまぁそりゃそうだよな。さすがに二人で(片方は見るからに新人)魔獣五頭倒したとか、信じられないだろう。
それに仕事なんだから確認するのは当たり前だ。
サイズがサイズなので、村の広場にジャイアントボア五頭を出す。
話を聞きつけて集まって来ていた村人たちが青くなった。
「なんだこりゃ!こんなのが森にいたのか!」
「これで子どもって! 親はこれほどなのか…(絶句)」
「イノシシにしてはでかすぎると思っていたんだ…」
うん、びっくりする程大きいよな。親の方が来なくてよかったね。
村長も真っ青になってジャイアントボアを見ている。
「すみませんが…。倒していただいても村には魔獣分の報酬がありません。イノシシ三頭分、金貨三枚が限界です。分割でもいいでしょうか…」
青くなったのはそっちかぃ!
報酬が払えないからか、言葉遣いまで丁寧になってるし!
「依頼されたイノシシ三頭分だけでいいですよ。ジャイアントボアをギルドで買い取りしてもらえば、そこそこの収入になるんで」
ないところからは取れない。
畑の被害もあるだろうし、復興がんばってください。
お兄ちゃんたちありがとー!という子供たちの声に見送られて村を後にした。




