第3限目エロティックなナイスボディ
ストレアと共にAクラスの教室へとやって来たクレス。そこに集まっているのは、やはり全員が女子であり、自分が男であるのを忘れてしまうくらいドキドキしてしまっていた。
(三年間女子に囲まれた学園生活……男としては何とも嬉しい事だけど、複雑な気持ち)
「どうしたの? クレアちゃん」
「え、あ、ごめん。ボク、ちょっと緊張しちゃって」
「そうなの? やっぱりまだこの世界に来たばかりだから、慣れていない感じ?」
「う、うん、まあ、そんなところかな」
(本当は違う意味で緊張しているだなんて、口が裂けても言えないや)
とりあえずストレアと共に教室へ入り、指定された座席にクレスは座る。すると、丁度隣の席にストレアも着席した。
「席お隣さんでよかったね。折角同じクラスになったんだから、沢山話がしたかったし」
「ボクも安心したよ。話せる人がいてくれて」
同じクラスで、隣の席同士。クラスとしては何か不思議な運命を感じずにはいられなかったが、何度も言うように彼は男である。
例えそれが運命だったとしても、彼が望むような形には決してならないのだ。
(というより、女子校だからそういうのは縁遠いか)
それは特殊な趣味を持っている人を除いての話だが。
「はい皆ぁ〜、席についてぇ」
ふと教室中に力が抜けそうな声が響き渡る。教室の中の全員が何事かと考えるも間も無く、教室の一番前。世に言うなら教壇と呼ばれている場所に、その人物は姿を現した。
いや、正確に言えば転送されてきた方に近い。何もない空間から突然姿を現したのだ。
「えっとぉ、一二三……。よし、全員揃っているみたいだねぇ」
教室を見回して数を数えて、うんと頷く赤髪の女性。恐らくクレス達の担任なのだろうが、皆が注目していたのは転送されてきたことよりも、彼女自身だった。
「う、羨ましい」
隣のストレアからはそんな声を漏らしている。そう、彼女は世の女性が一目見れば分かるくらいナイスバディだった。
肩にかかるくらいの長さの髪
大きな目と青い瞳
そして何よりも目立つのは、その豊満な……。
(エロっ!)
クレスは思わず心の中で叫んでしまう。もしこのクラスに、いや、学校に男がいようものなら皆が彼と同じ感想を持っていたに違いない。
そしてそのエロティックな教師を更に象徴するのが、腰の辺りから生えている尻尾。元の世界でもそれを何度か見た事がある彼は、その先生が人ではない事、そして、サキュバスの類の女性である事を理解した。
(この世界でもやっぱりサキュバスはエロかった……)
「クレアさぁん……クレアさぁん……」
「え、あ、は、はい!」
そう結論づけている間に、いつの間にか自分の名前を呼ばれた事に気がついたクレスは、思わず返事をしながら立ち上がってしまう。
「元気な返事ですねぇ。クレアさんは確か異界人の方ですよねぇ?」
「は、はい。そうです」
「じゃあ分からない事が多いと思うから先生に何でも聞いてねぇ。色々な事を教えてあげるからぁ」
甘ったるい声で言う先生に思わずドキッとしてしまうクレス。
(だ、駄目だ、今自分が女だという事を忘れてしまいそう……)
若干顔が上気してしまっている事を何とか隠しながら、クレスは再び席に座る。
「あ、そういえば自己紹介忘れていたけどぉ、私は今日からこのクラスを担当する事になったぁリオでぇす。皆さん、よろしくお願いしますねぇ」
こうしてクレス、もといクレアとしての学園生活が幕を開けるのであった。
■□■□■□
その後リオはここ数日間の日程を説明し、軽いオリエンテーションとしてクラス全員が自己紹介をしたりして、今日の授業は終了した。
放課後、この後どうしようかとクレスが一人で悩んでいると、隣で帰り支度をしていたストレアが声をかけてきた。
「ねえねえクレアちゃんは、どこに住む事になっているの?」
「ボクは寮で生活する事になっているけど」
「じゃあ一緒に行こうか。寮まで」
「案内してくれるの?」
「案内するも何も私も寮暮らしだから、一緒に帰ろうってだけ。ついでに帰りながら色々なところ案内したいし、いいかな?」
「いいも何もすごく助かるよ。ボク、量がどこにあるかも分からないかったし」
「なら決まりね」
理事長は荷物等は今日にも寮のクラスの部屋に届いていると言っていたので、あとは彼自身が向かえばいいという話だった。しかし肝心の場所を聞きそびれていたいて、ストレアの提案は彼にとってはとても助かるものだった。
「あ、あの、それ、私もついて行って……いいですか?」
帰り支度を終え教室を出ようとしたところで、二人は呼び止められる。呼び止めてきたのは、入学式の時に彼に声をかけてきた少女だった。
「人数多い方が楽しいし、それは構わないよ。えっと……」
「わ、私、ゆ、ユノって言います……。その、よろしくお願い……しま……」
今にも消えてしまいそうな声で自己紹介をするユノ。入学式の時はもう少し元気があった気がしたようなと思いながらも、クレスは彼女の手を取る。
「よろしくね、ユノ」
「は、はい!」
こうしてクレスは二人目の友達ができたのであった。