~The girl got ties~
少女との出会い
(はあ・・・結局昨日は会えなかったな。でも教室まで行くのもちょっとな・・・)
「・・い」
(やっぱりブログで言ってみたほうが良いよね・・・)
「唯!」
「わっ!えっ誰?」
反射的に座っていたベッドから跳ね上がると目の前には子供が居た
「やっと聞こえたんだね。良かった・・・ていうか僕ってそんなに存在感薄いの・・・?ちょっと泣きそうなんだけど。」
と心底ほっとした様子のその子はとても綺麗だけど、どこか儚げで・・・そして知らない子だった。
「えっ、は?何で家の中に・・・ていうか君誰?今私の名前呼んだよね???」
「うーんと、まずは自己紹介からするね・・・って言ってもこの状態で分かってくれるかめっちゃ不安だけどまっ、いっか」
「えっ・・・?」
「僕は『奏』これからよろしくね」
「・・・」
(今日は休みだからゆっくりしようと思ってた私を返してよ・・・なんか自己紹介始まってるし。まあなんとか落ち着けたし・・・しかたない)
「とりあえず『奏君』・・・でいいのかな?」
「うん。呼び方はなんでも構わないよ。呼び捨てでも君付けでも好きなように呼んで」
「じゃあ奏君は何でここに?」
「唯・・・君に会うため」
(???)
「何で私の名前を知ってるの?・・・もしかしてあの人達の知り合い?」
『あの人達』というのは私の両親のことだ。何か特別なことがあったわけではないが、あの人達と私はすこぶる仲が悪い・・・というかまず会わないし会ったとしても何もしない。あの人達は私をなんとも思っていないが会ったときに話しかけることだけはされたくないから私がいない間にお金だけ置いて出て行っている。『金はやるから関わるな』といわんばかりに。私も喋る必要性が見当たらないのでわざわざ自分から話しかけるような事もしない。そのせいか『家族との信頼やコミュニケーション』というものが私には欠けているらしい。なのであの人たちが今どこにいて何をしているのかなんてさっぱり分からないし、事故にでも遭わない限り連絡も来ない。つまりこの子とあの人たちが知り合いで今日家に来る予定があったとしても私には知るよしもないこと。なので直接この子に聞くしかない。
「あの人達?・・・もしかして君の両親の事?だとしたら間違い。全く面識ないしね。」
ほっと一旦胸をなでおろす。
「じゃあ何で君はここに?どうして私の名前知ってるの?」
「ずっと見てたから」
「どこから?」
すっと上を指差し奏という少年は不気味なほど美しい顔で笑う
「空から」
「空?」
(唯の頭の上に疑問符がついてるのが見えそうなぐらい混乱してる・・・んーこれは優が質問してきたことと唯が知りたそうなことは一緒っぽいし少し話そうか)
「えーと。さっきも言ったとおり僕の名前は『奏』さっきも言ったとおり空から来た。まあ正確に言えばそこのパソコンでフォローしている人のもとへ行ってから二日後つまり今日、君の元へ来た・・・のほうが正しいね。地上に来る前から君をずっと見てたから。」
「なぜ?」
「(優と同じ『本当に愛されること』を望んだ子ってどんな子なのかな)って思ったから」
ニコッと眩しいくらいの笑顔を向けられ新たな疑問が浮かぶ
「優って誰?」
「ああ、そっか。名前は知らないのか。君がフォローしている人の名前だよ。」
「・・・へえ『ゆう』って言うんだ。じゃあその人に会えたりとか出来る?」
「君がそれを望むのならば」
「・・・会いたい。会ってみたい」
「それならきっと会えるよ。・・・僕もそれを望んでいるしね。」
「何か言った?」
「ううん。なんでもない。
・・・じゃあどうする?いつ誘う?」
「いきなり誘うの!?
誘うとしても、こういうのってやっぱり面と向かって誘ったほうがいいのかな?さすがに『会いませんか?』っていうのをいきなり送って引かれないかな?」
「なにその『初めて友達ができてどうしたら良いか分かんない』みたいなのは・・・。君もしかしてコミュ障じゃないよね?」
「うるさい!そんな可哀相な目で見ないで!」
「・・・で、結局どうするの?」
「ブログで言う」
「あっそう。じゃあ今から彼のブログにそのこと送ったら?」
「そうするよ。えーっと
『初めてここで話したときとっても気が合いそうだったので、もう少しお話ししてみたいな・・・と思いました。良ければ××日の×時××で会えませんか?』
送信っと。・・・これで満足?」
「いいんじゃない?・・・ていうか早速返信来たみたいだけど、優のやつどんだけ暇なんだよ。」
「まあでも休日だしそんなもんでしょ。・・・内容は、っと。あっオッケーだって」
嬉しそうに笑う彼女を見て奏も微笑む。
「じゃあ僕はもう行くね。あっでもちゃんとその時には行くから安心して。」
「オッケー。ていうか、よかった~。」
「何が?」
「いやこの流れ的に二人だけかと・・・」
「あーやっぱりそっちのほうが良かった?」
悪戯っぽく笑う奏君はやっぱり目を奪われそうなほど可愛かったけれど少し切なそうで儚くて・・・とても『綺麗』だった。
「ちーがーうー!」
「くすくす。
さすがに僕もブログ上で仲良くしているとはいえ初めて顔を合わせるのに二人っきりは空気ヤバイと思うからしないよ。」
「あっそ」とそっけなく言う私に奏君は「またね」とだけ言って窓から外へ出る。唯が驚いて窓の下を見た時にはもう奏の姿はなくなっており唯はため息をこぼしてベッドに潜り込んだ。
こうして唯もまた不思議な一夜が幕を閉じたのでした
「彼女のほうはどうだった?」
「んー?ああ唯のほうも優と話してみたかったみたいでブログで『××日の×時××で会えませんか』って送ってオッケーって返事も来たよ。」
「ていうか優って結構暇人だから遊ぼうと思えばいきなり家に押しかけてもたいがい大丈夫だろうけどな。」
「ははっ。確かに。・・・ああそうだ、その日のことで唯のほうに『いきなり二人は無理だと思うから当日僕も行く』って言ったんだけど陸も来てね」
「げっ。なんで」
心底嫌そうな顔をする陸が『録画してるやつ見たかったのに』と、ぼそぼそこぼしているのは聞こえないふりをして
「だってそろそろ優に僕達のこと話しておいたほうが良いと思うし、また三人集まるのめんどくさいんだよ。」
「とうとう時期が来たか。・・・で唯って子はどうするんだ?」
「んーと、まず僕が二人と一緒に話したほうがいいから僕たち三人(優・唯・僕)で話してから少し遊んで僕は優のほうに帰り着いていくからその時合流して話そうよ。」
「それは別にいいが、その子一人で帰らせるのか?」
「あーそっか。じゃあ優に唯を送らせて僕は優の家に向かうよ。だから先に陸は優の家に向かっていって。優の家で三人集まってから話そう」
「じゃあ俺は優がお前と別れたときに呼んでくれ。そっから優の家に向かうから。」
「分かった。」
美しい少年とたくましい青年は月が輝く夜、二人笑みを零しながら確かな約束を結んだー
「もう頃合かな・・・」