第19話
「しかし、あのリィト=ロクスリーの作った村やいう話やから警備も自警団のモンも、もっと凄いんかと思っとったけどそうでもないな。で、うちを目の当たりにしてこれとは、相当の田舎やなここ。平和ボケしとる感じやし、きっと今までスティールされるくらい価値のあるモンすら無かったんやろな。まあ、うちの姿を見てこの反応いうのは、ある意味、嬉しくもあるんやけどな。」
「何を言っているかは分からんがシュタイガーンバオアーを返してもらおうか‼」
あ、あのKG、シュタイガーンバオアーっていうのね。
「それはできへん相談……やなッ‼」
言葉の溜めから最後の言を発した瞬間に、跳ねるようにシュタイガーンバオアーと呼ばれたKGが自警団の人たちを尻目に急加速して抜かして行く。
いや、てか、それはそれで大変ではあるんだけど! それよりもッ‼
「ちょッ、何か追いかけているFGが少な過ぎなくないっスか⁉」
追いかけている自警団の最後方のゲズの人に聞いてみる。
というか、機動性で、その人だけが遅れていて、たまたま声を掛けれるギリギリの距離に居たのが、そのゲズの人だったワケだけど。
「我々、自警団の昼食に、下剤が入れられていたんだよ! 大半の者が腹痛で動けんのだ!」
ゲズの人も、通信で姿を見せて話してくれる。
ゲズの人は、角刈りで強面の筋肉質な姿。
てか、ああ、何か、そういう工作みたいなのを事前にされていたワケですか。
そういえば、確かに、この自警団のG倉庫周辺で、数人の自警団っぽい人たちが、お腹を抱えて蹲っていたり転げ回っていたりしているねっていう。
うん?
でも、これってチャンスでない?
自警団って言ったら、18歳以上で、FGの操縦が上手い人だけが選出されて構成されていて、大してTSとかも今まで来なくて、警戒と称して村周辺をウロウロしていて、村内ではふんぞり返っている割に、『TSと戦う事もあるから危険が伴うから』という口実で、村の役場へ住民が払っている村内費をふんだんに使った高額の給料が払われているらしい限りなくブラックに近いグレーの仕事。
という事は……。
「自警団の旦那。オイラを自警団の一員として雇わないっスか? 見ての通り、ゾンドだけしか動かせてないっスけど、今は猫の手も借りたい状況っしょ? ゾンドでも、何かの足しになると思うんスけど雇ってくれないっスかね? 自分で言うのもなんスけど、お買い得っスよ?」
とりあえず、自警団の職に就くべく自分を売り込もうとしてみる。
「えっ……オマエ、確か、ロクスリーさんとこの……。いや、オマエ、確か18歳未満だろ? それに、何かゾンドの操縦が怪しいじゃねぇか⁉」
「まあ、そうっスけど、たった1機のゾンドと下手な操者でも、この状況なら何かの役には立つと思うっスよ?」
「いや……まあそうだけど……でもなぁ……。」
「後で正式に自警団に入れて貰えたら、今は使い捨てでも良いんスよ。壁としてでも使うには良いかもっスよ? はっきり言って、オイラが逆の立場なら雇うっスけどねぇ。」
「ちッ、足元見やがるな。確かにこっちは猫の手も借りたいとこだよ。仕方ねぇからさっき先に行った先発隊には連絡してやるよ。自警団にも入れてやるから、しっかり仕事しろよ!」
「うぃっス。契約成立って事で。」
無事に交渉成立っと。とりあえず、任されたからには、一応は頑張っては見る模様。