チュートリアル~まるみの部屋
4.チュートリアル
キューブ>じゃあ、始めよう
まるみ>えっと、質問して良いんですよね?
へいほー>おっ、積極的―!
まるみ>いや、それほどの、質問じゃなくてですね。ここでする会話って、牧師とか、村娘とかに、なり切るんでしょうか?
腑腐婦>いや、普通に駄弁るだけだよ。あとは簡単な質問をしたりする。
へいほー>あとは、命題を述べても良い。こんな風に、「この中に1人、妹がいる!」
糖ラス>また、あんたは、のっけから……。
紺>いい加減にしなさいよ。
まるみ>……どうしたんですか?
キューブ>ドラキュラ・ダイスでは、序盤に嘘をつける者はいないんだ。
トライ>僕のドラキュラがまだできていないのが明白で、嘘をついて良いのはオリジナルのドラキュラただ1人の状況で嘘をついてしまったら、「私がオリジナルのドラキュラです」と言っているのと同じだからね。
腑腐婦>なのに、あの、へいほーのふざけた発言。どうみる?
まるみ>あ、ちょっと待ってください。妹といっても、へいほーさんの妹とは言ってませんよ。
キューブ>そうすると今度は1人で済むだろうかという問題が出てくる。1人だったとしても、どうやって確認する?
まるみ>いや、ネット上の遊びで、そこまで求めなくても……。
トライ>僕らが求めなくても、へいほーが求めてしまうんだ。彼が「命題」と言ったときは妥協しない。
糖ラス>つまり、本当に、妹がいるってことか?
紺>そのようだ。
糖ラス>一見、メンバーには女性は2人。
紺>でも、何があるか、わからないのがネット社会。
糖ラス>ネカマならぬネナベなんつうものもいるようで。
紺>ネット上で男のふりをしてる女ですな。
糖ラス>そう、あるいは君かもしれない。
紺>ああ、あるいは僕かもしれない。
腑腐婦>ああーーーーっ! 鬱陶しいっ! あんな馬鹿の言うこといちいち取り合うことないでしょ?
まるみ>えっ!? だって、嘘だったら、へいほーさんがオリジナルのドラキュラなんでしょう?
腑腐婦>そ、そう、だけど……。
まるみ>ひょっとしって、へいほーさんの妹って、腑腐婦さん?
腑腐婦>いや、そんな、バカなこと、あるわけ……。
腑腐婦>じゃあ、何か証拠を見せなさいよ。
糖ラス>いや、証拠見せろって言ったって、これチャットだし……。
キューブ>Webカメラすらないのにどうやって……。
紺>糖山桜も蒼井のご紋も見せられないよ。
糖ラス>遠山桜だろっ。糖山桜って何かっ? 金平糖でも咲いてるのか?
紺>スマン。スマン。
トライ>それに、蒼井のご紋って、蒼井優の何かか?
腑腐婦>そんなこたぁ、どうだっていいのよ! へいほーが私の兄だというなら、しょうこをみせなさいってのっ!
へいほー>それなんだけど……。
腑腐婦>何っ!
へいほー>俺は別に、あんたの兄を名乗り出ちゃいないんだが。
腑腐婦>えっ?
へいほー>言いだしっぺは、まるみちゃんだよ。
キューブ>それも、何気ない、超当てずっぽうな一言だったよ。
トライ>何をそんなに熱くなってるの?
まるみ>ひょっとして、触れてはいけない過去だったらごめんなさい。
腑腐婦>……。実はね、私には、幼いころに生き別れになった兄さんがいるの。とても大好きな兄さんだったけど、今どこいるかということはおろか、今生きているかということすらわからないの。
へいほー>大丈夫だ。兄さんは今も元気で生きている。そして、大切な妹を、今も、近くで見守っている。
腑腐婦>まさか。そんな、……まさか。
へいほー>飼っていたモルモットの名前はモルルちゃん。秘密基地は神社の縁の下。宝物は僕の学習机の一番下の引き出しを抜いた下。
腑腐婦>ほ、本当に、兄さんなの?
