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暖かな想い  作者: vicious
1章
5/15

休日はボウリングへ

ちょっとシリアスが続きましたが今回は明るい話です。

ジリリリリリリリリリリリリリッ!!



毎度のごとく目覚ましが叫んでいるが、今日はすっと目覚めた。

昨日の昼にたっぷりと寝たからだろう。

頭痛も嘘だったようになくなっており、珍しく爽やかな朝だった。

やっぱ、睡眠って大事なんだな。


しかし、なんだか頭に妙な感覚がある。

なんかこうフワフワとした……。

一体なんだ?


洗面所に行き、鏡に映った俺を目を凝らして見る。

すると見るも無残な寝癖がついていた。



「すっげえ寝癖だな、おい。なんじゃこりゃ?」



人の印象は髪の毛で変わるというのも納得だった。

今の俺の髪は、実験に失敗したアニメの化学者のような代物である。

流石にこれを放置したまま学校には行けない。

これでは歩くだけで、いい晒し者である。

とても濡れタオルや霧吹きでは直りそうになかったので、仕方なく髪の毛だけシャワーで湯を浴びることにした。






せっかく目覚めのよい朝も髪の毛ひとつで台無しになってしまった。

急いでスクランブルエッグを作って口に放り込む。

……あ、そういや手帳見てないな。

朝食を3分で平らげて、手帳を確認した。



『コーラが切れた』



……そう言えばまだ買ってなかったな。

帰りにスーパーにでも寄るか。

ふと時計を見ると8時5分だった。

そろそろ、支度しないとまずい時間だな。


急いで歯磨きやら着替えやらを済ませて家を出た。











──学校の昇降口


下駄箱で靴を脱いでいると里佳さんがやってきた。

彼女はまだ眠たいのか、目が合ったがぼんやりとしていた。



「あ〜、おはようございます……」


「ああ、おはよう。なんか見るからに眠そうなんだが」


「ふぁい。ちょっと勉強してまして寝るのが遅くなりました……」



ちゃんと呂律が回っていなかった。

『ふぁい』という返事からして大丈夫なんだろうか?

