第38話
「思い出した……。死ぬってこんなに痛いんだ……。」
圧倒的な痛みが身体を突き抜ける。
皮膚が溶ける痛み。
骨が溶け落ちる痛み。
眼球が焼け爛れる痛み。
全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを身体の全てが感じる。
そして、急激な意識遮断……。
そこで眩し過ぎる発光した光景は途切れた。
一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。
ボヤけた視界が、徐々に明瞭になってくる。
「とにかく、時間稼ぎや! とりあえず、そこの林の茂みに逃げ込んで籠城戦や! 林の中に居れば、多少は敵の攻撃を木々が遮蔽してくれるやろ! 籠城戦の鉄板や! 行くで、ロクスリー君!」
そう言って、早速、林の方に向かうミケさん。
「良かった! ここからなら、まだ何とかなりそう!」
何とかマシなところに戻れた事にホッと一息付くオイラに、
「な…なんや、ロクスリー君ッ⁉ また文脈おかしい事を言い出してッ⁉」
ミケさんが、驚きの声を上げて来るけど、ノンキにそれに付き合う気はない。
だって、既にオイラたちの後方には、ザインさんの部下たちがオイラたちを囲む為に迫って来ているんだから!
「ミケさん、強行突破! 強行突破です! そこの林にはスタンネットが仕掛けてあるし、もうオイラたちの後ろからもザインさんの部下が迫って来てるっス! 林で籠城したらザインさんたちの思うつぼっス! だから強行突破で囲まれる前に逃げて、お仲間と合流っス!」
切羽詰まったオイラの言に、
「な…ッ⁉」
ミケさんが驚きの表情を見せるが、直ぐに林へのダッシュを辞め、ザインさんたちとの間合いを計る!
そこで、
「何で分かったんだ、アイツ⁉」
ザインさんの部下の一人が、驚愕の声を出した。
それを見て、ミケさんが、
「またロクスリー君の既視感か⁉ いや、それは良い! ザインの部下も驚くって事は、本当に、うちらの後方にザインの部下が迫っとるんやろう! OKや、強行突破で行く! けど、前面に出るのは愚の骨頂や、林と反対の西部の荒野を突っ切って逃げるで!」
ミケさんがテキパキと指示を出す。
「OKっス! 突っ切るっスよ!」
オイラたちを追っていたザインさんたちの部下が、逆にオイラたちに迫られる。
撃墜する気はない。
当たらなくても振り切れるだけのめくらましが出来れば問題ない!
「そこをどきッ!」
ミケさんが垂直ミサイルを展開!
更にレーザーライフルを乱射!
「被弾したくなかったらどけッ! 当たると痛いぞッ!」
オイラもミサイルとバズーカを乱射!
いきなりの反撃に面食らったザインさんの部下たちが隊列を乱す。
そこをミケさんのシュタイガーンバオアーを先頭にオイラたちが突っ切る。
「やったっス! ザインさんたちの戦列を越えたっス!」
喜びの声を上げるオイラ。
「やね! 後は、うちの仲間が来るまで逃げ切って……」
ミケさんも、ホッとした表情を浮かべたが…⁉
「甘いんだよ!」
ザインさんが吼えたかと思うと、前方から砂塵が舞う⁉
『マスター。前方から敵増援。』
「マジでッ⁉」
前方からジーナの部隊が迫って来る⁉
「仮にもアヴァドンを狩ろうってんだ。これくらいの準備はしているって事さ。さぁ、野郎共、舐めた真似をしてくれたお嬢さんたちにしつけをしてやりな!」
そのザインさんの声を聞いて、
「へへへ…KGは貰ったぜ!」
「ヘッ、特別報酬はオレのモノだ!」
ザインさんの部下のヒャッハーな皆さんが、こっちにバズーカやレーザーライフルを撃って来る。
「ちょっ…ま…たんま…」
あぁぁ……回避が間に合わない!
「いやじゃぁぁぁー!」
何とか盾で防御!
「クッ…コックピットがガンガン揺れる……。」
ミケさんも盾で防御した模様。