プロローグ
この世にヒーローなんていない。
そう知ったのはまだ幼かったころだ。
学校ではバケツで水をかけられたり、机に落書きされたり。私は怖くて反抗できなかった。
助けてくれる人はいなかった。
家に帰っても聞こえるのは母と父の口喧嘩。
母が私にする話は父の愚痴ばかり。父が私にするのは母の愚痴ばかり。
中学一年生の時、母が父を包丁で刺した。
母は警察につかまり、父は死亡。
私は祖母と祖父と一緒に暮らすことになった。
祖母と祖父は昔からあたりが厳しかった。
勿論両親がいなくなったからといって優しくなるわけもなく、私は耐えられなくなり家を飛び出した。
15の時、居場所がなくなり夜遅くに一人外にいた私は、ある女性に声をかけられた。
彼女は「まひる」と名乗った。
私は、両親のこと、祖父母のこと、そして警察には言わないでいてほしいことをお願いした。
警察に言うと祖父母に会うことになるからだ。
まひるさんは私のことを快く受け止め、迎え入れてくれた。
私はまひるさんの家に住ませてもらうことになった。祖母、祖父は私のことなど探さないだろう。二人にとって私はただの邪魔者だし。
学校には行かず、まひるさんが買ってきてくれた計算ドリルや漢字ドリルなどをやった。
まひるさんは働いているので、一人は怖かったけど、まひるさんは休み時間になると電話をかけてくれたし定期的にメールもくれた。
まひるさんは私に愛情を注いでくれた。まひるさんの前では笑顔になることができた。
こうして幸せな日々が続いていた。
それは私が15歳だった時、まひるさんとスーパーでの買い物を終えすっかり暗くなった東京の街で起きた。
「いやー、すいま!今日もつきあってくれてありがとね!」
「まひるさん、感謝するのは私のほうですよ?いつもお世話になってますし」
「そんなことないよ。私、一人ぼっちは嫌いだからさ。すいまちゃんがうちに来てくれて、毎日楽しいし!・・・ってすいま、聞いてる?」
私は固まていた。
私は少し震えながらまひるさんに聞いた。
「ま、まひるさん・・・あれ・・・なんですか、ね・・・」
「あれって、すいまが指差してる方にあるのは今いたスーパー・・・じゃ・・・何あれ」
それは、浮いていて、凄く派手に光り輝いていて、大きくて、堂々と駐車場の車の上を進んでいた。
見た目は・・・例えるとすれば、お神輿だ。
小さな男の子が乗っていた。
「ワッショイ!ワッショイ!この神輿が見える方!!!この俺『ひので』の姿が見える方!!!いたらすぐに手を挙げてー!!!恥ずかしがらずに手を挙げてー!!」
世界を守る機密組織、『ワンデイズ』に加入を願います!!!!