第5話 歓迎会
7月10日21時 イージス戦艦『陸奥』予備会議室
部屋の中には八人の少女と一人の少年がいた。机の上にはたくさんの料理が並んでいる。
彼女達は皆、第4艦隊の艦魂である。
一人の少女が少年に背中を押され、前にでた。
彼女はこのイージス戦艦陸奥の艦魂である。
「だっ第4護衛艦隊新司令になった、むっ陸奥です。経験はまだありませんが、せっ精一杯頑張ります」
パチパチパチ、と全員から拍手が送られる。
拍手が止むと、司会のきりしまが乾杯の音頭をとった。
「じゃあ、陸奥の司令就任を祝って、乾杯!」
皆、ビールやラムネなどを手に持って乾杯をした。
乾杯が終わると皆料理に手をつけ始める。
しかし中には唯一の人間である将に話し掛ける者もいた。
「秋月二士って何やってるの~?」
将の隣に座り焼鳥を食べながら聞く13歳くらいでツインテールの少女は、ミサイル艇おおたかの艦魂、おおたかである。
「陸奥の機関士だよ」
一方、陸奥はきりしまとさざなみと話していた。
「そういえばさざなみにも、艦魂が見える人がいたわよね?」
きりしまは20歳前半くらいで、腰あたりまでの茶色がかった黒のロングヘアの艦魂だ。どこか長門に雰囲気が似ている。
さざなみは17歳くらいでポニーテールの艦魂だ。
「ああ、浅間のことか」
「なんで一緒に来なかったんですか?」
「連れてこようとしたけど当直だってよ」
さざなみは答えた。よく見ると少し残念そうにも見える。
それに気付いたきりしまは、
「フフフ、残念ね」
若干含みのある笑顔を浮かべた。
そんな話しをしながら陸奥は、手近にあった缶を手に取り飲み始めた。
「あっ!陸奥それチューハイよ?」
「へ?」
きりしまにそう言われてから、陸奥は手に持った缶を見る。
その缶には「氷○」と書かれていた。
「初めて飲みましたけどおいしいですね」
陸奥は何事もなかったかのように言う。
しかし陸奥の顔は、若干赤くなり始めていた。
「大丈夫かしら」
「まあチューハイなら大丈夫だろ」
そんなことを話しながら将の所へ向う途中で、陸奥は2本目に手をのばした。
「秋月二士!ラムネなんか飲んでないで、お酒飲みましょうよ」
おおたかと話していた将の所へ、陸奥がやってきた。後ろにはきりしまとさざなみが苦笑いしながら歩いてくる。
「おい陸奥、酔ってないか?」
将が聞くと陸奥は、
「酔ってなんていませんよ」
と答えた。酔っ払いの台詞だ。
「そんなことより飲みましょうよ」
完全に酔っていると将は確信した。
しかし海上自衛隊で飲酒は禁止である。それでなくても将はまだ17歳、未成年だ。
「いや、俺まだ未成年だから…」
将は断った。だが酔っ払いはそれくらいでは引き下がらない。
「それくらい問題ありません」
将をここに連れてこようとした時よりも強気だった。おそるべしアルコールの力。
と言っても飲んだのはチューハイ2本だけなのだが。
「だから無理だって」
「大丈夫ですって」
陸奥は全く諦めない。
ちなみに今の現状は、陸奥が将の腕を引っ張り将はそれを引きはがそうと彼女の肩を押しているといった感じだ。
仕方がないので将は折れる他なかった。
「わ、分かっから、落ち着け」
近くにあったチューハイの缶を手に取ると、飲み始めた。
「俺は酒に強くないからな」
それを見た陸奥は、
「最初から飲めばいいんです」
と言った。
そんなことをしてからしばらくするときりしまが、
「そういえばまだ秋月君にみんなを紹介してなかったわね」
と言い、艦魂を全員一カ所に集めた。
「さっ、みねかぜから自己紹介」
みねかぜと呼ばれた少女は、将の方を向いて自己紹介を始めた。
「私はみねかぜだ」
そう言い切るとすぐに戻った。
次はかなり静かそうな艦魂だった。
「…さわかぜ。よろしく」
今朝陸奥やもがみにした紹介とは全く違い、一言だけだった。もちろん将が知るわけもないが。
最後の少女は集まってすらいなかった。
なぜかって?
