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第24段 いま、再びの平安京へ。

「おふっ!」


 俺は突然腹に殴られたような痛みを感じ目が覚めた・・・ったくこのくだり何回目だよ。


 あーでも、痛覚あるってことは、西方浄土におさらばっていう結末は回避したわけだ。


『そんな簡単に西方浄土なんかにいけるもんか』


 あ、天の声・・・。


『おい、資平、起きるのじゃ・・・』


 あ、天の声②・・・。でもどっかで聞いたことのあるような・・・。


『資平、ワシじゃ実頼さねよりじゃよ』

『実頼?ああ、ひいじいちゃんか』


 覚えてるだろうか、俺をこの平安の時代に連れてきた張本人だ。最初のほうで俺を5歳くらいまで早送りしてくれたユーレイ。

 あれ、じゃあ天の声①は誰?


『ったく、天の声ってのはやめてくれないか?一応、実頼と同じ感じになってるんだから』


 ・・・おめー誰だよ。



『あのー、ひいじいちゃん。久々に会って早速悪いんだけど、この人誰?』

『おう、そうじゃな、ワシの父上、忠平ただひらじゃ』



 ついに、そこまでユーレイとしてご登場ですか。


 以下、(頼)・・・実頼 (忠)・・・忠平


『で、何ですか?』(俺)

『おぬし、未来へ行っとたじゃろう』(頼)

『1月だけね』(俺)

『しかしじゃ、こちらではもう8年ほどたっとるのじゃ』(頼)

『はあ!?じゃあ、その間誰が「資平」やってたの?』(俺)


『私だ。ついでに君をこの世界に再び召喚したのも私だ。京都の駅で赤ん坊を落としたのも、君に大阪の友人を装って電話したのも』(忠)

『でも、8年でしょ。もう二十歳じゃん。人間関係とかどうなってんの?』(俺)

『おぬしがそう言うと思って、詳細な記録をつけて置いたのじゃ。明日はおぬしが少納言としての勤めが始まる。それまでに、最近の部分だけでも読むのじゃ』(頼)

『ったく、俺は実頼の直系に藤原の本流と成ってもらいたかったのに、道長辺りも中々じゃねえか』(忠)

『ま、しばらくワシがおぬしの周りに控えておるから心配しなくて良いぞ』(頼)




 てか、『最近の分だけ』って言ったって、まじでこの記録・・・


 

 極太。




 仕方ない。読まないとクソめんどくさいことになりかねない。









 読んだ。死ぬかと思った。長い。字汚い。解読に時間がかかる。ヤバイ。


 よし、要点をまとめよう。


・俺は切りつけられて、意識を失ったが翌日目を覚ます。

・丹波での俺の政治は高く評価された。


・丹波守を3年勤めたあと、資平は左兵衛佐となる。この職はいわゆる天皇家の護衛する部署の次官。

・戦闘訓練は中の上または上の下の成績。(謝られた)

・政治力は中の人がもと関白太政大臣なので、すさまじかった。

・その結果が明日からの少納言昇進。


懐仁やすひとさま(一条天皇)とは今も音楽仲間で恐らく人臣の中では最も親密な関係。

居貞おきさださま(皇太子)は結局鼓をすることで一致。でも、あまり親密ではない。

・彰子さまは俺が魂吹っ飛ばした翌年に中宮として懐仁さまに入内、その後は主に3人でセッションをしているらしい。

・道長殿との関係は未だ良好。普段、内裏で会えば話をする。むこうはこっちを結構気に入ってるらしい。


・文乃ちゃん、もう24歳だそうです。独身らしい。でも、実頼いわく『別に今も美人で健康じゃぞ』だそうです。アプローチするならそろそろ頃合だろうか。

・中の人がおじいさんだったので、懐仁さまの娘、脩子しゅうし内親王が可愛くてしかなかったらしく、可愛がってたら結構懐かれてるそうです。


・道継(あのケンカ吹っかけてきた奴)は今も健在だそうです。俺が現代に戻ったときに調べてもみたが、道長関係で道継と言う名前は一切出てこなかったが。


 こんなもんか。ふう。疲れた。いやー、やばいな。ここまで人間関係進んだか。


 まあいい。とにかく、まだ読んでない部分も読んで、人間生活に困らないようにしないと・・・あとあれだな。今度はなるべく死なないようにするわ。




 あー。この一ヶ月、一応現代の大学生としてそこそこグータラしてたからなあ。明日から超早起きとか大丈夫かな、という心配はめっちゃある。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 翌朝。俺は、小野宮第から内裏へと向かう道を歩いていた。


 結局、この時代では8年ほどの歳月が過ぎていたわけだが、京の北のほうに何か変わったことがあるかと言えば、何も無い。実際、時代的に見ても後世で習うような大きな事件は起こっておらず、平和な時代だ。


 ただ、あと5年で懐仁さまは31歳で崩御されてしまうし、居貞さまが即位して三条天皇になると、道長殿と居貞さまの関係が悪いことから政治に支障が出てくる・・・とあまり良い時代では無くなる。




 小野宮第は内裏のすぐ近くにあるので、そんな事を考えていればあっという間についてしまう。


 中を進み、オフィスであるはずの、太政官の事務所へ行くと・・・。


「あれ?資平殿?どうされたのですか?」

「え?いや、だって少納言だし・・・ここが事務所だろ?」

「え?だって、資平殿は蔵人の兼官されてるから、ここじゃなくて普通に蔵人どころに行かれたほうが・・・」


 は?どーゆーこと?


『おい、じいさん、どういうことだ』

『すまん、書き忘れにいい忘れじゃ』




 おーまいごっど。



 ここでユーレイとケンカしても仕方ないので、教えてくれた少納言局の役人に礼を言って、蔵人所へ向かう。



「すみません、遅くなりました・・・」

「お、来た来た。よし、じゃあ朝会を始めよう」


 

 みんなの目が冷たい・・・ごめん、許して・・・。



 結局、俺は少納言兼蔵人としての初日を最悪のデビューで飾った。

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