AfterStory:裕樹の手帳その1
3話くらいのアフターストーリーを書いてみたくなりました。
久しぶりの活動になります。
カキカキカキカキ
別にわきが痒くて掻いているわけではない。
ただ、手帳に書き込んでいるだけだ。
何でそんなことをしているかって?
俺が手帳を活用しているという設定にもかかわらず、作者があまりその設定を……という冗談はさておき。
そろそろ春休みに突入するのですよ。
んで休暇中に里佳さんとの時間を作りたい、そんなところである。
だが、困ったことに「これだ!」という案が思い浮かばない。
原因は俺が花粉症であることだ。
今年の花粉は放射線まみれだから、花粉を体外に追い出してくれるのは身体には良いと聞く。
しかしそれでも、やはり辛いのだよ花粉症は。
「必然的にインドア系の内容ってことになるんだよなぁ」
春に外で遊ぶことは自殺行為に等しい。
だが、屋内でできる遊びなんて限られている。
俺は一体どうすれば良い?とりあえず思いついた遊びを読み返してみよう。
・DVD鑑賞
これは妥当な選択だろう。
いや、妥当というよりは定番と言うべきかもしれない。
・マリモパーティ3
・マリモカート64
・マリモテニス64
・マリモゴルフ64
・大乱闘スプラッシュブラザーズ
この辺りはサンテンドー64を押し入れから引っ張り出さないといけないな。
俺は特にマリパ3が大好きだ。
・人生ゲーム
・トランプ
これらは2人でやるより一也と紫苑さんを呼んだほうが盛り上がるよな。
だが、2人きりになれないということでもある。
・遊戯神カード
・ポッケモンカード
アホか俺は。
これを書いたとき、かなり疲れていたのだろう。
・イチャイチャする
俺はそっと手帳を閉じた。
駄目だ。
想像するだけでも恥ずかしいのに実行に移すなんてできるわけない。
しかし、俺と里佳さんとの間でそういうコミュニケーション足りてないと思うんですよ。うん。
せっかく恋人になったんだし?
もっとキャッキャッウフフなことをしてみたいわけで。
「どないした、裕樹?妙ちくりんな顔して」
「ほあぁっ!?……ってなんだ一也か。驚かすなよ」
「相変わらず面白いリアクションするのう、お前。で、どないした?」
「いや、な。どうにかして里佳さんと……って何言わせんだ」
「ほー。千堂とエロいことでもしたいと?」
バキッ!
「じょ、冗談やないか。そない怒らんでも」
「あいにく精神的余裕が無いんでな」
「そんな厄介な悩みなんか?」
そういえば一也は紫苑さんと最近良い感じだよな。
もしかしたら、異性との過ごし方ならば俺より心得ていたりして。
相談してみるのもアリか?
「なあ、一也」
「お?」
「里佳さんとさ。なんというか、こう……つまり、な」
「さっさと言わんかい!」
「り、里佳さんともっとイチャイチャしたいんだ!」
「………」
「………」
「………ぷっ」
冷静に考えると一体全体どうしてこんなこと相談したのか。
穴があったらマジで入りたかった。
「んあああああああ!」
「まあまあ。幸い周りには誰もおらへんで。俺以外は」
「最後の言葉が余計だぁー!」
「ふーん。春休みの予定を考えてるんか」
「ああ。マリモパーティ3とかマリモゴルフ64とかマリモカート64とかしてさ。……あとイチャイチャしたい」
「古くさっ!なんやその10年くらい前に皆がやったゲーム軍団は?しかもマリモばっかやないか」
「いや、だって盛り上がるじゃん」
「ゲームからイチャイチャに持っていくんか?どうやって?」
「いや、それが分からないから相談しているのだよ」
「なるほど」
こいつに相談したのが間違いだったのかもしれない。
やはりこういうことは自分で考えたほうが良いな。
俺の精神衛生上のためにも。
「まあ、午前中はテキトーにゲームして、昼飯食って眠くなったとでも言うて膝枕してもらえばええんとちゃう?」
「……おお!」
なんという素晴らしい提案。
こいつに相談して正解だった。
やはりこういうことは親友に相談したほうが良いな。
「じゃあ、まずはマリモパーティ3で対戦してから……」
「ていうか、千堂ってマリパ3知ってんの?」
「……」
前途多難である。
「そういや当の千堂はどこにおるん?一緒に昼飯食べてるもんと思うてたんやけど」
「今日は久しぶりに女友達と食べるんだってさ」
「つまり千堂は今頃お前とのこと根掘り葉掘り訊かれてるわけやな」
「そういうこと言わなくていいから。ていうか、お前は何をしに来た?」
「2人をからかいに来た」
バキッ!
「俺は先に教室に戻ってるわ。じゃあな」
裕樹の歩き方は明らかに苛立ちがにじみ出ていた。
やはり純情な奴なんだなと実感する。
「いつつ。あいつ結構力入れて殴りよったな……ん?」
足元に何かが落ちている。
拾い上げて確認するとそれは手帳だった。
パラパラとめくってみるとマリモカートやらなんやらがメモってある。
さっきの裕樹の会話の内容と手帳の内容から察するに、これはおそらく裕樹の手帳だろう。
「あ、ええこと思いついたわ」
一也はニヤニヤを抑えきれなかった。