第34話
「あぁ…ああぁぁぁ…ッ⁉」
絶望! 圧倒的絶望!
もうオイラ、普通の生活には戻れないんですよ⁉
故郷の人たちに指名手配されているんですよ⁉
「あぁ…ああぁぁぁぁ…ッ⁉」
『マスター。奇声を発するのは、それで本日で13回目ですよ?』
「ああッ! もうッ! いつまでもピィピィ言っとらんと腹括りいや、君!」
38とミケさんが咎めてくるが、オイラの目からは涙が溢れチョチョ切れている。
オイラが飲み込むには重すぎる現実に喘いでいるうちに、38はミケさんに自身を紹介したみたいで、ミケさんが38に何故か驚いてたっぽかったけど、すぐに意気投合して、今に至るワケで。
「二人共、人ごとだと思っているから、そんな冷静なんスよ! 自分の故郷の村の人たちに指名手配されるなんて当事者になったら自殺モノっスよ⁉」
「まあ、確かに、なかなか無い事やろうけど、なってもうたもんはしゃあないやん。」
『マスター、今の現実を受け止め、過去ではなく、これからどうするかを考える方が建設的ではではないかと進言します。』
「いや、まあ、そう言われると、そうなんスけど…。」
言い淀みつつ考える。
オイラ、現在、村人Aから新米極悪TSにクラスアップ…。
うん、無理。ヘビー過ぎる。
でも、ヘビー過ぎるからこそ、あんまりマイナスばっかり考えていたら、これから訪れるだろうもっとヘビー過ぎる現実に押しつぶされそうだなとは思う。
うん、確かに、頭切り替えないと、やっていられないかも。
「分かったっスよ! とりあえず、今は、うちの村の自警団から少しでも逃げましょう。」
「お、やっと落ち着いたね。まあ、TSなんて、くよくよ後ろ振り返りながらやっとったら勤まらんからね。そういう風にふっ切るのが良いで。」
モニター越しに、ミケさんが、ニッコリと笑顔を向けて来る。
うわ、この人、普段から可愛いけど、笑うと150%くらい更に可愛さが増すよ。
この笑顔は反則級です!
オイラがニヘラぁっと鼻の下を伸ばしていると、
『マスター、元から締まりのない顔が、更に締まりがなくなっていますよ? まだファトス村の自警団の勢力圏内です。気を抜くには早いですよ?』
と、38が咎めて来る。
「分かったよ! 細かいなぁ、38は。」
『マスターがノンキ過ぎるだけです。』
そのオイラと38のやり取りに、
「君ら、息合っとるね。仲良し過ぎて、ちょっと妬けるやん?」
と、ミケさんがニコニコ笑顔のまま言って来る。
「まあ、長い付き合い…『いえ、ただの腐れ縁なだけです。』」
オイラの言葉に、38が被せて来る。
「うぉい38! せっかくオイラが良い感じにオイラたちの仲を説明しようとしたのに、何よ、その素気ない言い方⁉」
『事実を述べたまでです。』
「ぐぬぬ…。」
38に言い含められていると、
「フフ…。ホンマ仲が良いんやね、君ら。」
ミケさんがモニター越しにニコニコ笑顔のままウィンクしてくる。
ヤバッ、これは見惚れちゃう。何て破壊力なんだ。奴の性能は化け物か⁉




