第33話
「そう言えば、アナタのお名前は? オイラはロック=ロクスリーっスよ。」
駆けながらのオイラの問いに、
「ハァ…。あんなぁ、ロクスリー君? うちを知らんとか、めっちゃ田舎モンやからな、君?」
眉根にシワを寄せて、ため息交じりに言いつつ、
「そやけど、まあ、ある意味、うち的には嬉しい反応なんやけどね。」
複雑ながらも、少し打ち解けた様な柔らかい顔になり、
「うちの名前はミケ=スターライト。TSチームのトロイメンカッツェのリーダーや。」
と、笑顔で答えてくれた、ミケさん……。
なんだけど……。
「ミケさんっスか。自称有名との事っスけど、本気で聞き覚えないっスね。」
己が人生の記憶をフル動員してみるが、全く該当する記憶の無いオイラ…。
「何や脱力するなぁ……。」
再度、複雑そうな面持ちを見せるミケさんだが、
「まあ、そういう反応も新鮮で、ええっちゃ、ええけどな。」
ホントに、凄い有名人だとしたら無礼千万のオイラの言葉にも、優しく返してくれた上で、
「それより、キミは、ロクスリー姓って事は、あの伝説のTHの、リィト=ロクスリーの親族なんか?」
と、逆に、いつか聞かれるのが分かっていた質問を寄せて来るミケさん。
「っスね。リィト=ロクスリーは、オイラの父さんっス。」
「リィト=ロクスリーの息子か。でも、今までのゲズの操縦を見る限り、G操縦の腕は、親に似いひんかったみたいやね。」
「非常に悲しい現実っスけど、その通りで……。」
ミケさんの的確な分析眼。
その上で、ホントの事だからどうしようもない…。
「まあ、ロックいう名前は、ありふれとるし、キミの事は、ロクスリー君と呼ぶかな。」
と、更にニッコリとした笑顔を向けてくれる。
「うぃっス。それで良いっスよ……って、うん? ふと思ったんスけど、翌々考えると、ミケさんを捕まえて、自警団に入団せずに報償だけ貰うだけ、とかにしたら良かったのでは……?」
「まあ、そういうのも、確かに、ありやったね。けど、もうキミは後には引かれへんで。きっと今頃、キミはファトス村の人たちから指名手配されとる頃やろうしね。」
一瞬、言われた事を理解したくなくて心が凍る。
そして、恐ろしさで急解凍されて一気に恐怖が熱を帯びる。
「うがッ……最ッ悪ッ!」
自分の村の人に指名手配される奴って何よッ⁉
「まあ、心配しいな! さっき助けてもらった恩もあるし、うちらのTSチームのトロイメンカッツェのメンバーにロクスリー君を入れたるから!」
ミケさんがニッコリ笑顔で応えてくる。
その笑顔が今は非常に辛い。
ああ……天国の父さん母さん……オイラは自分の故郷の人たちに指名手配される様な……人間の底辺……ジ・アンダー・グラウンドの世界に突入しちゃいました……。
これからオイラ……どうなっちゃうのッ⁉