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異世界八険伝【旧】  作者: AW
激動のロンダルシア大陸
49/98

47.ティルス防衛戦2

リンネ→銀髪勇者な賢者、12歳、ボクっ娘

メル→青髪メイドな戦士、14歳、マジメっ娘

アユナ→金髪エルフな天使、11歳、『無邪気』

レン→赤髪二刀流な剣士、14歳、あたしっ娘

アイ→黒髪ロングの軍師、11歳、わたしっ娘

「アユナちゃん、水の準備は終わった?」

『ウンディーネ頑張ったんだよ!大丈夫!』


「メルさん、兵の配置は完了しました?」

「東西の城壁に護衛兵各350、冒険者の攻撃部隊各60、傭兵と志願兵の殲滅部隊各385を配置完了です」


「レンさん、補給も大丈夫そうですか?」

「うん、丸1日なら継戦可能だよ!」


「リンネさん、スノーとスカイには作戦を伝えてありますね?」

「うん、理解していると思う」


「南側の丘への転移の準備も?」

「隈無く歩き回ったから丘なら全部平気!」


「わたしの方も仕込みは万全です。皆さん、他に何か気になることはありますか?」


『本当に魔族は3つに分けて攻めてくるの?』

「魔族の主力はナーガです。飛行系でない以上はティルスの東西にある門を攻めるでしょう。ザッハルトの得意戦術は単純な力押しです。東西に各800体で攻め込ませて、自らは見晴らしの良い南の丘陵に300体程で陣取ると思います。ただ、分遣隊をいくつか作っているので、50体規模の小隊が厄介かもしれません」


「敵はナーガだけなの?」

「恐らく東西両軍にはナーガを指揮する将軍クラスがいます。推定レベルは50だと思ってください。勿論、南の本陣にもザッハルト以外に2体ほどは同級がいるでしょう。他に、100体毎にべリアル級のレベル40前後の部隊長がいるかもしれません」


「夜中だけど視界は平気?あたしは夜目で見えるけど、兵士達は大丈夫?」

「すぐに明るくなりますよ。因みに蛇族は熱センサーで敵を認知するようですね」


「その蛇族には弱点あるの?」

「雷や火魔法が弱点です。逆に水や土には強い耐性があります。目の構造上、光魔法で視力を奪うのは難しそうです。風や氷はメルさんからの報告ではダメージを与えていたそうです」


「リンネさん、マジックポーションはあと3つでしたよね?どのくらい倒せそうですか?」

「全力魔法が撃てて4回……今考えてるのは、ザッハルトに2回、東西の将軍クラスに1回ずつ。弱点属性だからもしかしたら倒せるけど、問題は闇の衣とボクが呼んでる黒いバリアみたいなの。多分、あれは魔法ダメージを半減させてる感じ。アユナちゃんの光魔法と一緒に撃つのが効果的だと思う」

『ならわたしはリンネちゃんと一緒に戦う!』

「そうですね、ボスクラスはリンネさんじゃないと倒せる気がしません。アユナちゃんをあげますので、お願いします!」

『やったー!貰われます!』

「アユナちゃん、自分の役割を分かってます?」

『あれでしょ?大丈夫よっ!任せてっ!』


「風向きは大丈夫かな?」

「今のところ山風、つまり北から南への風を予想していますよ。天気も大丈夫そうです」


「ナーガは魔法を使ってくるの?」

「魔力量からすると使いそうですが、今朝メルさんが戦ったときには使わなかったとか。気を付けるのは、水や毒……場合によっては毒霧にも。接近戦の際は念頭においてください」




