第127話
「おっ! 来たな、ロクスリー!」
「ロクスリー君、凄かったよ!」
「ソルファージュの索敵範囲外の新統合の反応に気付くなんて、ロクスリー君、凄いね!」
ブリッジに着くと、バーダック艦長たちにも、ヤンヤの喝采を送られるオイラ。
何か、こんなに褒められた事、今まで無かったから、恐縮しちゃうっス。
「まあ、その話は、また後で。とりあえず、セリア、飲みモン頼む。今日は疲れたでぇ~。」
ミケさんが、ブリッジのリビングスペースのイスに座って、机につっぷして、グデ~っとなる。
「は~い。みんなも、コーヒーなんてどう? ホッと一息吐けるわよ?」
セリアさんのその言葉を聞き、
「じゃあ、オレ、ブルーマウンテンな、セリア!」
「ユリンちゃん、モカ!」
「ボクはエメラルドマウンテンをお願いします。」
「セリア、オレにはグアテマラ、エスプレッソで頼むわ。」
「セリアちゃん、ボク、キリマンジャロで。」
「ぼ…ボクは、何でも良いです。」
次々に皆さんが、セリアさんに注文を頼む。
「あ、じゃあ、オイラ、スマトラで。」
オイラも、お願いしてみる。
「はぁ~い。みんな、順番ねぇ~。あ、これ、リーダーに。」
セリアさんが、1つのカップを手近に居たトニーさんに渡す。
「これは……? ホットミル…ク…? ……にしては、ぬるいですね?」
「ミケはコーヒーが苦手なんだ。その上、猫舌と来ている。淹れ立てのコーヒーが飲めんとは、人生の半分を棒に振っている様なモンだってのに、うちの姫さんのお子様舌と来たら。」
バーダック艦長が、ヤレヤレという感じで、大げさに被りを振る。
「ほっとき! うちが、何が苦手でも、アンタに迷惑掛けてへんやろうが!」
「ハッ、こんな事で、カッカ来るなんて、やっぱりお子様だな。これからは姫さんじゃなく、オシメ様と呼んでやろうか?」
「ムキー! おっさん、いっぺん、そのヒゲ引っぺがして、特徴の無いのっぺりした顔にしたろうかッ⁉」
「まあまあ、リーダー。艦長。せっかくセリアちゃんが入れてくれた飲み物が冷えちゃうよ?」
ヒートアップしたお二人を、リッドさんが、いなしてくれる。
「むっ…コホン。オレが淹れ立てを飲めなくてどうするって事だよな。」
「ま…まぁ、ぬる目が好きやけど、冷めるんはあかんな。」
お二人が、矛を収めてくれました!
リッドさん、スゲー!
普段、影薄いけど、ここぞっていう時に、締めてくれる方だったんだ、この人!
「はい、ロクスリー君。スマトラだよ。」
セリアさんが、コーヒーを渡してくれる。
「あ、はい。……うん? いま、ふと思ったんスけど、あの……アルセカーナの町に新統合が行ったって事は、もしかして、アルセカーナの自警団は、新統合にオイラたちの事を報告しちゃったりしているんしょうか……?」
ふと、嫌な予感に、背中が寒くなる。
「十中八九、報告されて、指名手配されとるやろうね。」
ミケさんが、あっけらかんと言う。
だけど、それってッ⁉
「うがッ……ッ⁉ 最ッ悪ッ‼ 一部隊で50機ッ‼ しかも、ソルファージュのOSでも分からない未知のGで構成されているっていう勢力の人たちに目を付けられたなんて、最悪過ぎるッ‼」
叫ぶオイラ!
ちょッ!? マジ勘弁‼
「いまさら、何、言っているのよ、ロクスリー君? ロクスリー君には、『ロクスリー君が、私たちトロイメンカッツェのエースパイロットだ』っていう情報が流れて、新統合に要注意人物としてエース待遇で迎えられるっていう素敵プレゼントも、漏れなく付いて来るんだよ?」
ユリンさんが、嬉々として、ニッコリ笑顔で告げるッ⁉
「うがッ‼ 最ッ悪ッ過ぎて気が遠くなるッ‼」
涙で前が見えませんッ‼
「まあ、今日ので、兄弟はヤレば出来るって分かったし、何とかなんだろ?」
ケビンさんも、ニコニコ笑顔だッ‼
「誤解から生まれた誤情報とは言え、新統合から、要注意人物として注目されるなんて、ハクが付いたってもんだ! 良い事じゃねぇか?」
バーダック艦長も、人ごとだと思ってッ‼
「まあ、諦め。いざとなったらウチらがフォローしたるしな。」
…ミケさんが締めの言葉を告げる……。
ああ、天国の父さん、母さん。
オイラは、今日、故郷の人たちから指名手配された人から、ティアナで一番凄いとこから要注意人物として指名手配された人に、クラスアップしました。
全く嬉しくありません。
涙が出ちゃいます。
これからオイラ……本当に……どうなっちゃうの…ッ⁉




