表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/177

第35話

 と、そんな事を思っていると、


「っと、そろそろ合流するかな。」


 と、ミケさんが言って来る。




「合流っスか? そういえば、ミケさんはTSトレジャースティーラーチームのリーダーって話でしたけど、何で、お仲間さんと一緒に逃げてないんスか? お仲間さんと一緒に行動していた方が安全なんじゃないっスか?」

 当然の疑問をミケさんにぶつけてみる。



「チッチッチ。うちはおとりや。」

 ミケさんが指を左右に振りながら答えて来る。



おとり?」

 想像してない答えが返って来て、オウム返しに返してしまう。





「まず、ファトス村の自警団の昼食に下剤を入れる。これで、大半の自警団は腹を下して行動不能や。けど、何人かは昼食をまだ食べてなくてピンピンしとるやろう。そやからや、うちが一番目立つこのKG(ナイトギア)のシュタイガーンバオアーをワザと目立つ様に盗む。そして、ワザと分かりやすい逃走ルートで逃げる。これで、ピンピンしとる奴らも、うちを追い掛けてきて、自警団倉庫は腹下して行動不能になったやつらしか残っとらん。そこで、うちの仲間が自警団倉庫のFG(ファイターギア)を安全に全部かっさらうって寸法や。」

 ミケさんが、悪戯をした時みたいな顔をして、親指を立てて来る。



「ふぇ~。」

 そんな事をしていたんだ。


 ミケさんは自称有名人との事だけど、ここまでの事を考えられて実行に移せるっていうのは、本当に有名になるほど凄い人なのかもって思わせられる。




「で、うちを追い掛けて来た自警団も、うちが事前に仕掛けたスタンネットで一網打尽…ってアンバイのはずやったんやけど…ロクスリー君に見抜かれてもうて、あの時はあせったで。ロクスリー君、良い目しとるよね。」


「いや、アレは、目が良いとかっていうより、一度体験したからというか…。」


「うん? 一度体験した?」




「何か、オイラ、あの場面で一度失敗して死んじゃって、生き返ったら、あの場面からで、既に体験したから、どこにスタンネットがあるのか分かったっていうか…。」

 このオイラの発言を聞いて、ミケさんが、う~ん、と唸る。



既視感デジャヴュって奴かな? 始めて見たはずやのに、前に見た事がある様な気がするって奴やね。まあ、ロクスリー君は、感が良いんやろうね。」


「う~ん…。それにしては、リアリティーあり過ぎな気もするっスけど?」


既視感デジャヴュは、個人差があって、人によったら、間違いなく昔に体験した、って思う事もあるそうやし、ロクスリー君も、そういう感じなんちゃうかな? まあ、何にしても、感が良いのは、使えるよ。その鋭い感、これからはうちらの為に使って貰うで?」


「まあ、こんなオイラなんかで役に立つならOKっスよ。」


「うん! ありがとうやで、ロクスリー君!」



 そうホコホコ笑顔をミケさんが向けてくれるが……うん? …あれ?

「ミケさん? 今、思ったんスけど、うちの村の自警団は、さっきの副団長さんたちはノックアウトですし、それ以外の方々は下剤で腹を下してダウンしてて、のたうち回ってる間に、ミケさんのお仲間さんたちに自警団倉庫に残ってるFG(ファイターギア)を目の前で全部盗まれたんですよね? なら、オイラたちを追って来るFG(ファイターギア)が無いんじゃないですか? 実は、もう、こんな急いで逃げる必要、無いのでは?」

 ふと湧いた疑問をミケさんに投げるが、



「確かに、自警団のFG(ファイターギア)は、もう無いし、うちらを追って来れる人員も、さっきの副団長たちくらいや。でもな、一寸の虫にも五分の魂って言ってな、そういう、やられたい放題ほうだいの状況を経験した奴らは、怖いんや。戦力のFG(ファイターギア)が全部無くても、そういう奴らは、村の一般の人たちが使っとるWG(ワーカーギア)とかを無理にでも借りて、FG(ファイターギア)用の武器を無理やり装備したりして、撃墜されるのを覚悟でも相撃ち狙いで特攻とか、悔しさの余り無理やりでもしかねんねん。その上、戦況を見て、うちの仲間たちの慣れたG(ギア)たちやなく、扱いに慣れてへんこのシュタイガーンバオアーを狙ってきよったりして、少しでも噛みついて傷跡を残そうとするもんなんや。そうなったら、負けんにしても、こっちも損害が大きくなるからな。TSトレジャースティーラーっちゅうのは、一流のモンはな、行動は大胆に、アフターケアは入念にするもんなんや。」

 と、思ってもみなかった上、本人の言うように凄い入念な答えが返ってきて、



「ふへぇー……。」

 その考えつくされた油断ない対応の話に呆然としてしていると、



「っと、でも、そうは言ったけど、そろそろ仲間もFG(ファイターギア)を全部盗んだ上で合流してくれる頃やね。まだ合流予定ポイントは、ちょっと離れてるけど、そろそろ緊張も少しは緩んでええかもやね。よし! ほんなら、仲間と合流して、仕事の打ち上げとロクスリー君の入隊祝いを兼ねたパーティーで乾杯や!」

 ミケさんがモニター越しに、手を上に付きあげて笑って言って来る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