第31話
「分かったってのよッ! 死ぬって、こんなに痛いんだってばよッ!」
圧倒的な痛みが身体を突き抜ける。
皮膚が溶ける痛み。
骨が溶け落ちる痛み。
眼球が焼け爛れる痛み。
全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを身体の全てが感じる。
そして、急激な意識遮断……。
そこで眩し過ぎる発光した光景は途切れた。
一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。
ボヤけた視界が、徐々に明瞭になってくる。
「しっぽりは、いかへんけど、助けてくれたお礼に、うちらの仲間に入れたる! だから、今は、ここを切り抜けるで!」
「うわッ⁉ ここからなのッ⁉ さっきはもっと前に戻ってなかったッ⁉ さっきの地点からだったら、シュタイガーンバオアーの人に自警団の人たちのFGにスタンネットを使ってもらって一網打尽にしてもらって一緒に逃げられたのにッ⁉」
「何やッ⁉ いきなり文脈のおかしいこと言い出してッ⁉」
シュタイガーンバオアーの人が驚きの声を上げる。
いや、こっちも驚いているよッ‼
何か、オイラの生き死に、ループしているけど、これが、人生というデータのセーブポイントにセーブして、リセット&ロードして、セーブポイントに戻っているだけなら、セーブポイントっていうか、ロードポイントおかしくないッ⁉
「良く分からんが、素人のロクスリーのゲズはノーコンだッ! まずはシュタイガーンバオアーを捕まえる事に集中しろッ!」
「了解ッ!」
「了解です!」
またも、こちらは無視されている模様。そこは良い。問題はここからだ。
「シュタイガーンバオアーの人ッ! 隊長機のザヌスは下手くそっス! それより2機のガトナスの方が脅威っス! スタンアンカーでジェネレーターを熱暴走させて行動不能に陥らせられるっス! でも、ガトナスは2機とも3連発でスタンアンカーを使って来て勝手にエネルギー切れを起こして自滅するんスよ! だから、ガトナスのスタンアンカーだけ警戒して回避してれば余裕っスよ!」
とにかくざっと要諦だけを伝えてみる……が、
「なんやてッ⁉ てか、何で、そんなんが分かるねんな君ッ⁉ 下見の時に居いひんかったけど、君って自警団の子ちゃうよなッ⁉ それが何で、そんな詳しく機体性能だけやのうて、パイロットの善し悪しまで、下調べしたうちより、そんな詳しいねんなッ⁉」
いきなりの内容の細かい進言に、TSの人が、逆に不信感を募らせて来る…。
「いや……それは経験したからというか……」
何と説明した物か戸惑い、オイラが、しどろもどろになる中、
「何だか分からんがロクスリーの盲言だッ! 気にせずシュタイガーンバオアーを集中攻撃だッ!」
ヨギーさんが、ガトナスの皆さんに、構わず、総攻撃の命を下す!
だけど、それなら、逆にガトナスたちがアンカーの使い過ぎでEN切れを起こしてくれるので、オイラ的には、スッゴイ嬉しい展開!
だったんだけど……。
「隊長ッ! 気になったので、一応、調べてみたのですが、これから仮に3連発でスタンアンカーを使った場合の残存エネルギーを計算したところ、本当にガトナスがエネルギー切れを起こす事が判明しましたッ!」
うがッ⁉
イリーさんが冷静に分析してしまったッ⁉
そうだよね……。
まんまで伝えちゃうと、ガトナスのパイロットさんたちが気付いちゃうよね……。
「何だとッ⁉」
「何やてッ⁉」
ヨギーさんとシュタイガーンバオアーの人、二人に同時に驚かれ、一瞬、2人の動きが止まる。
そこにレンダーさんがガトナスのスタンアンカーを冷静にシュタイガーンバオアーに打ち込む。
「あ……ッ⁉」
凍り付くTSの人…。
「イリーの様に計算などする事も無くスタンアンカーを衝動的に打ってしまっただけだが、逆に虚を突いた形になったなッ‼」
正にオイラすら虚を突かれる形で、レンダーさんのガトナスの不意のスタンアンカーの電撃で、シュタイガーンバオアーが、またもジェネレーターのスタンを起こして動けなくなっちゃったよッ⁉
「うがッ……最悪……ッ! さっきのザヌス1機の時でもダメだったのに、ガトナス2機まで現存って最悪過ぎるッ‼」
歯を食いしばりながらも、余りの状況の酷さに身悶えするオイラに…更に…ッ!
「よし、レンダーはスタンしたシュタイガーンバオアーを見張っておけッ! ロクスリーのゲズにはオレが牽制射撃をするから、その間にイリーはゲズにもアンカーを打って動きを止めろッ!」
ヨギーさんが、ガトナスの、お二人に命を下し!
「了解ッ!」
「了解です!」
絶対に逃がさんとばかりに、徹底して迫り来るッ!
「クッ……こうなったらシュタイガーンバオアーの人は役に立たないのは、さっきの時ので分かっている…。ここは逃げの一手しかないけど、本当にオイラ一人で行けるのかッ⁉ だぁーッ! とにかく逃げてやるっス‼」
とにかく自警団たちに背を向けて逃げる。
どこまで行けるか、ホントに逃げ切れるかも分からないけど、こうなったらやるしかないッ‼
「まずは牽制させてもらうッ! 動きを鈍らさせてもらおうかッ!」
ザヌスのヨギーさんがオイラの後方からバズーカを打ってくる!
が、さすがにさっきので、この人がオイラと同じ無制球のド下手なのは分かっている。
これが当たるワケが……って……えッ⁉
何か、こっちのコックピット部分に、このままだとドンピシャじゃッて⁉
うぇッ⁉
「どこが牽制なのッ⁉ 思いっきり、コックピット直撃コースじゃんッ⁉ 下手が牽制で狙ったら一周半して直撃させて来たって言うのッ⁉」
回避もままならず、驚きのままに超質量と熱量が全身に降り注ぐ!