かく言う俺もしっかりと寝たものの、何故か欠伸は勝手にでてくるもので。

彼女の目の前で大きな欠伸をしてしまった。



「裕樹さんも眠そうじゃないですか……」


「いや、俺の目覚めは実に爽やかだったぞ。昨日しっかり寝たおかげでな」


「あ、そう言えば体のほうは大丈夫ですか?」


「もうなんともない。もう元気ハツラツって感じだな」


「そうですか。良かったです」



フワッと微笑む里佳さん。

先ほどの眠気を全く感じさせず、見ているとホッとするような顔だった。

この人の笑顔って不意打ちが多いんだよな。



上履きを履いて教室までの廊下を2人で歩く。

やはり眠たいのか、里佳さんはポケーっとしていた。



「なあ。もしかして夜眠れなかったのって昼間に保健室で寝たからか?」



そう言うとちょっとだけ恥ずかしそうな顔になってしまった。

俺の前で寝コケてしまったのを思い出したのだろうか。

しまったな……。

余計なことを訊いてしまったか。



「今思うとその所為でもあるかもしれません」


「そいつはすまなかったな」


「いえ、いいですよ。今日の英語の訳を教えていただければ」


「…………」



案外ちゃっかりしてるんだよな、この人も。

ぼんやりしながらも頭の回転は健在な里佳さんだった。











教室に入って自分の席にカバンを置いた。

今日の用意をせっせと机の中に押し込んでいく。



「お、裕樹。今朝も千堂と仲良う登校とは見せつけるやないか」



既に教室にいたのか、一也が冷やかしてきた。

だが俺はそれをきれいさっぱりと無視して、黙々と教科書やノートを机に入れる。

朝から無駄な体力を使うのは避けたかった。



「おーい。流されたら寂しゅうなるって分かるやろ?」


「ああ。分かっているから流した」


「裕樹。お前さん案外冷たい奴やな」


「朝から変なこと言うからだ」


「まだ9月やっちゅうのに、寒さが身に染みますな」


「え?カズッちって冷え性だったの?」


「いやな、裕樹がクール&ドライやから寒うなってきたんやわ」


「おおー。クール&ドライか。あたし暑がりだから来年の夏は裕樹君を横に置いとこっかなぁ」


「おそらく余計に暑苦しくなるだけだと思うぞ」



どこからともなく現れた紫苑さんは、ごく自然に俺たちの会話に参加していた。

何というか神出鬼没な人だ。



「あ、そうそう……」



何を思い出したのか、紫苑さんは制服のポケットに手を突っ込んでごそごそとしていた。

変なものが出てこなければいいのだが。



「ジャジャーン!ボウリングのタダ券!ちょうど4人までOKで3ゲームできるんだって」


「お、ボウリングか。ええやないか。たまにはマトモなもん持ってくるんやなー」


「ぷっちーん」



ご丁寧にも紫苑さんは口でそう言った。

その効果音から想像するに、彼女の中で何かがキレたらしい。



「カズッちの分は無しね」


「あああああ。すまんかった!俺が悪かったで許してえな」


「ふふーん。どうしよっかなー♪」



一也が弄られていた。

かわいそうに。女って怒らすとロクなことないな。

しかしまあ、あの2人は仲が良い。

これで付き合っていないというのだから不思議なもんだ。



「ホントですよね。不思議です」


「おわっ!」


「?」



急に話し掛けられたせいで一気に心拍数が上昇した。

心臓がバクバクしているのが自分でもわかる。

しかし、また思っていたことが声に出ていたのだろうか。

この癖は直さないとな。



「あ、里佳もボウリング行くよね?」



里佳さんの存在に気づいた紫苑さんは挨拶もなしに誘っていた。



「ボウリングですか?」


「うん。タダ券が4人分ゲットしたんだよーん」


「いいですね。私も行きます」


「OK!決まりだね。明日は休みだから、どっかで待ち合わせして行こっか」


「駅前でええんとちゃうか?ボウリング場も近いし」


「駅前って北の方のか?」



駅があるのは知っているものの、あの辺はまだ行ったことがなかった。

しかも俺は方向音痴なのだ。

流石に迷わないとは思うものの何だか不安だ。



「そっか。裕樹君は駅に行ったことがないのかぁ。なら、里佳と一緒に来れば良いんじゃない?」


「私と裕樹さんは家が近いですからね」


「ああ。でも、それじゃ俺たちはどこで待ち合わせるんだ?」


「私が裕樹さんの家まで行きましょうか?」


「ありがたいんだけど……いいのか?」


「まあ、方向的に近いですし。あ、一応アドレスは交換しておきましょうか。もしものことを考えて」



ポケットからケータイを取り出して、どうしますか?という顔をする里佳さん。

まあ、別に交換してもいいかな。


今までメアドを交換してきた人はそこそこいた。

しかし、転校してしまうと途端に連絡を取り合うことはなくなる。

最初のうちは続いても、時が経つにつれてメールの回数はどんどん減っていく。

それが辛かった。


でも、そんな思いはしなくてもよくなったんだ。

ならば、交換するのにためらう理由はない。



「OK。じゃあ、赤外線通信できるか?」


「はい。私の方から送りますね。準備はいいですか?」


「ああ。いつでもOKだ」


「では送ります……………………………送信できましたか?」



ディスプレイには『千堂里佳から受信しました。登録しますか?』と表示されていた。

どうやら受信に成功したらしい。

はいを押して登録……と。




「うん、登録できた。じゃあ、そっちに電話番号だけ入れてメールするから」


「わかりました」



さっそくアドレス帳を開いてみると、サ行には『千堂里佳』という項目が追加されていた。

俺のケータイには何故かア行とカ行の名前は多いがサ行は全くなかった。

