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短編

目に入れても痛くないほど可愛いのは事実だが、とりあえず前を向け!!! 〜絶対領域に目を奪われそうになった俺の問題提起〜

作者: 池田瑛

 梅雨の季節がやって来た。憂鬱な季節だ。


 雨が朝から降っていると、学校にも行く気がしない。

 憂鬱な気分にさせられる。むしろ、ベットからも出たくない。

 プラグスーツに身を包んで、微笑んでいる少女(抱き枕)を股に挟んでこのまま寝たい。

 

 こんな時、どうすればいいか分からないの?


 普通に二度寝すればいいと思うよ。


 ・


 ぐぅ〜すか。ぴぃ〜。


 ・


 まぁ、そんな訳で、時間ぎりぎりまで寝ていた俺だが、

 学校には真面目に行くことにした。

 まぁ、遅刻確定だけどね。



 変わらず雨は降っている。


 いつもは学生で溢れている通学路は、閑散としている

(まぁ、通学時間はとっくに過ぎているから当たり前だが)。



 俺は、小さな二車線道路の信号に引っかかった。



 そして、俺は見つけた。

 道路の反対側に、立っている少女を。

 女の子の使う傘とは思えない渋い紺色の傘で、彼女の顔は見えない。

 彼女が使っているのは、父親の傘かも知れない。

 

 彼女の服装は、お決まりのテンプレだ。

 彼女が着ている制服は、近くの裕福な家庭の子が通うという私立の女子校の制服の春服。

 彼女がはいているタイツだって、学校指定の黒の無地だ。

 別に特別な格好という訳じゃない。


 しかし、俺は見てしまった。彼女のスカートとタイツの間を。

 何人も犯すことのできない絶対領域を。


 雨が降っていて、太陽が出ていないというのに、輝いているのは何だろう。

 街は灰色に染まっているのに、其処だけ白く際立っているのは何故だろう。


 ・


 信号が青になった。パターン青だ。

 俺は、足を前に出す。視線は、ターゲットから離さない。

 すれ違って見えなくなるぎりぎりまで、俺は領域を観賞し続ける所存だ。


 信号を待っていた、彼女も、絶対領域を絶賛、展開中なようだ。


 俺も、絶対領域を厨和ちゅうわしながらでないと、前には進めない。すれ違いたくないという無言の圧力が俺に襲いかかる。

 俺は、二度寝後の朝立ちセカンドインパクトに続く、サードインパクトを人類存続の為にも、アレしなきゃないのか。


 彼女は、真っ直ぐと俺に向かって歩いてくる。

 彼女の右手には、特殊コーティングされたスマフォを持っている。

 そして、彼女の右手の指は、高速で動いている。



 俺は、彼女の絶対領域を見つめながら歩き続ける。

 彼女は、なぜか俺に向かって歩き続ける。


 そして、接触の時は着た。


「わっ、危ねぇ」と、俺は叫んだ。


 彼女のさしていた傘の先端が、俺の眼球に突き刺さりそうになったのだ。


 俺の声で気がついたのか、彼女は顔を上げた。目に入れても痛くない程可愛い女の子だった。

 この、上目使い魔め! と俺は叫びたくなった。


「あ、ごめんなさい」と彼女は言う。


 そして、駆け足で横断歩道を渡って行った。逃げるように。別に、君の絶対領域を侵したりはしないよ、と俺は思う。


 ここで、この話はおしまいだ。


 運命と運命の交差というものは、横断歩道で人と人がすれ違うようなそんな何気ないことなのかも知れない。しかし、運命の交差というものは、一旦交差してしまうと、もう取り返しがつかないものだ。

 ああ、あのときが自分の幸福の未来への分水嶺だったのだと後悔してももう遅いのだ。この梅雨の雨のように、地面に落ちるばかりで、空へと上がったりはしない。時間の巻き戻しはない。振られたサイコロは、手元に戻ったりはしないのだ。


 俺は、信号を渡ったあと、後ろを振り返った。彼女は駆け足で遠くへと走って行く。


 俺は、彼女に対して、叫びたい。


「傘を差しながら、スマフォを操作して歩くのは危ないよ! 」


 そして付け加える何かがあるとしたら、こう言いたい。


「駅のホームで携帯を見ながら歩くのも危険だよ! 」と。

なろう風に、問題提起してみました。

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