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第2話 暗闇の中

ポツ



ポツ



ポツ




等間隔で響きわたる、水が滴り落ちる音。



ユウスケは冷たい岩のような地面の感触を感じ、目覚めた。



目を開けてもほとんど何も見えない暗闇の中、

ユウスケは肌寒さを感じて、自分の腕をさすり始めた。



「…はあ。なんだこれ。なにしてんだ。」




ふと自分の体を見る。




まだ見慣れない真新しい制服姿。




「…そうか、今日が登校初日で、バス停まで自転車で…」




「それで…なんでこんなとこで寝てんだ。」




水の滴り落ちる音の響きから、今いる場所が、とても広い空間であることに気づく。




倒れていた場所のすぐ近くに自分のカバンがあるのをみつけた。




無意識に中を確認してみると、

筆記用具、財布、教科書、ノート、スマホ、弁当など、朝詰め込んだものは全て中に入っていた。




胸の中に不安が広がっていくのと同時に、ユウスケの頭はなんとか冷静に状況を分析しようと、記憶をたどり始める。




(あ、そうだ、鈴本さんは!?)




ユウスケは暗闇の中で、恐る恐るちぐさの名前を呼んだ。


しかし、何の反応もなく辺りは静寂を保っている。



(鈴本さんをチャリに乗せてトンネルに入るところまでは覚えてんだよな。トンネルに穴でも空いてて、ここに落ちたのか?)



(いやいや、あのトンネルの中に穴なんてあるわけないんだけど。)




(つーか、状況の把握どころか推測するのも無理そうだな。とりあえず早く鈴本さん探さないと。)




徐々に目が暗闇に慣れてきたところで、ユウスケは立ち上がり、ゆっくりと歩きだした。




やがて視線の先に、なにかの影を見つけた。




「鈴本さん!」




ユウスケがそこへと走り寄る。




すると突然、影がユウスケの方へ急に飛びかかってきた。




「おわっ!!!」



ユウスケは反射的にかがみこみ、影との衝突を免れる。




ユウスケは地面に転がり、自分の心拍数が急激に高まるのを感じながら振り返った。




そこには今にもこちらに飛びかかろうとしている、

四つ足の真っ黒な生き物がいた。




暗闇でよくみえないが、ヒョウやトラのような何かだとユウスケは思った。




「はぁ!?」




ユウスケは何も状況を掴めないことに苛立ち、思わず叫んだ。




しかし動物的本能か、ユウスケは今まさに襲いかかろうとしているこの黒い生き物から、自分の身を守らなくては行けないのだということをすぐに理解した。




だが、日本のごく普通の高校生ユウスケに戦闘の経験などありえるはずもない。



「ウラァァァァぁ!!!」



相手が怯んで逃げ出すのを期待して、ユウスケはとりあえず叫んだ。



「グルル…」



ドサッ。




黒いヒョウのような生き物は弱々しくうなり、

突然倒れた。






「………………ん?」






「………………ん?」







(………俺、……勝った?)




そのまま黒い生き物は動かなかった。




まだ気が抜けないユウスケは、しばらく黙って様子をみることにした。






まったく動かない。




ユウスケは様子見にもだんだん飽きてたので

黒ヒョウの様子を確認したい衝動に駆られた。




そっと近づいていく。






「おい、少年…」



突然響いてきた幼い女の子のような声。

その声は耳に聴こえたというよりは、直接頭に響いてくるようだった。




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