よって今、サ行は『千堂里佳』が独占していた。


選択してメール画面に入り、番号だけ入力して送信する。

すると、しばらくして里佳さんのケータイが震えだす。



「あ、来ました。では、私の方も登録しておきますね」


「裕樹君、あたしのもアドレス交換しようよ」


「あ、俺のも交換しよや」



『一之瀬紫苑』『大原一也』がアドレス帳に加わる。

件数が増えたは良いが、もともと多かったア行が2件も追加されてしまった。














──土曜日


俺はマンションの前で佇んでいる。

里佳さんと待ち合わせをしているのだが、どうにも気持ちが落ち着かない。

さっきから腕時計で時間ばかり確認している。

10時57分。

もうそろそろ彼女はやってくるだろう。



「裕樹さーん。すいません、待ちましたか?」


「いや、今来たところ」



一度でいいから言ってみたかったんだよな、このセリフ。

そんなささやかな願いが叶った今、妙な満足感を覚えた。



「〜♪」


「なんだか、ごきげんですね。何か良いことあったんですか?」


「ああ。ちょっとした願いが叶ってな」



改めて里佳さんを直視する。

当たり前だが、彼女は制服ではなく普段着。

決して派手ではないが、実に女の子らしい格好だった。

ボウリングを意識してか、スカートじゃないのは少し残念だが。

それでも十分可愛いんだから反則だよな。



「あ、あの……」


「うん?」


「えと……じっと見られると恥ずかしいといいますか………」


「あ、ご、ごめん。その……似合ってるよ」


「そ、そうですか?良かったです……」



やっぱり女の子は服装とか、結構気にするんだろうな。

まあ、お洒落(しゃれ)に気を使うのは良いことだが、あまり行き過ぎたものは苦手だ。

どうもメイクの濃い人を見ると、ちょっとうんざりしてくる。

その点、里佳さんは実に俺好みだった。



「では、そろそろ行きますか」


「ああ。案内よろしく」



…………

………

……



歩くこと約15分。

俺たちは駅周辺に到着した。

ここら一帯ではなかなか立派な駅であり、いろんな店が並んでいて活気がある。

カップルもちらほらいた。

俺と里佳さんも、こうして歩いているとカップルに見えるのだろうか。

彼女は一体どんな気持ちで俺の隣を歩いているのだろう?



「あ、きたきたー。おーい!こっちこっちー」



ぼんやり歩いていたら、いつの間にか目的地に着いたらしい。

といってもここが最終目的地ではないが。

それにしても、さっきから手を振りながらピョンピョン跳ねる紫苑さん。

周りの視線が気になるからやめてほしい。


ただでさえ美人だというのに、紫苑さんの私服もなかなか可愛い。

今時のスタイルとでも言うべきか。

まあ、こっちもスカートは穿いていないのだが。

それでも歩いているだけでモデルのスカウトが寄ってきそうな容姿なのだ。

そんなんだから通りすがりの人の視線も集めている。




「無事にたどり着けたんやな。もう道は覚えたんか?」


「ああ、覚えた。…………たぶん」


「最後の言葉がちょっと気になるけど、そんなことよりボウリング場にレッツゴー♪」











「う〜ん。どのボウルにしようか。よし、一番軽いのにしようかな」


「情けないで裕樹。男ならもっと重いやつで行こうや」


「や、喧嘩は弱くないと思うんだが、球技系は苦手でな。扱い安そうなこいつにする」



そう言って選んだのは一番番号が小さいボウルだった。

流石にキッズ用にするのは情けなすぎるのでやめておいた。

だが、大人用で一番軽いこのボウルでも俺には十分重い。



「球技が苦手ってか……。ボウリングにそんなん関係ないんとちゃうか?」


「いや、お前は俺の球技の下手さを甘く見ている」


「そこまで言うんならやめとけば良かったやんけ」


「せっかく誘ってくれた紫苑さんに申し訳ないだろ?」



先にボウル選び終わった女性陣を横目で見た。

里佳さんと紫苑さんは見るからに楽しそうな顔をしている。

それだけでも、ここに来て良かったと思う。



「ま、それもそうやな。じゃあ、そろそろ行くとしましょか」


「ああ」


…………

………

……


「さて、それじゃあ行ってみようか。まずはカズッちね」


「ふっふっふ。俺の実力、見せたろやないか」



自信満々にそう言った一也。

ボールを持って構えるその姿はいつもと気迫が違っている。

一体あいつはどんな投球をするのか。


ゆっくりボウルを引きながら歩いてゆき………投げる。

ボウルは右側寄りを転がっていく。

このまま行けばピンは数本しか倒れないだろう。

しかし、まるで意志を持っているかのように、ボウルは真ん中に向かってカーブした。



ガコォーーン!!!



ピンがはじけ飛ぶ。

一也のボウルの威力はなかなかだった。

が、惜しくも1本だけが一也を嘲笑うかのようにそびえ立っていた。



「ぬぅ、1本残ってまったか……」



そんな呟きが聞こえてきた。

残念ながらストライクは取れず終い。



「まあ、あれならスペアだろうな」


「や、あそこまでは良いんだけどねー。問題はその後よ」


「ん?どういうことだ?」


「見ていれば分かりますよ」



──2投目

一也は左端に一本だけ残ったピンに向けて投げた。

が、今度はボウルが避けたかのようにピンの横を通過する。



「あああああ。なんでやねん!?」



関西人の『なんでやねん』を今、初めて聞いた。

やっぱり生は違うなぁと少し感心してしまう。



「よし、次はあたしだね」



ささっとボウルを準備して投げる態勢に入る。

華奢な外見とは裏腹に軽やかで、かつ鮮やかにボウルを投げていた。



ガコォーーン!!!



