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普通助手と天才博士の防寒法

作者: 夏野篠虫

 雪深い田舎町の片隅に天才博士の隠れた研究所がありました。

 そこにちょっぴり変な博士の他に助手が一人いるだけで、大きな設備もなければ資金も足りないはず。でも博士はいつも何か僕にはわからない研究を続けては、僕に手伝わせるんです。

「じょしゅ~、こっち来て~!」

「はーい」

「見てよこれ! どう?」

 今日も朝から博士に呼ばれました。

 研究室に向かうと、そこにいたのは普段の白服の博士ではなく――ジャイアントパンダが立っていました。

 博士のやることにはいい加減慣れている僕とは言え、これには数秒言葉を失いました。

「あの、確認ですけど博士ですよね?」

「そうだよ! 他に誰がいるのさ」

「そうなんですけど……パンダの着ぐるみなんかありましたっけ?」

「いや? 私がパンダになったんだよ?」

 上下にしか動かない口で流暢に喋るパンダもとい博士。着ていた白衣は体が大きくなったせいで破れかけ、白黒の毛がはみ出しています。

 まさかパンダに変身してしまうなんて。

 驚きを隠せないままの僕は、どうやってパンダになったかは多分難解すぎるので変身理由の方を尋ねました。

「で、どうしてパンダになってるんですか?」

「寒いじゃん最近」

「はぁ……ここ雪国ですからね」

「だからもう冬眠しちゃえば春まで時間飛ばせる!って思ってさ」

 意外すぎる変身理由でした。

 確かに研究所は中も寒いですけど、なにも冬眠までしなくても――あれ? そういえばパンダってたしか……

「えっとですね。博士? すっごく言いにくいんですけど……」

「どうしたの?」

「パンダは、冬眠しないんです」

 博士の頭に衝撃の雷が落ちた気がしました。

「え、えぇ? も、もう助手ったら、嘘はやめてよ~」

「いえ……本当です」

 大口開けたパンダが膝から崩れ落ちるのを見て、僕は人間らしい動きが可愛いなと思ってしまいました。ごめんなさい博士。

「普通のクマじゃダメだったんですか?」

「だって、パンダ人気者じゃん!!」

「あー……」

 忘れてた、博士はこういう人でした。

「どうするの!? 3ヶ月はこのままだよ!!」

「…………」

 僕は何も言えませんでした。

 天井に嘆く博士。

 僕は不憫に思いつつも、今年は辛い冬も楽しく過ごせそうだなと思いましたが、怒られそうなので密かに心に留めておきました。

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