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第四話 ─異世界転生3─


 辺りを見渡すと先程と全く同じ場所、同じような仄かに光る魔法陣、黒いローブで目元を隠す男女複数名……しかし、さっきと確実に違うのは、千夜や小夜、そして他にも同級生が10名くらいいたのだ。

 先程は零ただひとりだった。

 今は零を含め、……14名くらいだろうか。この差はなんなのか……。


「おおっ勇者様方、よくぞこの地にいらっしゃいました!皆さま疑問は沢山おありかと思いますが、まずはこの国、聖信国家・シュヴァナルア国王、イルーヴァ・ライティン・ナルア教皇様に謁見していただきます」


 みんなザワザワしつつも、よく分からない状況に不安そうに流されるままに、ローブの男について行く。


 なんだ?さっきは名乗りもしなかったのに今度は名乗った……この差はなんだ?というか……この場所、この風景、この道のり……さっきと同じ……俺だけループしてる?じゃあまた最弱って言われてダンジョン行きなのか━━


「…い、零!!!」


 ハッと気付くと、千夜と小夜が心配そうにこちらを覗き込んでいた。


「あ……、な、なに?」

「なにじゃねえよ、零、どうした?顔色すごく悪いぞ?大丈夫か?」

「そうよ、顔真っ青だよ?確かにいきなり訳分かんない場所に来たから不安だけど……零はこういうの好きじゃなかった?」

「あ、や……だ、大丈夫…。さ、さっきまで道路にいたから、差にびっくりして……」


 ━━━そう、さっきまで道路にいて、トラックに……そうだ、トラックに轢かれたんだ。それでここに来た?いや、邪神がここに連れてきた━━!!


「千夜、小夜!!ここに来る前はじ…だ、誰かに会わなかったか!?」


 急に血相を変えた零の様子に、驚きつつも二人、零の背中を撫でつつ


「いや?ここに来たのはトラックに轢かれてすぐだったから誰にも会ってないぞ」

「零の好きなラノベ展開だと、神様に会ったりするよね。でも実際って誰にも会わずに来るものなんだね。なんか拍子抜けしちゃった!」

「……千夜たちもトラックに轢かれたのか……」

「ああ、たぶんあの信号待ちしてた奴ら全員来てんじゃね?信号のとこに横倒しで突っ込んできたからな、あのトラック」

「びっくりしたよね!」


 零が轢かれたときはトラックの真ん前だった記憶があるが━━どうやら事実が変わっているようだった。


「てか、千夜も小夜も落ち着いてんな?なんでだ……?」


 ━━そう、他の生徒たちはビクビクオドオドしているのに、この幼馴染二人だけは何故か妙に落ち着いて見えた。今はそんなことすら怪しく見える……。


「だって零が今隣で生きてる!!死んでない!零が死ぬことのが、異世界に来ることより俺は怖えよ……!!」


 千夜はそう言って零を抱きしめた。その身体は震えてる。


「千夜……?」


 反対から小夜にも抱きしめられる。こちらも震えてる。


「小夜……?」


「さ、さっき、あの、魔法陣の部屋で……零だけ目を覚さなかったの…。零だけし、し、んで……死んじゃってこんなとこに来たんじゃないかって……怖かった。その恐怖に比べたら、零がいて、たかが異世界に来たくらいじゃ何も怖くないんだよ」


「お前ら……ハハ、安定だな……」


 そんな安定な親馬鹿ならぬ零馬鹿二人が、疑心と恐怖と絶望に囚われた零には心地良かった。


 そのまま零は二人の頭を撫でくり回し、ありがとな、と囁いた。

 千夜と小夜はふふっと笑い


「ずっと一緒が俺らだろ?」

「なんてったって『お月見団子三姉弟(きょうだい)』だもんね!」


「その名前は嫌だよ!なんでそんなネーミングだよ!」


 嬉しいはずなのにそこは譲れない零だった。


「「ツンデレ零安定」」


「なんでだよ!!」


 そこで三人笑い合った。


 そうだよ。三人でいれば最強じゃん。きっと今度は大丈夫。


 零はひとりひっそり息を吐いた。



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