第54話
「さて、見目麗しいお嬢様方と別れるのは忍びないですが、私は、旅に戻ります。」
レナスさんが、名残惜しそうにミケさんに言う。
「兄ちゃん、補給や応急修理くらい受けて行ったらどうや?」
と、ミケさんが提案するが、
「いえ、私のウンターザーゲンは、どこかの町に着けば、そこで整備します。それも修行の一環です。」
レナスさんが断りの意を述べる。
「ウンター…ザーゲン? ザヌスじゃないんスか?」
至極、当然の疑問をぶつけてみる。
いや、アレ、どこからどう見てもザヌスじゃねッ?
「ザヌスではない。それ以上、凡夫ごときが知る必要は無い。」
レナスさんが、険しい顔で言う。
あ~、多分、この人…。
「まあまあ、ちょい、そのウンターザーゲンいうFG、気になるから、ちょい説明お願いできんかな?」
と、ミケさんが聞く。
「分かりました、お嬢様。ウンターザーゲンは、御師様が私の為に用意したFGです。ザヌスの外見をしていますが、MDTSというGコックピット内で操者が行った動き通りにGが動くという装置が付いています。他にアライン流は、闘気という俗に気合と呼ばれるモノを扱うのですが、このウンターザーゲンは、その闘気をGの剣に伝わせ、出力を強化する事ができます。」
「ふぇ~。ミケさんのタイニーダンサーもトンデモ装置満載だと思ったっスけど、レナスさんのウンターザーゲンも凄いっスね。」
「なかなか面白そうな機体やね。」
ミケさんが興味津々という感じで目を輝かせる。
「メカニックとして、非常に興味深いですね。」
マカロニさんが、メガネを光らせつつ、メガネを中指でクイッと上げる。
「また、このウンターザーゲンは、ワザと鈍重に作られており、この機体を十全に扱える様にする事も修行の一環であるとの御師様の命であります。」
「なるほどね。だから、明らかに重装甲っぽいGなのに、格闘戦をしていたのね。」
ユリンさんが、ウンウンと頷く。
「では、お嬢様方、私はこれで。お嬢様方に精霊の御加護がありますように。男共は命を賭してでもお嬢様方をお守りしろ!」
そう言って、レナスさんがウンターザーゲンのブースターを噴かせてダッシュで離れていった。
「何か、男性と女性とで、扱いが極端に違う、変わった人っしたね。ああいうの、フェミニストって言うんスかね?」
誰に聞くともなく、オイラが言うと、
「まあ、言わんとする事は分りますけど、フェミニストというのは、元々は男女両権を唱える人の事で、レナスさんのは、男尊女卑の反対の、女尊男卑と言う方が正しいでしょうね。」
と、マカロニさんが解説してくれる。
「まあ、極端な兄ちゃんやったけど、助けてくれたんは確かやし、悪い人やないと思うよ。」
ミケさんが、そういって締めくくる。
「よし! アイツへのうちの報告の作業はパパっと手早く済ます! シュタイガーンバオアーは、早よ修理せなあかんけど、やっぱし、せっかくなんやし、まずは、仕事の達成祝いとロクスリー君の入団祝いを兼ねて、パーっと行くで!」
その、ザインさんたちに追われていた時には見れなかった、再びのニコニコ笑顔に、まあ、こんなのも良いよね、と思ってしまうオイラだった。




