表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

さらわれた天使

 今日はお昼から二人でおでかけです。

 タケヤは白いTシャツに、ブルーのショートパンツ。

 あたしは、先週の土曜日に買ったシャツワンピを着ました。水色に白のストライプで、ひざ上3センチ。

 歩いて7分、地下鉄に乗ってさらに7分、映画館にたどり着きました。

 二人でいっしょに、今話題のアニメ映画を見ました。

 そのあとはカフェに行き、タピオカミルクティーを頼みました。席に座ると、

 「火事のこと聞かせてくれよ」

 「その夜。もうすぐ家に着くという時に、帰る道と反対側に青く光っているのが見えて…

 行ってみたら、ビルが燃えていたの。119番に電話して、消防車が来たんだけど…なかなか消えなくて。

 少ししてからおまわりさんが来て、このことを話したというわけ」

 「他には?」

 「火事を見つける前に、一台のバイクとすれ違ったわ」

 「どんなの?」

 「赤いバイクに、星条旗のヘルメット」

 「そいつ、もしかして…」

 「おそらく犯人よ。おまわりさんも、消防士さんも、放火の可能性が高いと言っていたわ」

 お店の時計をちらっと見て、

 「本屋さんに行ってるわね」

 「おう」

 お店を出て1分、信号が赤に変わりました。

 待っていたその時、後ろからハンカチで口を押さえられ…

 気絶してしまいました…



 気がつくと、廃墟(はいきょ)の中にいました。起き上がろうとしましたが、起き上がれません。気絶している間に、麻酔をかけられていました。

 目の前に男性が二人、(とし)は20代前半。一人は、黒に近いブラウンの髪。着ているのは、白のワイシャツと黒のスラックス。

 もう一人は、金に染めた長い髪を、後ろでまとめています。白いタンクトップに、ジーンズが決まっています。二人の手にはピストル…

 「よぉ。オマエ、俺に見覚えはあるか?」

 「いいえ、ないわ」

 「だろうな。じゃぁ、赤いバイクに乗ってたヤツと言えばわかるか?」

 「…わかるわ」

 「俺はその男だよ。もうすぐテメェは死ぬんだ。何か言いたいことはあるか?」

 その時、あることを思い出しました。

 「お兄さんたち、13年前に起こった火事の被害者でしょ?」

 二人の手から、ピストルが落ちました。

 「はぁ?何言ってんだ?」

 「13年前…銀行の支店長だったあなた方のお父様、ある日お金が足りないことに気付く。横領していた部下を見つけ、きつく注意をする。

 後日、謝りに来た部下を迎え入れたが、お父様はその部下に殺される。その様子を()の当たりにしたお母様も、口封じのために殺害。自宅を放火された」

推理が当たっていたのか、二人とも絶句していました。

「…どうしてそれを」

「パパが刑事だったから。ただの火事として片付けられたけど、パパは事件だと見抜いていたわ。

 ご両親を殺した犯人は、殺害された、金融会社の社長さん。凶器は、実弾に改造したモデルガン。殺さ れた場所はリビング、火元はお父様とお母様の遺体。当時、お父様の部下だった社長さんは、ご両親を殺した後、ゴミ袋に入れたガソリンを置き、(たこ)糸を結んで導火線にし、マッチで火をつけて殺した。

事件に切り替えた後、パパはずっと、あなた達を探していたわ」

 「オヤジさんは?」

 「6年前に死んだわ。最後まで、あなた達を助けようとしていた。でも、助けてあげられなかった。

辛かったでしょ?助けてあげられなくて、ごめんなさい」

 二人の顔を見ると、怒りと悲しみに震えていました。

 「こんなんで許せるかっ!」

 「確かに、あなた達の言う通りだわ。でも、あなた達を探していたのは本当よ。パパだけじゃないわ、あなた達の親戚全員探していたわ」

 あたしの話を聞いて、怒りが消えていくのがわかりました。

 「あなた達がヤクザになって、罪のない人たちを傷つけていると知ったら…天国のお父様とお母様が泣いているわ。

 これ以上…罪を重ねないで」

 二人が戦意喪失(そうしつ)していると、誰かが助けに来ました。

 「警察だ!知立院零(ちりゅういんれい)、知立院(ごう)!数々の殺人、この子の誘拐、諸々(もろもろ)の罪で逮捕するっ!」

 「酒井さん」

 目の前には刑事が5人、犯人はもう逃げられません。しかし、二人は笑っていました。

 「みんなまとめてブッ殺してやるよ…」

 一人がそう言うと、二人は雄叫びを挙げました。その瞬間、人の姿が見えなくなっていました。

 そこにいたのは…ファンタジーに出てくる、ゴリマッチョなドラゴンでした。

 ドラゴンを見て逃げ出す中、酒井さんともう一人が残りました。

 「松本、俺たちもやるぞ!」

 「はいっ!」

 二人は目を閉じ、空手の構えのポーズを取ると、黒い闇が全身を包み、姿を変えていきました。闇が消えると、二人の鬼がいました。

 酒井さんは、ダークグレーの肌に、黒い髪。松本さんは、コーヒー色の肌に、金色の髪。二人とも角は二本で、筋肉質なカラダです。そして…闘いの幕が上がりました。

 すぐあとに、誰かの足音が聞こえてきました。

 「兄ちゃん!」

 「タケヤ…」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