疑似体験としての深層意識の現実化というSF小説(映画) 「火星は天国」 「ソラリス」 「第7惑星への旅」
☆レイ・ブラッドベリ作「火星年代記」(マーチアンクロニクルス)より「火星は天国」1954年作
この作品はご存知のように、いくつもの短編小説の積み重ね形式で壮大な火星の栄枯盛衰を描いた短編作品集のことです。
「火星年代記」という長編小説があるわけではありません。
以下はその中の「第三次探検隊」(火星は天国)より、になります。
あらすじ
2000年4月
火星への「第三次探検隊」が派遣される。
だが、、火星についてみると、、そこには緑の草原が広がり、白い家、赤レンガの家、そして教会もある、まるで地球のそっくりの風景が広がっていた。
実はそこは隊員たちの故郷の風景だった。さらに町に足を踏み入れてみると、なんと死んだはずの親族まで現れるのだった。
隊員たちは長旅のストレスからか、違和感も吹っ飛んで。ただただ、懐かしさに我を忘れてしまう。
家々での楽しい食事、語らい、
そして横たわってくつろいだ時、
ふと隊長の頭に「こんな、はずがあるわけがない」という正常な意識が戻ってきた。
「これは火星人たちが我々に見させている幻覚なのではないか?」
しかし時すでに遅かった。
翌朝、隊員全員の墓穴が掘られ、そこに墓標が火星人たちによって建てられたのだった。
☆ソラリスの日のもとで
スタニワスレム作 原作は1961年出版。
これは今現在。NHKの「100分で名著」で放送中ですのでそちらもご覧くださいませ。
この原作よりも、むしろタルコフスキー監督の映画1972年のほうが有名ですね。
あらすじ
映画版ではこうです。
「海と雲に覆われた惑星ソラリスを探索中の宇宙ステーション「プロメテウス」との通信が途切れたことから、心理学者のクリス・ケルビンは調査のために派遣される。
「プロメテウス」に到着したクリス・ケルビンが目にしたのは、友人の自殺死体、いないはずの人物の痕跡、そして知性を持つ有機体である海が及ぼす、不可解な現象の数々であった。
どうやら、この不可解な現象は惑星ソラリスを覆いつくすソラリスの海がなんらかの知的活動を行っており、その結果として引き起こされているものである可能性が見出された。果たして人類は「ソラリスの海」との間にコミュニケーションすることができるのか。ソラリスの海が考えていることを人類は理解できるのか。形而下的で形而上的な課題がたちあらわれる。」
ここまでウイキペディアより引用
ソラリスの海は隊員たちの心の奥底の葬り去った意識を呼び覚まして実体化して、突きつけるのだ。心の傷をほじくり返される苦痛にある隊員は自殺してしまうほど。
クリスの死んだはずの恋人ハリーが実体として出現します。
このハリーはケルビンが追い詰めて自殺にまで追いやったという心のトラウマの存在だったのです。
ハリーは本物なのです、肉体を持った実態です、ケルビンはこうした「お客」を葬り去ろうとしますが。
又現れるのです。
とうとうケルビンはこの「お客」のハリーを愛してしまうのです。
だがケルビンの苦悩を知ったハリーは自らの意志で消滅してゆくのだった。
一体、、現実とは何だろう。
現実もまた一種の幻想にすぎないのではないだろうか?
ケルビンの苦悩は深まるばかりだった。
だがそんなことにはお構いなく
ソラリスの海は自己運動を繰り返してゆくのだった。
☆第七惑星への旅 1962年 イブ・メルキオール監督のSF映画
Journey To The Seventh Planet
日本では劇場未公開です。
「 SF 第7惑星の謎」というタイトルでDVDが出ています。
小説ソラリス出版の翌年の映画ですから。その映画化?と思われるでしょうが
むしろブラッドベリの「火星は天国」へのオマージュといった方が良いのかもしれませんね。
あらすじ
2001年、国連によって第七惑星(天王星)へ探査機が派遣される。
長い航海の果てに天王星に到着、だが隊員たちがロケットから降り立つと、そこには緑の森林だった。
だが森の果てには不可思議なバリア(壁)があってそれを引っぺがすとそこは冷凍の壁だった。
その後。隊員が想像するたびにその風景が現前する。ある隊員は、恋人のことを想像するとその恋人が現前する、そして故郷の懐かしい村も出現する。
だがそのうち、「こんなはずがあるわけがない」、と正気に帰ると。
今度は巨大な怪物が隊員たちを襲ってくる。
洞窟に追い詰めるとそこに隻眼の巨大な脳がいてそれが隊員の意識をコントロールして幻覚を見させていたことがわかる。
脳は隊員を操り、洗脳して地球に送り込み征服しようとしていたのだ、
以上、古い作品で有名なものを三作だけピックアップしてみました。
これ以降、こういう系統のSF作品って
一杯作られていますよね。
おまけ(付録)
「火星年代記」の各短編 リスト ウイキペディアより引用になります。
この作品が書かれた1950年代からしたら、1999年は遠い未来だったのでしょうね?
1999年1月 - ロケットの夏 (Rocket Summer)
1999年2月 - イラ (Ylla)
1999年8月 - 夏の夜 (The Summer Night)
1999年8月 - 地球の人々 (The Earth Men)
2000年3月 - 納税者 (The Taxpayer)
2000年4月 - 第三探検隊 (The Third Expedition)
2001年6月 - 月は今でも明るいが (—And the Moon Be Still as Bright)
2001年8月 - 移住者たち (The Settlers)
2001年12月 - 緑の朝 (The Green Morning)
2002年2月 - いなご (The Locusts)
2002年8月 - 夜の邂逅 (Night Meeting)
2002年10月 - 岸 (The Shore)
2003年2月 - とかくするうちに (Interim)
2003年4月 - 音楽家たち (The Musicians)
2003年6月 - 空のあなたの道へ (Way in the Middle of the Air)
2004-05年 - 名前をつける (The Naming of Names)
2005年4月 - 第二のアッシャー邸 (Usher II)
2005年8月 - 年老いた人たち (The Old Ones)
2005年9月 - 火星の人 (The Martian)
2005年11月 - 鞄店 (The Luggage Store)
2005年11月 - オフ・シーズン (The Off Season)
2005年11月 - 地球を見守る人たち (The Watchers)
2005年12月 - 沈黙の町 (The Silent Towns)
2026年4月 - 長の年月 (The Long Years)
2026年8月 - 優しく雨ぞ降りしきる (There Will Come Soft Rains)
2026年10月 - 百万年ピクニック (The Million-Year Picnic)