真ん中ちょい左をぶち抜いてピンは全て倒れた。

………全て倒れた?



『STRIKE!!!』



テレビの画面にはそう表示されている。

俺は口がポカンと開いて言葉が出なかった。

ストライクだって?



「やったぁ!初っ端からストライクって幸先いいねー」


「ほわー。流石ですね」


「ぬぬぬぬぬぬ」



もともと運動神経が良いのだろうか。

里佳さんも流石と言うぐらいだしな。

それにしても一也は、まるで犬が威嚇しているように唸っている。



「何を唸ってるんだ暑苦しい。紫苑さんって最初から運動神経いいんだろ?」


「ああ、そうや。スポーツで勝てるもんなんてあらへん。いや、スポーツだけやない!

 勉強でもあいつにはかなわへん。何でなんやろか?」


「へぇ。何でもできるんだな。どの学校でもいるもんだな、完璧な奴って」


「そんなことあらへんで。あれでもあいつは料理はへったくそでな……」


「あらカズッち。なあに話してるのかなー?」


「え、あ、せ、千堂!次はお前の番やで!はよう投げよか?」


「ふふ。分かりました」



急に話を振られながらも冷静に対処する里佳さん。

その対応は大人だった。



「では、いきます」



投げたボウルはストレートに転がってピンに向かう。

それにしても、思うにボウルの転がり方って性格がはっきり表れるもんだな。

一也の軌道なんか途中で曲がっていくもんな。

その点、里佳さんのボウルは正直で真っすぐな軌道だった。



ガコォーーン!!!



倒れたピンの数は7本。

こう言ってはなんだが、なんとも里佳さんらしい本数だった。



「うーん。頑張ってスペアを狙います」



そう言って里佳さんは再度投げる。

ボウルは鮮やかなストレートで転がっていく。

倒し損じた3本のピンは見事に1ヶ所にかたまっている。

ボウルはその場所に吸い込まれていった。



ガコォーーン!!!



そう音をたてて全てのピンが倒れていた。

それはつまり……



「やりましたぁ。スペアです!」


「おおー。やったね里佳!」


「ぬぬぬぬぬぬ」



またもや一也は唸っていた。

そんなに男としてのプライドが彼を許さないのだろうか?

俺はというと球技における運動神経はとうの昔に諦めてしまっている。

よって悔しさは全くないのだ。



「おまたせしました。次は裕樹さんですよ」


「ああ」



……いかん。なんだかとてつもなく緊張してきた。

なんだかんだで皆のスコアはかなり高い。

さて、どうしたものか。

取りあえず、緊張ほぐしも兼ねてボウルを雑巾で拭いてみる。



「あの……。まだ1投もしていないのに拭く意味があるんでしょうか?」


「あ、それもそうか……」



仕方ないので拭くのを止めてボウルを持って前に立つ。

平常心だ……平常心……。


この状況を説明するなら背水の陣といったところか。

いや、四面楚歌のほうがいいかもしれない。

そうだ。皆して初めからハイスコア出しやがって。

もうどうにでもなれ!



「いっけぇ!!」



ボウルを投げる。

しかし、むなしくも半分も行かないところで右側のガーターに落ちてしまった。



「……………」


「「「あーあ」」」



後ろからそんな声が聞こえてくる。

どうせこうなると少しは思っていたさ。

まあ、実は予想してたことではあるが実際やってみると結構恥ずかしい。



「大丈夫大丈夫。まだ始まったばかりだよ」


「次でストライク取れば問題ないで」


「ここからが本領発揮ですよ」



三者三様の慰め言が逆にグサッと胸に突き刺さる。

しかも里佳さん。その言葉は違うよ。

もうとっくに本領発揮してるさ。

なんていうか、今この状態がまさに俺の本領なんだよね……。


などと嘆いてはおれず、再度ボウルを投げようとする。

さっきは右側に落ちたんだ。

それなら今度はちょっと左の方に………いっけぇ!


