第13段 文乃ペアレンツとお話です。
大活躍の後の話。果たして、何か進歩するのでしょうか?
「何があったんだ?あの場所で」
俺は今、文乃ちゃんの家にいて、文乃父から事情説明を要請されている。
やっべえ。何?ここで、「お宅の娘さんはあと少しで殺されるとこでした」とでも言えと!?
うーん。でも、返り血の説明も入るとすると、隠し切れないなあ・・・。
「もう!正直に答えます・・・」
と、いうことで
かくかくしかじか。
まるまるもりもり。
つくつくぱちぱち。
「なるほど・・・。それは改めて君にお礼を言わないといけないね。ありがとう、私の娘を救ってくれて・・・」
「いえ、謝らなければならないのはこちらです。文乃さんを家にお連れしたから・・・」
「それに関しては逆にありがたかったよ。こちらが礼を言わないといけない。君の家で何があったか知らないが、あんなきれいな着物を着て帰ってきてるしな」
「しっかし、君は噂どおり、しっかりしてるよ。帝や道隆さまが気に入られるのも良くわかるよ・・・」
そういえば、文乃父は俺のことを知ってる風だが、いったい誰なのだろう?苗字も知らないし・・・。
「なぜ、私の噂を・・・?」
「なぜって・・・。私はこれでも官人だからねえ。しかも、聖武帝の時代の学者、吉備真備の子孫にあたる家だしなぁ」
え?まさかこの家って実はすごかった感じ?
「じゃあ、あなたは・・・?」
「吉備敏実、従五位下・春宮学士、もちろん、居貞さまにお使いする身です」
「ああ」
なるほど、この人が春宮さまに吹き込んだのね・・・。
「しかし、話を聞く限りでは君は強いねえ。何か剣の指南を受けたのかい?」
「い、いえ。特には・・・。我流です」
実は、グリーンベレー流です。とは言えない。
「ほお・・・。そうかい。まあいい。それより君の筝には感動したよ。あれは中々だったよ」
「ありがとうございます」
「それに、帝に曲を教えたのも君らしいじゃないか」
誰だ、その話を漏らしたのは!
「そこで、君にお願いがある・・・」
「はあ!?」
ちょっと、文乃父、あんたこれ以上俺の生徒を増やす気かい?
「文乃に筝を教えてやってくれんか?」
まじすか・・・。(4回目)
文乃ちゃんと公然と一緒に入れる時間が長くなるのはいいことだが、俺の生徒多すぎません?俺、まだ8歳なんすけど・・・。
「どうかな・・・?」
「わかりました。ただ、週一回、午後だけですよ」
「おおっ!ありがとう!よろしく頼むよ!」
はあ・・・。俺は音楽家じゃなくて、貴族・政治家になりたいんだけどなあ。
それから俺は敏実(文乃父)から春宮さまの情報を仕入れたりしていると、警備の舎人が声を掛けてきた。
「竹千代様、そろそろ頃合かと」
「わかった、今行く」
「今日はありがとう。参議殿にもよろしく言ってくれ」
「竹千代くん、娘のことをよろしくね」
ちょっとお母さん!なかなか意味深な発言ですよ!今のは!
「ありがとう・・・。気をつけてね」
そういえば!俺、この家に入ってから、文乃父としか話してないような気がします!
「待たせたな」
「いえ。それより、急ぎましょう」
そうなのだ。時間的には、もう7時くらいなのだ。
ああ、でも時計がないと不便だな・・・。『部屋』にある腕時計つけるか・・・。
着きましたよ。無事に。ただ、そこには
「あら、竹千代、帰ったの!さあ、さっきの話の続きよ!」
「あの着物は袙じゃないです!さっきも言ったでしょう!『浴衣』というものです!夏の暑いときに装束の代わりに着るためのものです!」
「へえ、面白そうねえ・・・私が着れる大きさのものは?」
「ありませんよ!そんなに作れるものじゃないんですから!」
実際は、あれだって妹のですけどね・・・。
「帰っていただいていいですか・・・?もう、疲れましたので」
「あら、そう?めずらしいわね」
今日は色々なことがありすぎた。あの事件の話はまだ上のほうには伝わってないだろう。それより、明日は少し早めに内裏に行かなければならない。
検非違使庁に行って、事の顛末を話さなければならない。
その後に、懐平さま(天皇)と居貞さま(春宮さま)にそれぞれバンド(?)の練習と筝の稽古をつけなければならない。大変だ。
もう、疲れたから寝る。
・・・。じゃあな。




