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暖かな想い  作者: vicious
1章
12/15

暖かな想い

「裕樹さんの考えって何でしょうか?」


「さあ、俺にはさっぱりわからんなぁ」


「一体全体、何をする気なんだろうねぇ?」




裕樹さんは職員室に走って行ってしまった。



『ちょっと考えがあってな。職員室に行ってくるわ』



と、そう言い残して。


裕樹さんは何か考えがあると言っていた。

解決の糸口が見つかったのかな?

でも、それならどうして私に話してくれないの?


なんだか寂しい気持ちになる。

裕樹さんに何か隠し事をされている感じで。

だんだん疑心暗鬼になってくる自分にも嫌気がさしてきた。

私、どうしちゃったのかな?



「大丈夫だよ、里佳」


「え?」


「あんた達は恋人なんでしょ?だったら裕樹君を信じよ?」


「紫苑さん………」



その言葉で気持ちが少し和らいだ。

そうだ。私と裕樹さんは恋人なんだ。


裕樹さん、大丈夫だよね?

私、あなたのことを信じても良いんだよね?



「あ……。あいつ帰ってきたで」


「本当ですか!?」











「お待たせ、里佳さん」


「それで一体何を話しにいってたんですか?」


「なあ、裕樹。俺らには一言もないんか?」


「……2人して私たちを完全無視してるね」



一也たちが何か言ってるようだが、全く聞く耳を持っていなかった。

とりあえず、まずは里佳さんに報告だ。



「俺の考えは明日になったら全部話すよ。今日は話せないんだ」


「明日、ですか………?」


「ああ、すまないと思っている。でも俺を信じてほしい」


「裕樹さん………。わかりました、裕樹さんを信じます」


「ありがとう、里佳さん」



俺を信じてくれた里佳さんのためにも。

そして自分自身のためにも。

俺は、勇気をださなければならない。


今度こそ俺は、大切な人と生きていくんだ。



「2人ともアツアツだねぇ」


「そうやな。なんか聞いてて恥ずかしゅうなってくるわ」


「な………」



珍しく人が真剣に決意していたところなのに……。

よくもまあ水を差してくれたものだ。















そして次の日になった。

私は、裕樹さんに会ったときに早速昨日のことを聞いてみる。



『今日の放課後までには分かるから』



とのことだった。

また、話をはぐらかされてしまった。

仕方なく裕樹さんが話してくれるまで待つことにする。


1限目

2限目

3限目

4限目

昼休み


結局、裕樹さんは話してくれないまま時は過ぎていった。

もう5時間目の全校集会も終わってしまう。

これが終わると放課後だというのにもかかわらず。


もしかして、全て嘘だったの?

ホントは最初から話す気なんてなかったんじゃ……。



「最後に先生方、何か連絡はありますか?」



もう、集会が終わっちゃうよ?

これで放課後になっちゃうのに。

裕樹さん、私はあなたを信じてもいいの?



「ひとつ私から連絡があります」



聞きなれた声に反応して前を見る。

すると、葛城先生がマイクを握っていた。



「最近学校で広がっている噂について、うちのクラスの荻野から話があるようです」



え………?



「おい、荻野!前に出てきなさい」


「はい!」



ええっ…!?


裕樹さんは前に行って、先生からマイクを受け取った。

階段を上って壇上の上に立つ。

そして、おもむろに話し始めた。



「みなさん、2年4組の荻野裕樹です。

少しだけ俺の話を聞いてください。

今、学校では千堂里佳という生徒が俺の家に泊ったという噂が流れています。

はっきり言いますが、それは本当のことです。」



裕樹さんの一言で、体育館が騒がしくなる。

何でそんなことを全校生徒の前で?

そんなことしたら、私たち学校にいられないよ………。



「でも。俺たちには、やましい気持ちなんてありませんでした」



確かになかったけど、そんなこと皆は信じてくれないよ。



「皆さんは自分の存在意義について考えたことはありませんか?

もし考えたことのある人は分かると思います。

それがどんなに心寂しいことかを」



いつの間にか裕樹さんの話を真剣に聞いている私がいる。

彼は昨日のことを正直に話すつもりなんだ。



「彼女は自身の存在意義が分からなくなったんです。

だから、寂しさと切なさを埋めるために、俺のぬくもりを欲していただけで。

俺も彼女が好きだから、それを全力で受け止めただけです。

これは、いけないことでしょうか?」



ざわついていた声が静まっていく。

私の中には熱いものがこみ上げてきた。

裕樹さんの一言一言が私の心に染みていく。



「俺は千堂里佳を愛しているから、彼女の心を守ろうと思ったんです。

千堂里佳に愛されたいから、彼女と時を過ごしたんです」



溢れだしてきて、頬を伝っていく。



とても暖かい涙が。



私は、駆け出していた。



裕樹さんの所へ。



愛する人の所へ。



愛してくれる人の所へ。



そして伝えよう。



「私も、荻野裕樹を愛しています」



暖かな想いを。














fin


最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。


「暖かな想い」のスピンオフ作品として「ささやかな想い」もアップしています。

よければどうぞ。



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