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暖かな想い  作者: vicious
2章
14/15

AfterStory:裕樹の手帳その2

何気なく活動を再開したけど需要あるのだろうか(´・ω・`)

裕樹が言っていた友達と食事は終わったのだろう。

千堂が自分の席に戻っていた。


「おーい、千堂」


「あ、一也さん。どうかしましたか?」


「めっさオモロイもん持ってんのやけど、興味あるか?」


「なんだか怪しいので興味無いです」


なんか微妙に日本語が間違ってないか?

どうやら警戒されているらしい。

確かに怪しい感じの誘い方だったが。


「まあ、そう警戒しなさんな。裕樹のことやで」


「裕樹さんのこと?」


よし。食らいついてきた。

これで手帳を渡せば、おそらく千堂は手帳の中身を見るだろう。

まあ、見なかったら見なかったで別に構わない。

少なくとも裕樹は千堂から自分の手帳を渡されて悶えることになる。


「これ裕樹の手帳なんやけど、渡しといてくれへんか?」


「直接手渡せば良いじゃないですか」


ここで引き下がっては、せっかく面白くなりそうなのに台無しになってしまう。

もう少し粘ってみようか。


「あー、いや。俺ちょっと先生に呼ばれてんねん。そやから悪いけど頼むわ」


「……そういうことなら。分かりました、裕樹さんに渡しておきます」


「ほい」


裕樹の手帳がようやく千堂の手に渡った。

さて、どう転がっていくか楽しみだ。


「ほな、さいなら」






そう言い残して一也は去ってしまい、私はそれをしばらく見送った。

彼の姿が見えなくなったところで思わずため息をつく。


「裕樹さんの手帳、か」


一也さんとは紫苑さんを通じて数年もの付き合いだから、なんとなく手帳を渡された意図は分かる。

おそらく私に手帳の中身を見てもらいたいのだろう。


だがその行為は人として、裕樹さんの彼女としてどうなのか。

倫理的には駄目に決まっている。

だが、見てみたい。

知りたいのだ、ただ裕樹さんのことを。


「ごめんなさい」


罪悪感を覚えつつ手帳を開く。

目に入ったのは、とりわけ上手でもなく、とりわけ下手でもない文字の羅列。


いや、手帳の文字にしては綺麗な方だろうか。

殴り書きをすると汚い字になってしまうもんね。


さて、一也さんが私に見てもらいたいページがきっとあるはず。

だからといって手帳の最初から最後まで目を通すのは少し気が引ける。

悪いことをしている、という自覚はあるのだ。


途中のページを一也さんが見たとは考え難い。

考え得る可能性は、裕樹さんが書きこむところを見てたことだ。

すなわち最新のページということになる。


後ろからパラパラめくっていくとページが白から黒に変わった。

ここが最新のページらしい。

胸の鼓動が早くなっている気がする。

さて、一体何が書かれているのだろう。


『屋内での過ごし方』


……つまり休日に裕樹さんがどう過ごしているかってこと?

まあ、興味がないわけではないが、これが一也さんの見せたかった内容なのだろうか。

どうも腑に落ちないが、とりあえず目を通してみよう。


・DVD鑑賞


ごく普通の過ごし方である。

私もよくTATUYAでDVDをレンタルして観ている。


・マリモパーティ3

・マリモカート64

・マリモテニス64

・マリモゴルフ64

・大乱闘スプラッシュブラザーズ


まさかのサンテンドー64のゲーム。

懐かしすぎて少し笑ってしまった。


それにしてもマリモ率が高い、というか全てマリモが登場するゲームばかりだ。

裕樹さん好きなのかなぁ。

ちなみに私はよく『でっていう』を使っていた覚えがある。


・人生ゲーム

・トランプ


……これを1人で遊んでいるの?

いや、まさかそんな訳ないよね。

きっと裕樹さんの家族と一緒にしているに違いない。


いや、確か裕樹さんは一人暮らしだった。

だとしたら本当に1人複数役で遊んでいるのかもしれない。

よし、今度一緒に遊んであげよう。


・遊戯神カード

・ポッケモンカード


えー。

もしかして、これも1人で遊んでいるの?

カードゲームって2人で対戦する遊びだったよね?


遊戯神カードはよく分からないけど、ポッケモンカードなら少し遊んだ記憶がある。

『何らかの化石』を使うととても長引くのだ。


・イチャイチャする


意味がさっぱり分からない。

猫?犬?ハムスター?

いや、裕樹さんの家はマンションでペットは禁止だったはず。



そもそもこれらは1人で過ごすためのものなのだろうか。

DVD鑑賞はともかく、マリモ系の対戦ゲーム、人生ゲーム、トランプ、カードゲーム。

どう考えても2人以上の人間が欲しいところである。


友達と遊んだ時の内容なのかな。

……いや、違う。

イチャイチャするってことは、相手は女性ということになる。


「むぅー」


このイチャイチャの相手は誰だったのだろう。

前に裕樹さんが好きだった人だよね?

だとしたら以前にいた学校の人?


いや、それはない。

もしそうだとしたら、もっと手帳の前の方のページであるはずだ。


「………?」


うん?

何か重要なことを見落としている気がする。

一体何が頭の中で引っ掛かっているのだろう?


うーん。


頭の中がもやもやしている。

思い出せそうで思い出せない嫌な感覚が広がっている。


うーん?


頑張れ私。

もう少しで何か掴めそうな気がする。


「…………!」


そうか、そうだったんだ!

よく考えれば、一也さんがわざわざ私の嫌がることをするとは思えない。

彼がどうしてこの手帳を渡してきたのか、その意図がようやく分かった。


手帳の最新のページに書かれていた、ということは今現在の相手になる。

それはすなわち私だ。

イチャイチャする相手は私だったのだ。

きっと一也さんはそのことを伝えたかったに違いない。


そうするとマリモ系のゲームとかも私と遊ぼうと思っていたことになる。

確かに盛り上がるけど。

でも、カードゲームはあんまりやってなかったからなぁ。


そんなこんなで、ようやく真相に辿りたいた私は、自分の勘違いに呆れた。

荻野裕樹の彼女は誰がなんと言おうと私なのだ。

そう実感すると同時に顔が火照ってくるのを感じた。


手を頬に当ててみたら、やはり少し熱かった。

なんか嬉しすぎて気分が落ち着かない。


やっぱり私は裕樹さんのこと好きなんだなぁ。

そして裕樹さんも私のことを……。


「ど、どうしよぉ」


恥ずかしさと嬉しさでどうにかなってしまいそうだ。

静まれ私の心!


そうだ。何か別のことを考えて気分を落ち着けよう。

何でもいいんだ、何でも。





『俺、里佳さんのことが好きだ』





あああああああ!

なんで今そんなセリフ思い出すのよ、もう!

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