第30話
「ガトナスが思いのほか近くに来る……。」
油断なく、ザヌスとガトナスの隙をTSの人が伺い…。
「えーい! こっちも反撃や! よっし! この距離で使える武器は……。」
反撃の為に、シュタイガーンバオアーの装備をチェックする様に、一拍の間を置くが…。
「……バトルアックス…ッ⁉ バトルアックスやと…ッ⁉」
間を置いてからの、TSの人の驚愕の声!
てか、えッ⁉
「レーザーアックスやのうて、ただのバトルアックスやとッ⁉ 一応、刃は付いとるから実弾兵器や格闘兵器の切り払いはできるかも知れへんけど、レーザーを纏ってないなんて、こんなん、ただの質量兵器なだけの鈍器やないかッ⁉」
TSの人の一際大きな驚愕の声も空しく、確かにシュタイガーンバオアーの左腰部から取り出した斧の刃は、その刀身にレーザーを纏ってないッ⁉
って、KGなのに、マジでッ!?
「クッ……他はバルカンくらいか……。至近距離でのレーザーライフルなんかムズいし、背部の垂直ミサイルは、流石に、この近接距離で使ったら自分にも当たる…。やから、ここはッ!」
シュタイガーンバオアーが、バルカンでガトナスを牽制しつつ、バトルアックスという名の鈍器でザヌスを殴りつける。
「なんとぉッ⁉」
諸に胴体部分を横薙ぎに当てられるヨギーさんのザヌス。
やっぱり、この人、自警団の隊長さんだけどオイラと同じくらい弱いっぽい。
重装甲とはいえ、巨大鈍器で殴りつけられた事で、ザヌスが一瞬怯む!
よし! TSの人なら、この隙を逃すハズがない!
これで一気にザヌスをたためるはずッ!
しかし……。
「そこッ!」
「インパクトの瞬間はオマエもガラ空きだ!」
ザヌスをシュタイガーンバオアーが殴った瞬間に、ガトナス2機が同時に3発目のスタンアンカーを打ち、シュタイガーンバオアーに当てた!
シュタイガーンバオアーの動きが止まる!
電撃でジェネレーターが熱暴走してスタンしてしまった模様!
これはマズいッ!
「クッ……。こっちも隊長機に当てたけど、モロに喰らってもうた……。こんなところで諦めるワケにはいかへん! けどッ…これは動けん……。 クゥゥ…ッ! 諦めるしか……諦めるしかないんか…⁉」
シュタイガーンバオアーの動きが止まるのと共に、シュタイガーンバオアーの中の人の戦意も止まった模様。
「ちょッ! アナタが戦ってくれないと、オイラじゃどうにもなんないんスよッ⁉」
「うちかて嫌やッ! うちかて嫌やけどッ! こんなん……こんなん……ッ!」
悲しい諦めの言葉が無情にも垂れ流される。
「よし、後はロクス……ッて……。」
ザヌスのヨギーさんが何か言葉に詰まっている。
アッ⁉ ガトナス2機もスタンしているのかッ⁉
何かアンカーを打ったままの不自然な姿勢で2機とも止まっているぞッ⁉
「隊長、スマンッ! アンカーが思ったよりエネルギーを食っていたみたいで、ガトナスがエネルギー切れになっちまったッ!」
「3発連続でアンカーを使ったのがまずかったみたいです。隊長、後は、お願いします……。」
これは……ッ⁉
オイラと同じくらい操縦が下手っぽいヨギーさんと一対一の勝負なのかッ⁉
「クッ……仕方がない。シュタイガーンバオアーは止めたんだ。ロクスリー1機くらいオレが何とかしてやるッ! だが、さすがに相手は世間の分からない未成年だ。撃墜はあり得ん。ここは牽制射撃で足を止めるッ!」
ヨギーさんからの手加減する宣言に、少しはホッとするものの、ザヌスの手には、がっしりとバズーカが握られて照準が絞られており!
「クッ……こうなったら逃げられるだけ逃げてやるっスよッ!」
例え手加減されても、捕まったら、オイラは戦犯!
しかも、さっきのTSの人とヨギーさんの話が確かなら、咎を受けるどころか、ほ…ホルモンされる恐れすら…あるんじゃないのッ⁉
「そ…それだけは…ッ! 絶対に回避する…ッ‼」
慣れないFGの操縦だけど、この身の全身全霊を賭け、逃走を試みる!
その上で、ヨギーさんのザヌスのバズーカは、その言の牽制射撃どころか、相変わらずどこまでも明後日の方向に飛ぶ。
オイラで勝てる気はしないけど負ける気もしない。
ここはシュタイガーンバオアーのねえちゃんもブッチして逃げのびてやるッ!
「えーいッ! ちょこまかとッ! こうなったらゲズの手足をブレードで切断してやるッ!」
ザヌスがレーザーブレードをブン回しながら近づいて来た。
ヒャッホー! この人バカだ!
この距離でレーザーガトリング砲や頭部バルカンを使う頭が無いらしい!
「うはは! 勝てる気はしないけど負ける気もしない! 軽量型で格闘戦専用のガトナスならまだしも、ザヌスの様なホバーとはいえ重装甲の重量型砲撃特化の機体に乗ってブレード振り回すなんて、オイラと同じくらい下手な操縦のアンタが当てられるワケないっしょッ‼」
と、有頂天になっていると……。
ブンッ‼
ザヌスがスッ転んでレーザーブレードが手からスポ抜けてこっちのコクピット部にモロに突き刺さって来たッ⁉
「ちょ……ちょッ⁉」
回避もままならず、驚きのままに熱量が全身に降り注ぐ!