第139話
「全く…。救難信号を受けて来てみたら…。しゃあない子やなぁ君は…。大方どっかの裏の筋の奴に美味い話をされて来たんやろうけど、見ての通り、ここは無人とはいえ大量のスプリガンで、万全の警備や。つまり君は、警備のスプリガンを作動させて、君に一機でもスプリガンを破壊させて数減らさせてから、後で美味いとこもって行こうとしている奴に騙された訳や。せっかく、うちらが合流したとこやけど、ゲズC²は、だいぶやられたみたいで危なそうやし、足の問題で、修理装置のあるエンジェルシードや、フェストゥングは置いてきたから、これも、ロクスリー君を騙した奴の筋書き通りやろうけど、うちらが、道を開くから、ここは引くで! 痛い目を見たんは授業料やと思い!」
ミケさんが、そう諭してくるけど、
「なに言っているんスか⁉ ミケさんたちが来てくれたんスから、こんな無人機のスプリガンたちなんて楽勝っスよ! ここまで来たんスから、あと一歩っスよ! スプリガンを蹴散らして、FGを、ごっそり頂いちゃうんスよ! そしてオイラは幻のシャケ弁をゲットするんスよ!」
意気込むオイラ!
こんな目の前にニンジンがぶら下がっているのに、撤退なんて嫌だ!
ここまで来たら、オイラは、絶対に、FGを大量発掘して、幻のシャケ弁を手に入れるんだ!
そんなオイラに、
「君こそ、そんなボロボロでなに言うてんねん! ここは撤退が定石や!」
ミケさんがトライバレルのレーザーでスプリガンを蹴散らしつつ怒鳴りつけて来る。
「こ…こんな奴ら…人が乗ってないんだッ‼ こんな奴ら! オイラでもッ‼」
スプリガンたちに、レーザーガトリングを掃射しつつ、背部の垂直ミサイルを展開! 更に、大型バズーカもぶち込む!
オイラの攻撃で、どんどん破壊されていくスプリガンたち!
「ほら! こんな奴ら! オイラでも! だからオイラは!」
だけど、そこで、
『マスター、上方より、熱源接近!』
「えッ⁉」
オイラが目の前のスプリガンたちの殲滅に夢中になっていたところに、天井から、レーザーライフルを構えたスプリガンがぶら下がって、攻撃で手が塞がっているオイラのゲズC²の胸部コックピットを狙ってレーザーを放ったッ⁉
「ロクスリーッ⁉」
「ロクスリーさんッ⁉」
ケビンさんとトニーさんの叫び声の中、突然の急所への攻撃に、キュッと瞼を閉じるオイラッ‼
でも、あれ?
予想していた、いつもの死ぬほど痛い感触が無い。
オイラが恐る恐る、瞼を開けると、ゲズC²の前にタイニーダンサーが覆いかぶさる様に立っているッ⁉
その腹部が、抉れている⁉
オイラを…オイラを庇って被弾したのかッ⁉
「み…ミケさんッ⁉」
「雑念で無謀な戦闘しとったら…足元すくわれる…。それは…あかんやろ…ッ⁉」
ミケさんが、苦しげな顔で、通信をして来るッ⁉
「ミケさん! ミケさんッ‼ だ、大丈夫っスかッ⁉」
叫ぶ、オイラに、
「機体は…ちょっとヤバイけど…うちの方は…ただの軽い…脳震盪や…。ちょっと休めば…大丈…夫……。」
大丈夫と言うミケさんの言葉に反して、ミケさんは、とても大丈夫そうには見えない弱々しい声を出すッ⁉
「姐さんッ⁉」
ケビンさんが、ミケさんを見てから、
「てめぇ! ロクスリー! ぼさっとしてねぇで、姐さん連れて早く脱出しろッ‼」
苛立ち紛れに、オイラに指示を出す!
「は…ハイっス!」
ゲズC²の、無事な右手でタイニーダンサーを肩に担ぎ、ブースターを全開にし、展開したライドブレードを補助動力にし、出来得る限りの力で、出口に向かって突っ走るッ!
そのタイニーダンサーを担いだオイラのゲズC²に、
『マスター。スプリガンのミサイル、こちらをターゲッティング。来ます!』
スプリガンのミサイルが迫るッ⁉
「やらせるかよッ‼」
そのミサイルの一斉掃射を、ラーゼンレーヴェのAトライバレルのレーザーソードが、凄まじい勢いで切り払って行く!
「牽制射撃をします! ロクスリーさんは、ミケさんを連れて、全力で逃げて下さい!」
トニーさんがグレネードランチャーを、出口付近のスプリガンに掃射する!
その攻撃に、スプリガンたちが怯んでいる隙に、ライドブレードに火花を散らさせる勢いで、通路の角を曲がり、一気に出口に駆け抜けるオイラ!
そこに、スプリガンの格闘部隊が、最後の抵抗とばかりに、一気に、こちらに突撃して来るが、
「やらせねぇって言っているんだ! アリーエルスラスターッ‼」
アリーエルスラスターを発動したラーゼンレーヴェが、超加速で爆ぜる!
一気にオイラを後にし、突撃してくるスプリガンを、Aトライバレルのレーザーソードで、バッサバッサと斬り払って撃墜して行く!
「出口を抜けたッ‼」
基地跡の出口を抜け、旧市街地の舗装道路を、ライドブレードで駆け抜けるオイラ!
その先を、ラーゼンレーヴェが駆け、後ろから、アウスブレンデンが追って、基地を脱出した!