 ボク達は各部隊長と共に作戦を詰めながら夕食中だ。徐々に緊張感が増していく。逃げられない戦い、多くの命を背負った戦いだということが、さらなる緊張感を高めている。



「リンネ隊の皆さん、集合してください!」

「アイちゃん、その……リンネ隊は恥ずかしいよ」

「分かりやすくて良いと思いますよ?」

『うん、うん、何だかやる気出るし!』

「考えるの面倒だからあたしもそれでいいよ?」

「はいはい、我慢しますよ……」


 ちょっと場に笑いが流れた?少しでも緊張が解けて良かった。ボクが生け贄になったけどね。


「リンネ隊の皆さん、配置確認です。

 東門にメルさんとティルスの方々5人、西門にレンさんとわたし、アイが行きます。リンネさんとアユナちゃんは臨機応変に動いて下さい!皆さん、頑張りましょう!!」


「「「はい!」」」


 今回、作戦全体はアイちゃんが考えてくれた。作戦通りにいけば勝てるかもしれないけど、数千同士がぶつかる戦争なんて初めてだし、正直凄く怖い。

 アユナちゃんとアイちゃんのレベルはそれぞれ17と9に上がってた。けど、正直まだまだ魔族と戦える実力はない。ボクの魔法が当たらなかったら、効かなかったら皆が死んじゃうんだと考えると、震えが止まらない。

 誰かとんでもない魔法で全部やっつけてよ!ウィズでも王国軍でも神様でも何でも構わない、とにかく誰かに、何かにすがり付いて全部任せてしまいたい!!誰か助けて!!


(リンネさん、心の声がだだ漏れですよ!というより、実はリンネさんの思考はわたしの中に常に流れてくるんです……魂が従属しているような感覚でしょうか)


(えっ!?うそ!凄く恥ずかしいんだけど!!)


(多分、全部じゃないですよ?わたし達のことを考えてくださるときだけかもしれません)


(そっか。今回の戦い、ボクが失敗したら皆が死んじゃうんじゃないかって考えてた)


(はい、聴いていました。リンネさんは強いのにいつも弱気で慎重で……。けど、皆はリンネさんの強さしか見えないから頼ってしまう。いつの間にか甘えてしまう。だからわたしはアユナちゃんを連れて別行動したんですよ)


(そこまで……考えてくれてたんだね……)


(メルさんはリンネさんのことを理解して下さっています。リンネさんがメルさんを凄く頼りにしているのも知っています。レンさんはメルさんにライバル意識を持っていますね……見ていて面白いくらいに)


(あはは!レンちゃんはそうかもしれない。けど、皆、強くなろうって頑張ってる。魔族を倒そうっていうより、ボクのことを守ろうって感じ。変なの!けど、凄く嬉しい。でも、アユナちゃんが……あのときみたいにもう誰も失いたくない。辛いよ!皆、死なないでよ!逃げたい。逃げ出して皆で仲良く暮らしたい……)


(リンネさん、本心じゃないですよね、それ。わたしに嘘は通じませんよ。リンネさんは全員を助けたいって思ってる。わたし達だけじゃなく、ティルスの全員を。やりましょうよ!思いっきりやっちゃいましょうよ!!魔人なんて、魔族なんてけちょんけちょんに倒して、皆でまた嬉し泣きするんです!大丈夫!力を合わせればきっと叶うんだから!皆を信じて、リンネさんは魔法撃ち終わったら寝てて下さい!)


(アイちゃん……ありがとう。アイちゃんが居てくれて良かった。でも、本心は……伝わってると思うけど、勝手に召喚して、捲き込んでごめんね!!)


(ううん、わたしもですけど、皆はそんなこと全く思っていませんよ!ここだけの話ですからね?皆が思っているのは……リンネちゃんと出会えて良かった!!って気持ちです。リンネさんもそう思ってくれたら、わたし達は幸せ者です!!)



 そう言って、アイちゃんはボクを優しく抱き締めてくれた。ボクが皆を励まさなきゃいけないのに、何だか逆に慰められちゃってて恥ずかしいね。ボクが頑張らないと!!


「アイちゃん、全兵士、市民に伝えたいことがあるの。風魔法で音を拡散出来る人をたくさん呼んでくれる?」




 ★☆★




 とうとう日が沈む。

 城門前の広場には、兵士や市民達、数万人が集まっている。


 夕日を背景に、ボクは城壁の上に立っている。柄にも無く演説をするために。

 でも、この戦いで死者を出さないためには大切なことがある。それは、生きようという強い意思だ。強い意思は、きっと不可能を可能にしてくれる最強の武器であり魔法だと思う。伝えるのは今しかない。とっても恥ずかしいけどね!





「皆さん!これから始まる戦い、

 勝とうとは思わないで下さい!」


 場が一瞬静まり返る。その後ざわめきに変わる。



「皆さんには家族が、友人がいるでしょう!

