古い図書館の噂
これは少し昔の遠いどこかのお話です。
昔々あるところに大きな図書館がありました。その地域には学校というものがなく
図書館には、大人から子どもまでたくさんの人が訪れ、皆それぞれ好きな本を読み、
成長していきました。
しかし時が流れ、学校や塾、娯楽施設にテレビゲームなど学習環境と娯楽が整って行くうちに段々と人が訪れなくなり、ついには閉館となってしまいました。
それからしばらくして、子どもの間で奇妙な噂が広まり始めました。
「ねぇ知ってる?図書館の噂」
「知ってる!図書館の印がある本がいつの間にか自分の家にあるってやつでしょ」
「そーそー。それでね。隣のクラスのAちゃんのお家にもその本があったんだって」
「本当!?こわーい」
「それでねこの話には続きがあって、何でもその本を読まないで三日間放置すると図
書館に連れてかれちゃうんだって」
「なにそれー」
その噂は瞬く間に学校中に広まりましたが、対処方が本を読むだけなので最初の内は怖がられていたものの次第に怖がられることはなくなりました。
そんなある日、クラスの男の子たちがこんなことを話していました。
「今度誰かの家に本が置いてあったらそのまま読まないでおこうぜ!」
「いいじゃん!面白そう」
「よーし、じゃあ約束な。本があったら読まずにみんなの所に持ってくる、そしてそれを読まないままにしておく」
「おー」
それは単なる子どもの度胸試しのようなもので、皆噂のことはあまり信じておらず、ましてや連れてかるなんて夢にも思っていませんでした。その後も何が起こることもなく学校中で噂が飽きられてきた頃、約束の言い出しっぺであるB君が足早にクラスにやってきました。
「これ見てみろよ。昨日帰ったら家に置いてあったんだぜ。」
そう言って一冊の本を取り出してみせました。そこには、はっきりとあの閉館した図書館の印が押してありました。クラスの男の子たちが一斉にB君の元に駆け寄ります。
「すげー本物じゃん」
「もちろん中は読んでないよな」
「当たり前だろ。どうなるか楽しみだせ」
皆で話し合った結果、三日目の夜にB君の家に皆で泊まることになりました。
「じゃあ皆、泊まりの準備が出来たら家に集合な」
「おー」
放課後、皆準備を整えBくん家に集合し、今はゲームをしています。しかし時間がたつにつれ、やはり小学生なのか一人また一人と寝てしまい、ついにはB君一人になってしまいました。
(なんだよ。皆寝ちゃったじゃん)
とB君は思いながらふと時計を見ると、時計の針は十二時に迫ろうとしています。そのままボーッと時計を見ているとやがて時計は十二時になり、ボーンボーンと音を鳴らしました。B君がため息をつきそろそろ寝るかと振り替えるとどうも様子がおかしい。さっきまでいた友達がどこにもいません。B君がパニックになっていると突然足をガッと捕まれました。床に倒されたB君が足の方を見ると真っ黒い手が足をつかみ暗闇に引きずり込もうとしています。
何か助かる方法はないかと、辺りを見渡すと一冊の本がB君の目に留まりました。B君は渾身の力を振り絞って本を手にとると、一心不乱に読みました。そして一説読み終わると同時に黒い手がフッと消え、部屋も元に戻りました。B君は安心したのかそのまま気絶したように眠ってしまいました。
B君が目を覚ますと既に皆起きており、本はどこにもありませんでした。