第96話
「バーダック艦長。ミケさん、凄く、嬉しそうですよね。」
とりあえず、あるがままを伝えてみる。
「ああ。そうだな。うちの姫さんな、戦闘中は、いつもピリピリしているが、姫さんも、嬉しい時は、こんな風に嬉しいって体現できる、普通の娘なのさ。」
どうも、姫さんっていうのが、ミケさんの事の模様。
「あの可憐な笑顔を見ていると、あの人が、世間では有名な極悪TSチームのリーダーで、魔王のアダナが付けられた人とは思えないっスよ。」
「極悪TSチームか。まあ、確かに、世間じゃそういう認識だろうな。だがだ、姫さんや野郎共はな、本当はG強奪なんてしたいワケでもないのさ。」
「うん? ミケさんも、皆さんも、本当はG強奪を……したく……ない?」
「ああ。だが、今はオマエには、まだ全ては話さん。話すとしたらオレじゃなく、姫さんが直にオマエさんに話すだろうさ。オマエさんが本物なら、遠くない未来に、そういう日が来る。だが、その時が来るまでも、オレはともかく、姫さんや野郎共が、世間が言うような、ただ単純に他者のモノを強奪するだけの極悪人だとは思わないでいてやってくれ。頼むぜ、ロクスリー。」
バーダックさんが、オイラにというより、見えない何か……もしかしたら運命ってモノかもしれない……そういう何かに縋る様に、言葉を紡いでくる。
本物とか、正直、何の事か分らないけど、そんな顔されたら、いくらダメなオイラでも、黙って頷くしか無くなるじゃないか。
オイラが無言で頷くと、
「ああ、ありがとうな、ロクスリー。」
と、オイラの頷きに礼の言葉を言った後、
「ロクスリー。オレの見立てだとな、オマエが本物かどうかは、まだ分らん……。分らんが……。オマエは本物になれる素質がある。」
フッと軽く微笑を浮かべ、バーダック艦長が、オイラに握手を求めた。
その無骨な手と握手を交わすと、ニッコリ顔で、
「ま、今は、まだまだヒヨッ子だがな!」
バンバンとオイラの背中を叩いてきた。
「ハハ……。じゃあ、オイラ、早く、その本物って奴に成長しないとっスね。」
オイラも、できる限り、ニッコリ笑顔で応える。