 だから、こんなところで死んではダメなんです。

 皆を守ろうという気持ちは尊いし、大切です。

 でも!!

 残される者達のことを本気(・・)で思うのなら、絶対に死んではいけません!!


 敵がいかに強くても、

 たとえどんな状況でも、

 生きることを諦めないで下さい!

 石にすがりついてでも、生きて下さい!!

 勝とうという気持ちではなく、生き残るんだという強い意思を持って下さい!!!」



 広場は静寂に包まれている。

 ボクは、浮遊魔法を使って城壁を降りる。

 凄く目立ってる。

 パンチラだけは十分に気を付ける。

 着地すると、兵士達の間を歩きながら話を続ける。



「皆で生き残って、

 笑顔で幸せだと言い合えるような、

 新しい世界を、

 新しい時代を作りましょう!」



 泣き出す人もいる。

 頑張るぞ!と気合いを入れる兵士もいる。

 ボクは、とびっきりの笑顔で続ける。



「新しい世界、新しい時代を作るためには、

 皆さん全員の力が必要なんです!

 皆さん全員が力を合わせて1つになることが、

 必要なんです!!


 明日から始まる新しい幸せのために、

 この戦いを、絶対に生き抜いて下さい!!

 その為にボク達はここにいます。


 ボク達を信じて、

 皆で生き残って、

 皆で笑顔で泣きましょう!!」



 ボクは仲間達、通称リンネ隊の所に到着した。

 皆で笑顔で手を振り、お辞儀をした。

 後半の行動に意味はない……気がする。

 何だかアイドルのコンサートみたいな勢い……。



「勇者リンネから力を貰いました!

 さぁ、皆さん!

 戦いの準備をしましょう!!」


 アイちゃんがコンサート化した流れをぶった切って助けてくれた。

 よし、皆、解散だよ!




 ★☆★




 夜10時過ぎ、偵察に出していたスカイが帰還した。興奮した様子ですがり付いてくる。とうとう来たか。


「魔族軍の侵攻を確認!さぁ、行くよ!」

「「『「はい!」』」」


[メルがパーティに加わった]

[レンがパーティに加わった]

[アユナがパーティに加わった]

[アイがパーティに加わった]



 ボクは南側の城壁上から南の丘陵を眺める。

 確かに禍々しい闇が蠢いているのが分かる。

 距離は1kmくらいか。


 やがて左右に別れて魔族の進軍が始まった。

 メルちゃんが予想した通りの展開になった。

 中央には南の丘陵に本陣が残り、左右からティルスの東西門へ攻めてくる……。さすが軍師様。


 今だ!!


「アユナちゃん、行くよ!」

『はい!』



 既に必要な魔力は練り上げている。魔力総量の9割を使い、何度も強敵を倒してきたサンダーバーストを全力で撃つ。

 イメージも既に固めている。半径10mの巨大な雷撃。落雷と共に周囲を巻き込む爆発魔法。これで、ザッハルトと、その周辺にいるであろう強い側近を倒しきる!!

 アユナちゃんも、セイントバーストなんてパクりな光魔法を撃つ予定だ。



「転移!」



 ボクとアユナちゃんは南側の丘陵へ転移した。

 素早く周辺を確認する。闇の中に体高5mにも達する巨大な蛇が映る。

 ザッハルトだ!距離20m、いける!


 アユナちゃんに目配せする!

 息を合わせる!


『セイントバースト!!』

「サンダーバースト!!!」


『!!』


 強烈な光!

 闇を(つんざ)く巨大な光の柱!

 爆風はボク達をも吹き飛ばす。

 意識を保つ。


 でも、倒せた気がしない。

 マジックポーションをがぶ飲みする。

 魔力を瞬時に練り上げていく。集中!


「アユナちゃん、もう1回!」

『そのつもり!』


『セイントバースト!!』

「サンダーバースト!!!」



 再び落雷と爆音が鳴り響く!

 マジックポーションをがぶ飲みする。残り1本。


 結果は確認しない。

 倒したことを信じる。

 ダメなら仲間が倒してくれる。



「スカイ!西門へお願い!」

『シュルル!!』


 ボクはスカイドラゴンを召喚、アユナちゃんと背中に騎乗した。本来は1人しか乗れないが、ボク達ちびっこ特権でくっつけば2人大丈夫みたい!


