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第4段 或る貴族、或る庶民大学生の部屋を探す

※歴史的な間違いは許してください。


※名前の話はもういいですよね。


※自己解釈なところもありますので、よろしく。

 実資おじさん(俺の養父)は言った。


「そういえばお前さんが生まれるちょっと前くらいに、屋敷に変な服着た男が現れたな」

「え!そうなの!どんな人だった?」


 俺は5歳児らしい聞き方で言ってみる。

「うーん、そうだな・・・。あ、おい!秋方しゅうほう!お前が殺したのはどんな奴だった?」

「えー、装束は見慣れぬものでしたなあ。何か『話せばわかる』などと言っておりましたが。」


 陰から姿を現した舎人を見て、俺は腰をぬかしてしまった。その秋方と呼ばれた人物こそ、『問答無用!』と言って俺を殺した張本人だったのだ。

 俺は体からにじみ出そうな殺気を抑え、極めて事務的に聞いた。


 こいつ、いつか絶対殺してやる。


「その人はどこに現れたの?」

「は。北の対の奥の部屋の前の廊下に」


 その部屋は俺が前から気になっていた部屋の辺りだった。その部屋だけ何故か封印されていたのだ。理由を聞いても叔父さんは答えなかった。ただ「陰陽師の言った通りにしただけだ」としか言わなかった。

 陰陽師に何を言われたか知らないが、さしづめ「この部屋からは恐ろしい霊気を感じます」とでも言ったんだろう。くだらない。


「おい、わが子よ。頼むからあの部屋を開けるなどとは言わないでくれよ」

「あら、考えを読まれてしまいましたか。仕方ありません。父上もご一緒ください」

「おい、冗談だろう?あそこの部屋は特に気をつけるように言われているんだ!」

「では、父上。私があのインチキ陰陽師が入るなと言った風呂に入っても、私に特には害はありません。むしろ健康そのものです。逆にあのインチキ野郎の言った通り風呂に入らない女房たちのほうが病になっているではありませんか」

「インチキとは何事か!それは言ってはならん!」


 だって、インチキだもん。

 でも、そのインチキ野郎の名前は安倍清明あべのせいめいって言うらしいよ。陰陽道ってインチキだったんすねー。ま、信じるか信じないかはアナタ次第です。


 それはそうと、俺はどうしてもその部屋を開けたかった。その部屋にはこの時代を生き抜くために必要な資料が山積しているのだ。みすみす見逃すわけにはいかない。

 と、そこにまた例のユーレイひいじいちゃん、実頼さねよりが来た。


『おい、あの部屋に入りたいのか』

『そりゃあ、そうでしょう。あの部屋は俺の前世の形見みたいなもんですから』

『まあ、努力して説得せい』

『え!?助けてくれないの!?』

『アレに関してはどうにもならんワイ』


 くそ。肝心なときに役に立たねえユーレイだ。


「仕方ねえー!」


 俺はそう言って駆け出した。

 あの部屋の入り口には鍵が掛かっていた記憶は無い。恐らく、あのインチキが書いた変な封印の紙が張ってあるだけだ。なら、破ればいい。

 しかし、この屋敷は無駄に広い。本来の俺の体力ならすぐに着くのだろうが、いかんせん体が5歳児なのですぐに疲れてしまう。例の部屋に着いたときにはもう、息が上がりきっていた。


「父上はこの部屋に入られたことはありますか?」

「いや、無い。なあ、本気か?」

「ええ、本気です」


 俺は、まず俺のうるさい父親を黙らせることにした。俺は前世で拳法をやっていた。急所は心得ている。


 俺は、実資さねすけの横を通り過ぎるふりをして、手を大きく捻り上げて、落とし、関節を決めてうつ伏せにさせた後、腕を肩の直上まで持っていき、その手に真上から打撃を加えてやった。

 すると、まあ、なんと言うことでしょう!実資の肩は見事に外れました。


「痛ってええええ!何をするんだ!痛ってええええええええ!」

「父上、後で肩は何とかしますから。少し黙っていてくださいな」


 それでも叫び続ける実資さねすけを尻目に、俺はその紙を剥がしにかかった。幸い、俺の一撃を見て衛士たちは特に邪魔もしてこなかった。


 普通ならここで、「な、なにい!封印が解けないだとぉ!」見たいな話になるはずなんだ。たいていは。

 しかし・・・

 

 ベリ!


 その紙はいとも簡単に拍子抜けするほど簡単に剥がれた。他に仕掛けがあるようにも思えない。


「や、やめろ!開けないでくれ!」


 実資さねすけは叫ぶが、最早肩が痛すぎるのか、床でのた打ち回ることしかやっていない。

 俺は意を決して開けた。

 そこには――――


 俺がこの世界に来た当時のまま、一切の変化の無い俺の部屋がそこにあった。

 机の上で起動したままのパソコン、その画面には俺が一時停止したままの『魔法少女 アニー』が映されていた。教科書やカバンがホコリを被っている様子も無い。

 本当にあの時のままなのだ。

 俺は一旦部屋の外に出て、いまだに叫ぶ実資さねすけの肩を嵌めてやった。ついていた電気が、薄暗い廊下に明るい光を注ぎ込む。


「父上、どうぞお入りください。別に怨霊も何もありませんから」

 半分強引に押し込んでやる。怯えながらも見てはいるようだ。それに続いて女房たちも入ってくる。現代の部屋に衣冠の男に十二単姿の女たちがいるのだ。不思議な光景すぎる。


「なあ、わが子よ」

「何でしょうか、父上?」

「ここは何なのだ?」


 俺の生い立ちを話すのも面倒だったので、テキトーに、夢で見たんすよ、的なことを言っておいた。だって、いきなり「俺は実は未来の人間です」なんて言い出せるわけも無く・・・。


「これらは何なのだ?」

 実資さねすけがパソコンと蛍光灯を同時に指して聞いてくる。


 怯えながらも興味津々なんすね・・・。


 実資に続き、他の人たちも俺の部屋を興味深げに眺めている。


 え、もう、さすがに長いって?じゃあ、続きは次回か・・・。まあ・・・そうか。


 じゃ、また!


 部屋関係は次回と言うことで!


 

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