しかし、その瞬間………



「ぐはっ!」



投げようとしたボウルが思いっきり右足に当たった。

かなり痛い。

叫びそうになったが声を押し殺す。

それよりも俺のボウルは一体どこいったんだ?



「裕樹さん!右です!右!」



後ろからの声に俺は右を向いた。

すると俺のボウルは他人のレーンのガーターに転がり入っていった。



「な、なんだぁ!?」


「どうかしたのかー、相田ぁ?」



隣の人は相田という名前らしい。


ごめんよ、相田。

俺だってそんなことするつもりは無かったんだ、許してくれ。


一応頭だけは下げておいて皆のところに戻る。

全員が腹を抱えて笑っていた。



「クックック。あっははははははは!お、お前最高やわ裕樹。なぁははははは!」


「あ、あたしも笑いすぎて……。な、涙がでてきたよ、くくくっ……」


「ぷっ、クスクスクス……。す、すみませぇん。笑ってはダメなんですけど……クスクス」



ああ、わかっていたさ!こうなることぐらい。

そもそもお前らが悪いんだよ。

最初っからあんなハイスコア取りやがって。

そんな中で投げるプレッシャーって重たいんやぞ!


もはや責任転嫁というべき言い訳を心の中でしておく。

そうでもしないと俺の心は耐えられそうになかった。











かくして早くも1ゲームが終わっていった。

成績はこんな感じである。


1位 紫苑さん152点

2位 里佳さん135点

3位  一也  99点

ビリ  俺   52点



「しかし2人のスコア足してもあたしに勝てないって情けないねぇー」


「「くっ……」」


「ま、まあまあ。あの、2人足して私のスコアには勝ったので……」 



いや里佳さん、全くフォローになってないよ。

それにしても女性陣は半端なく強かった。

100越えでも十分すごいと思うのに、何なんだよ152って?何なの135って?

俺も一応それなりに腕力とかはあると思うんだけどな……。



「じゃあ、負けた男性陣は飲み物買ってきてねー」


「「はあ?」」


「2人揃って『はあ?』じゃないの!今日はあたしのおかげで遊べてるんだよー?」



もはや小悪魔を通り越して悪魔だった。

とはいうものの反論できず、結局自販機に買いに行く。



「まったくあいつは情けのない奴や」


「まあ、仕方ないだろ。多分そうでなくても俺たちが買いにいく流れになるさ」



俺はアップル、里佳さんはオレンジ、紫苑さんはスポーツ飲料、一也はお茶だった。

それぞれ2つずつ手分けして持ち、女たちのところへ戻っていく。


と、男の2人組が何やら里佳さんたちと話している。



「ん?何だあれ?」


「はあ〜、またか。やっぱこうなるんやな」


「こうなるって?」


「ナンパやナンパ。あの2人ってなんやかんやで美人やろ?1人だけでもナンパされるらしいけど、セットでおる時やと街歩いてるだけで絶対に声かけられるんや。今まで俺が対処してきたんやけどな」


「お前も大変だったんだな」


「そやけど今回は俺だけやないで楽といや楽なんやろか。で、喧嘩は弱くはないんやったよな?」


「まあ、球技じゃなければ大丈夫だ」


「喧嘩にならんだらええんやけど、もしもの時は一緒に頼むで」


「りょーかい」



そう言って俺らは2人のところに駆けつける。

騒動にならないといいんだけどな。

仕方ないと割り切り、腹を括ってナンパ達の背後に立つ。



「おい、お前ら」


「ああん?なんだよ?」


「「俺らの女に何か用かよ?」」


…………

………

……


「いやー、やっぱり男は頼りになるねー」


「そうですね。ありがとうございました。2人ともカッコよかったですよ」


「まあ、別にこれくらい……」



とはいうものの女からカッコイイと言われるのはやっぱり嬉しい。

思わず頬が緩んでしまう。

いつもより少しルンルン気分だった。



「そんな大したことしてへんで。しかしな、紫苑。さっきと言ってることが全然違うんやけどな」


「まあまあカズッち。感謝してるんだからさ」


「そうですよ。それよりも2ゲーム目始めませんか?」


「そうだな。もう2回残ってるしな」


「むぅ……。ええやろ。次こそは勝ったるでな」



かくして2ゲーム目が始まった。

当然、俺には悲愴なスコアが残されてしまったが。

まあ、ある意味エンターテイナーになれたから良しとするか。



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