「アユナちゃん、しっかり掴まって!」

『分かった!』



 ボク達は西に迫る魔族軍を空から強襲した。


 デカいのがいる!



[鑑定眼!]


 種族:メデューサ(上級魔族)

 レベル:48

 攻撃:28.30

 魔力:39.65

 体力:25.50

 防御:21.40

 敏捷:19.10

 器用:18.75

 才能:1.95


「メデューサ、レベル48だ!」


 魔力を練り上げる。1発で仕留めたい、仕留めなきゃダメだ。ドラゴンだって倒したんだ、やれる!!

 半径5mに絞る、濃密な熱と光をかき集めた雷撃!魔力は……残り9割、全部使う!!


「吹き飛べ!サンダーバースト!!!!」


 意識が瞬時に飛ぶ。

 アユナちゃんが支えてくれる。

 マジックポーションを飲ませてくれる。

 何とか……ふぅ、スカイも消えていない……。



『倒した!!』


「よし!作戦通りに!!」


 ボク達はアイテムボックスから油を入れた壺を大量に投下した。

 アイテムボックスには300個の壺が入っている。東西の魔族軍にそれぞれ150個ずつを投下する予定だ。

 ボク達は、地上をいくナーガの群れに向かってがむしゃらに投下し続けた。やることはやった!後は仲間に任せる!!



「スカイ!東門へ!!」

『シュルル!』




 東門では門前で激しい戦いが始まっていた。

 スノーが防御魔法を張り、護衛兵が盾で門からの侵入を防いでいた。メルちゃんも最前線でデカいのと戦っている!



[鑑定眼!]


 種族:ゴルゴン(上級魔族)

 レベル:51

 攻撃:38.20

 魔力:39.30

 体力:28.55

 防御:24.85

 敏捷:22.10

 器用:20.30

 才能:1.95


「ゴルゴン、レベル51!」


 先に、油の壺を全て投下していく。

 アユナちゃんが居てくれて良かった。1人じゃこの作業は無理だ……3分掛けてやっと終わった。



「メルちゃん、お待たせ!下がって!!」


 1発で沈める!!

 全ての魔力を、魔力総量の10割を込める!

 もうマジックポーションはない、気絶覚悟だ。


「全力全開!サンダーバースト!!!!」


 全魔力で魔法を撃ったのは初めてだった。

 この雷撃、遠くフィーネからも見えたという。

 雷光が、雷鳴が、爆音が、大地を震わす!!


 その光景を眺めながら、

 ボクは完全に意識を手放した。




 ★☆★




 明るい光で目覚めた。

 ここは……ギルドの中かな。


『リンネちゃん!!』

「おはよう!」

「リンネさん!!」

「やっと起きた!おはよ!」


「おはよう……みんな!!どうなった!?」



 アイちゃんが説明してくれた。


 ボクは気を失ってスカイも消え、落下した。

 メルちゃんが何とか受け止めてくれた。

 あの後、皆はボク達が投下した油に火矢を飛ばしてナーガ部隊を容赦なく火攻めにした。


 混乱に陥ったナーガ部隊を攻撃部隊が強襲、さらに殲滅部隊が生き残りを始末していった。

 西門も同様にして全滅させることに成功した。


 城門には火が燃え移った。しかし、事前に準備した大量の水を市民がバケツリレーで運び、延焼を防いでくれた。全てが作戦通りだった。


 メルちゃん、レンちゃん、アイちゃんが、南側の丘陵に残存するナーガ約100体を倒してくれた。

 ザッハルトは結局、ボクの魔法2連発で消滅したらしい。良かった!


 被害は……負傷者が多数でたが、死者はいなかった!完勝だ!みんな生きてる!奇跡だ!

 ボク達は、皆で抱き合って泣いた。

 昼までずっとずっと泣き続けていた。

【魔人序列第9位 ザッハルト討伐時点】

リンネ(銀/12歳)……レベル25

メル(青/14歳)……レベル19

アユナ(金/11歳)……レベル18

レン(赤/14歳)……レベル16

アイ(黒/11歳)……レベル11

※ステータス詳細はのちほど。

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