会議室の机に突っ伏して寝ていたからだ。
あまりに幸せそうに寝っているので誰も彼女を起こすことはなかった。
かわりにきりしまが、彼女にの紹介をしてくれた。
「あの子はおきかぜ。いつも寝てるのよ。たまに会議中も寝てるしね」
「なんでですか?」
きりしまは答えた。
「単に眠いだけらしいわよ」
「それだけですか?」
「ええ」
将は納得したようなしないような微妙な表情をした。
全員の紹介が終わって、皆がまた散らばった頃、将は何となく陸奥の方を振り向いた。
彼は陸奥を見て呆れた。
なぜかというと、彼女はおきかぜのように机に突っ伏して寝ていたからだ。
もっとも、陸奥はおきかぜと違い、腕を机の下に伸ばしかなりだらし無い恰好だった。
将は近くにいたきりしまに助けを求めた。
「きりしまさん、どうしますか?主役が寝ちゃいましたよ?」
「そうねぇ、誰も陸奥の部屋は知らないし…」
きりしまは腕を組んで考える。
しばらく考えていると、向こうからさざなみが歩いてきた。
どうしたのかと聞いてくるさざなみに将は説明した。
するとさざなみはすぐに案をだした。
「それなら秋月の部屋に連れていきゃいいんじゃねえか?」
「いや!それは問題だろ!きりしまさんからもなんか言ってくださいよ」
さざなみの言った案は問題だと思い、将はきりしまに何か言ってもらおうとするが、
「それでいいんじゃないかしら」
と言う。
簡単に言うが、将は男の子で陸奥だって艦魂だが少女なのだ。
「いや待ってくださいよ。ベッドは一つしかないんですよ?」
もちろん理由はそんなことではないが。
女の子と同じ部屋に寝るなんて無理である。
「いやなの?それなら陸奥が起きた時にそう言っておくけど」
「そんなことはないですけど…」
将は答える。
しかしきりしまは、彼の声が先程と違いあまり元気がない事に気がついた。
「何かあったの?」
将は少し驚いたが、ここに来る前にあった事を話した。
「うーん…。それはどっちも悪いわね。でもそれはもう解決したんでしょ?なら問題ないじゃない」
「でも気まずいじゃないですか。さっきと違ってお酒も入ってないですし…」
着替えているところを見てしまったのだ。一応許してはもらったが、気まずいことにかわりはない。
起きた瞬間また物が飛んでくるかもしれないのだ。
「早く運ばないと風邪をひくかもしれないわよ?」
艦魂が風邪をひくかはわからないが、このままにしておくわけにもいかない。
他に選択肢もないのでしかたなく部屋に運ぶことにした。
「よっこいしょ。じゃあ俺も失礼します。おやすみなさい」
「うん、おやすみなさい。それじゃあ主役もダウンしちゃったし、今日はこれで解散ね」
きりしまが言ったことで、艦魂達は帰り始めた。
おきかぜはみねかぜの肩に担がれている。
将は陸奥を背負って予備会議室を後にした。
部屋に戻った将は電気をつけて、陸奥をベッドに寝かせた。
「ったく、世話かけさせやがって」
しかしその声に怒りは無い。
将は机の近くにあった椅子に座り目を閉じた。
そして今日会った艦魂のことを思い出していたがそのうち眠りについた。
艦魂情報誌 『広報かんこん』第1版
『広報かんこん発行開始!』
陸奥「って、なんですか?これ」
さざなみ「俺も知らん」
陸奥「あれ?なんでさざなみさんがいるんですか?」
さざなみ「さあ?」
おおたか「わたしもいるよ~」
きりしま「私もいるわよ?」
陸奥「前回までと変わりましたね。作者さんはどこですか?」
サムライ「遅れました。今回から『広報かんこん』を発行していきたいと思います」
さざなみ「発行なのかは知らねえが、何をやるんだ?」
陸奥「そうですよ。旗艦は忙しいんですよ?」
サムライ「えー、ここでは毎回いくつかの事について、話し合っていきます。例えば政治の事だったりちょっとした出来事だったり…」
おおたか「ふ~ん。で、今日は?」
サムライ「今日はまだネタがないので無し。」
さざなみ「それじゃあ第1版ですらない気がするんだが…」
きりしま「じゃあ、意見や感想、待ってるわよ」