7月の天使
あたしは夜丈カノン。中学2年生のおかまです。
2月24日の生まれのA型。149cm、36kgです。
昨日の夜、ママが死にました。
児童文学作家で、自らイラストも描いていました。
同窓会にでかけていた帰り道、車にひかれて死んでしまいました。そのドライバーはお酒を飲み、信号無視もしていました。
パパは捜査一課の刑事。6年前、犯人に射殺されました。31歳でした。
パパとママは、同じ児童養護施設に育ちました。
同い年ですが、パパは11月20日。ママは3月8日で、一学年上です。
あたしのおじいちゃんとおばあちゃんは、あたしが生まれる前に死にました。
あたしには、たったひとりの身内がいます。
夜丈武矢。小学5年生の弟です。
誕生日は11月2日。血液型はО型。137cm、33kgです。
お葬式の準備をしていると、一人の男性がやって来ました。
「カノン君、タケヤ君」
酒井良人、29歳。捜査一課の刑事で、パパの元部下です。
「お久しぶりです」
「これからどうするんだ?」
「児童養護施設に行きます」
「そんなトコに行くんだったら、一緒に暮らさないか?」
どうしたらいいのか悩んでいると、
「兄ちゃん。俺は児童養護施設より、酒井さんのところがいい」
「そうね。酒井さん、あたし達を引き取っていただけませんでしょうか?」
酒井さんは胸を張って、
「任せとけ。絶対に守るから」
お昼過ぎ、3人で役所へ。里親と転校の手続きを行いました。
「カノン君。みちるさんに似てきたよね」
「ありがとうございます」
”みちる”は、ママの名前です。
「酒井さん。あなたと初めて会った時から、ずっと思ってたことがあるのですが…」
「何だ?」
「普通の人とは違う何かを感じるの」
酒井さんは、戸惑っていました。
4日後、お葬式がしめやかに行なわれました。
放課後や土日を使い、ママの遺品整理と、引っ越しの準備を行いました。




