聖女様と神官様の姉弟による勇者降臨の儀式
晴れ渡る春風が渡る今日このごろ。
日課の桑摘みを終えて一息ついたところに現れたのは弟サイールである。その顔にはなんとなく疲労っぽい何かを浮かべている。憂いの表情?
なんか、かお、赤い。
(せっかく色っぽいのにもったいないですねぇ~)
寄りすぎた眉の間を伸ばしてやる。
だが伸びきる前にガシッと手を握られる。両手である。
「姉上、大変なことになりました。具体的には世界のちょー危機です」
「あらあら、まあまあ」
「しかし、神はこの困難に対して打開策を用意してくれたのです……! 具体的には勇者召喚の儀式を与えてくださいました」
サイールはソコまで言い切るとクイッとメガネを押し上げた。彼はメガネっ子男子なのである。そしてメガネ男子にありがちなひ弱系。
その彼が腕に力を入れてぐっと叫んでいる。
力説である。
ぱちぱちぱちぱち~
「実はこの任務の一番大事な任務は聖女が行うんですが……シリン姉上」
「なあに、サイール?」
「姉上はこの神殿の聖女です!!」
「まあ、そうだったのですか!」
ってか、ここって神殿だったかしらぁ~?
なんとなく魔法を研究している人たちが集まっているだけの、見た目小奇麗な研究所っていうか……そもそも組織だっていたかしら?
「そうです、そうです。私が先程決めました。間違いないです」
「うう~ん……? でもぉ~……わたくしは、ここで蚕を育てているだけですしぃ~……?」
「では私の服を見てください。このローブ、聖職者に見えませんか?」
彼は確かに灰色のローブにを縄でくくっていて、清貧な聖職者、に見えなくもなかった。
でも何かやっぱりどっちかって言うと隠者的な何かのような~?
そもそも、街を離れてこんな変な魔導でいっぱいの廃墟のお城に暮らしているあたり事実世捨て人というか……?
「冒険者のパーティにいたら、魔法使いか賢者か聖職者だと思いますよう」
「つまりは私は聖職者ということですね、シリン」
「ええーと、はい?」
「聖職者の姉は聖女様だと思いませんか?」
「そうかも~……?」
「やはり、姉上は選ばれた聖女なのです……!」
なんだか分からなかったが、今日からシリンは聖女らしい。
これが神の定めと言うもの?
まあ、頭の良い弟が言うことなのだからそうなのであろう。彼はいつも冷静で、最低限の言葉しか話さないような子である。
「では今日からシリンは聖女ですよう」
「よしっ! では寝台に行きましょう、姉上」
「……?」
「世界を救う勇者制作の儀式ですよ! これから姉上は沢山の儀式を三日三晩普及で行ってもらうことになりますからね! 大丈夫です! 最初は痛いかもしれませんが、そのうち痛いのが良くなってきますよ!!」
その後十ヶ月後、無事勇者召喚の儀式が成功したのであった。