『仲間は風と共に』
荒野の朝は冷たく、乾いた風が草を揺らしていた。
風走りは一人、丘の端から下り、前線へ向かって駆ける。
右手にジャベリン、左手に短槍。
軽装の身体が、重装歩兵の列を避けるように自在に動く。
遠くで小さな影が動いた。
同じく短槍を握り、軽やかに接近する少年。
風走りが視線を送ると、少年も目を逸らさず走り寄る。
「…同じ匂いがする」
風走りは思った。
この者も、止まらず前に出る者だ。
さらに森の影から、軽い鎧を纏った女戦士が現れた。
盾を携え、歩兵の間を駆け抜ける。
彼女の動きもまた、速度と間合いの支配に長けていた。
「…増えるかもしれない」
風走りは確信した。
孤独ではない、同じ思想を持つ者たちが自然と集まる。
丘の小さな窪みに集まる三人。
言葉は少ないが、互いの動きが自然と呼応する。
ジャベリンを投げるリズム
短槍の間合い
回収と再投擲のタイミング
すべてが無言で伝わる。
この小隊は、言葉よりも身体のリズムで意思を通じ合わせる。
初めての連携作戦が始まる。
小規模の歩兵隊を前に、三人は同時に動く。
盾列を揺さぶり
隙間に突き
倒れた敵からジャベリンを回収
歩兵たちは混乱し、前列が僅かに乱れる。
その音が、まるで風のささやきのように響いた。
丘の上から見下ろす風走りの目は、微笑むことなく確信していた。
「これが…仲間と共に走る、ということか」
■ 最後の一文
孤独の中で走るのもいい。
だが、風と同じ思想を持つ者たちと共に走ると、戦場は別次元になる。