キューブ>はいっ、番茶はそれまで。
トライ>茶番だろ。
キューブ>初めてのドラキュラ・ダイスで、いきなりオリジナルのドラキュラになって、3人も僕にしたのは、なかなか大した度胸だけど、人選を誤ったね。紺さんもふざけるけど、腑腐婦さんとへいほーさんは仲が悪いようで、2人が組むと超悪ノリするんだ。
トライ>分かっている人は、まずこの2人を序盤で同時に僕にはしない。というわけで、君の負けだ。まるみちゃん。君がオリジナルのドラキュラだね。
まるみ>えーん。くやしぃー! なんで分かったの? って、人選が悪かったんですよね。えー? でもでも、腑腐婦さんとへいほーさんって仲悪いんじゃなかったんですか?
紺>ケンカするほど仲が良い。
糖ラス>って言うのとも違うんだよね。何というか。そういう時だけ、すべての垣根が取っ払われて、紳士協定発動みたいな感じ……というか。
紺>そういう時のシンクロ率は半端ないね。息ぴったり。アドリブ、バンバン。
キューブ>でも、さっきも言ったけど、初めてのドラキュラ・ダイスでオリジナルのドラキュラ引き当てて、だれの助けも借りずに、3人も僕にしたんだから、上出来だと思うぞ。
トライ>じゃあ、まぁ、もう1勝負、行きますか?
まるみ>はい、ぜひ。
こうして、再び、ドラキュラ・ダイスがふられ、配役が決定した。
5.まるみの部屋
ここで、舞台は、まるみの部屋へと移る。
そこそこ片付けられた女の子らしい部屋。
彼女は、今、部屋の中央のテーブルに置いたノートパソコンでチャットしていた。背中は、窓際に置いたベッドに預けている。広い部屋とは言えない。
まるみは、今回は、普通の人間役だった。
キューブ>じゃあ、始めよう。
まるみ>全員に同じ質問するのってありですよね。
トライ>もちろんありだよ。
まるみ>じゃあ、「あなたは、ドラキュラですか?」
糖ラス>ズベッ! あのね、まるみちゃん。考えてごらん。人間は本当のことを言うから、その質問になんて答える?
まるみ>「ちがいます」
糖ラス>そして、ドラキュラは嘘をこたえなければいけないから……。
まるみ>「ちがいます」って答えます。
糖ラス>だから、意味ないよ。
まるみ>そっか。……じゃあ、「今の天気はどうですか?」なんてどうですか?
腑腐婦>いいんじゃない。みんな住んでるところはバラバラだろうし……。私のところは晴れてます。
へいほー>この部屋、窓が無いんだよね。
紺>天気晴朗なれど波高し。
糖ラス>ちょっと曇ってる。
キューブ>あいにくの雨。
トライ>同じく。
まるみ>晴れているけど風が強いです。
腑腐婦>じゃあ、「今、聞こえた音」
紺>なんどすか? それ?
へいほー>あっ、なんか、急に、天井がミシミシいい出したんだけど。
そのとき、まるみの部屋の天井も、ミシミシと音をたてだした。
糖ラス>部屋の外を宅配ピザのバイクが通った。
まるみの部屋の外でもバイクの音がし、慌てて窓の外を見ると宅配ピザのバイクだった。
腑腐婦>赤ん坊の泣き声がうるさいわね。
まるみの部屋の前をベビーカーが通りかかり、赤ん坊が火がついたように泣いていた。
紺>あっ、なんか。大きな交通事故があったみたいな音がした。
まるみの部屋にも、切り裂くようなブレーキ音とすさまじい衝突音が聞こえてきた。そして、そんな事故を、目の当りにしたら、より一層激しく泣き叫びそうな赤ん坊の声が、ピタリとやんでしまったのが怖くて事故現場をのぞこうという気になれなかった。
まるみ>音は、もう、やめてください。
キューブ>どうしたの?
まるみ>いえ、偶然だとは思うんですが……。
トライ>じゃあ、「最近あった怖い体験」
へいほー>部屋の蛍光灯がいきなり割れる。
唐突に、まるみの部屋の蛍光灯が、破裂した。
腑腐婦>なぜか、ぬいぐるみが爆発。
ベットの上のまるみのお気に入りのぬいぐるみが、ゆっくり宙に浮いたかと思うと、破裂した。
キューブ>家具が倒れてきて、あわや下敷きに。
揺れてもいないのに、まるみの部屋の唯一の大きな家具が、鼻先をかすめて倒れていった。
まるみ>もう、ゆるして。あなたたち一体何なの?
キューブ>それは、最初に言ってある。ゲームが始まったら聞いても無駄だけどね。




