第7限目生徒会室の精霊使い 前編
学園生活での初めての授業は、クレスにとっても馴染み深い魔法の四元素についてだった。
「基本魔法は四つの元素を元に作られています。火・水・地・光の四つです。これは皆さんも既に学んでいることですね」
魔法の四元素。これはクレスの世界にも存在していて、少し内容は違うものの大体は一緒だった。
(四元素の一つに光があるんだ)
授業は続く。
「しかしその四元素以外の属性も魔法にはあります。例えばどんなものがあると思いますか? クレアさん」
「は、はい」
不意に指名されてクレスは立ち上がり、質問に答える。
「四元素以外の魔法……ボクの世界だと、他には闇や風、氷といったものがありました。それに四元素の中身も少し違いましたね」
「クレアさんが今言ったものの中だと、全部この世界にはあります。ただそれらの魔法を扱える人は限られていて、大変貴重な魔法として扱われていることが多いです」
(貴重な魔法、か)
席に座りながらクレスは自分の使える魔法を思い出す。実は今挙げた魔法は闇以外は全て使えるのだが、果たしてそれを当たり前のように使ってしまったら、どんな評価を受けるのかと考えてしまう。
(魔法はいい意味でも悪い意味でも多種多様な力。使いどころを間違えれば危険かもしれないし、慎重にならないと)
そんな事を考えている内に、初めての授業は終わっていたのだった。
■□■□■□
昼休み
ユノとストレアと共にクレスは学食に来ていた。
「オススメとかある?」
この世界に来て間もないクレスは試しにストレアにオススメを聞いてみる。
「オススメ……って私もこの学食使うの初めてなんだけど?!」
「ストレアなら学食のメニューも把握してそうだったから」
「そんな無茶言わないでよ!」
結果怒られた
三人とも当然学食は初めてなので、他の人が頼んでいるメニューを真似して、それぞれ注文することになった。
十分後
「うげぇ」
「ちょっとクレア、食事中に汚い」
「ご、ごめん。ボク、この世界の食事慣れてないから」
「クレアさんが食べてるの……私達が日頃食べるものなんですけど……」
「本当?!」
クレスが頼んだのはスープカレーのような何か。クレスの世界にも似たようなものがあったが、こうも味が違うとショックを隠しきれない。
(これが文化の違い……世界の違い、か)
ただ頼んでしまった以上は完食しないわけにはいかず、クレスは苦い顔をしながらガールズトーク(仮)を楽しむ。
「それにしてもすごいわねクレア」
「すごい? ボクが?」
「だって今日初めての授業だったのに、スラスラと質問も答えられてたし、何よりこの世界の人間じゃないのによく話についていけるなって思って」
「そんなすごい事なんて何もないよ。ボクは元の世界の知識を言ったまでだったし、まだこっちの世界の勉強にはついていけてない」
「それでもすごいです。知識があるのって……羨ましいです」
「褒められるような事じゃないってば」
クレスは少しだけむず痒い気持ちになる。自分としてはそこまで大したことしてないのだが、二人にとっては羨ましいことらしい。
(これで男だったらモテるんだけどなぁ)
気持ちはとても複雑だった。
昼食後も三人の話題はやはりクレスの事だった。
「ねえねえ、クレアって将来生徒会長目指すの?」
「生徒会長? そういば昨日もそんなこと言っていたよね? ボクが次期生徒会長候補だとか」
「入学する前から噂でしたから……クレアさん」
「そうそう。それでどうなの? クレアがその気なら私達応援するよ?」
「いや、流石に入学二日目でそこまでは考えられないよボクも。そもそも立候補するとかならともかく、候補の噂なんだしさ」
「じゃあ時間が経てばちゃんと考えるのね」
「え、ま、まあ」
(今のところそのつもりは微塵もないけど)
「なら放課後時間ある?」
「え? ボク? 勿論あるけど」
「なら見学しに行ってみない」
「見学?」
「これよこれ」
そう言いながらストレアはクレスとユノに一枚の紙を見せる。彼女が見せて来たのは今朝部活動勧誘で配っていたビラと同じもの。そこにはこう書いてあった。
『来たれ生徒会! 生徒会見学会開催』
「いつの間にこんなものを」
「朝しっかり受け取っていたのよ。折角ここに次期候補がいるわけだし」
「だからボクはまだ出るなんて一言も」
「とにかく 私も生徒会に興味あるし行ってみない? 二人とも」
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放課後
特に断る理由のなかったクレスは、何故かユノまで巻き込んで三人で生徒会の見学会へ。
「すいません、生徒会の見学に来ました!」
そう言いながらストレアがノックして数秒後、
「はいはーい」
出てきたのは金髪の女性。それを目にしたクレアは思わず吹き出してしまった。
「クレア、どうしたの?」
「な、な、何でもない」
(なるほど、そういうこと……)
「見学は三人ね。私は生徒会副会長のシルヴィア。よろしくね」
出迎えてくれたのは、
生徒会副会長
もとい
精霊使い シルヴィア
クレスがかつて世界を旅した仲間の一人だった。
「特によろしくね、異界人のクレアちゃん」
シルヴィアの笑顔にクレスの背筋が凍った。




