『騎士は速くない』
■ 平原の戦場
風が吹き荒れる平原。
敵は重装騎士の隊列。
鋼鉄の鎧が陽光を反射し、馬蹄の音が地面を揺らす。
歩兵なら逃げる距離。
だが、風走りは丘の上から身を低く構えた。
手には短槍、ジャベリンを握る。
「騎士は速くない…」
これが、唯一の自信。
■ 開幕
騎士が疾走してくる。
馬も鎧も、確かに重い。
その速度は想像より遅い。
右手のジャベリンを投げる。
馬と騎士の間に、正確に刺さる。
僅かに揺れた馬が、盾列を僅かに崩す。
「一本目は挨拶」
短槍に持ち替え、間合いに飛び込む。
騎士が振る槍をかいくぐり、肩口を突く。
金属の衝撃が腕を伝うが、止まらない。
■ 間合いの支配
馬上の騎士は前方しか意識できない
横に回り込むスペースは風走りが作る
ジャベリンを回収しつつ、二本目で再び突く
敵は力を持っても、速度が支配できない。
重装ゆえの鈍さ。
それが風走りの利点となる。
■ 反撃と駆け引き
騎士が槍を振る。
風走りは身体を低くし、盾列の死角を利用する。
回避、突き、投げ、回収のループが続く。
「考えるな、動け」
理性ではなく、身体が覚えたリズムが勝利の鍵。
■ 勝負の瞬間
騎士が馬を突進させた。
一瞬の判断で、ジャベリンを投げる。
馬は避けられず、盾と騎士の間に刺さる。
短槍で肩を突き、馬を翻さずに騎士だけを倒す。
背後から仲間が追撃する前に、既に離脱済み。
■ 戦後
平原は静かになった。
騎士の鎧と馬が土に沈む。
味方は戦術を理解したように、距離を置く。
敵は恐怖を抱えて撤退。
噂がまた一つ増える。
「あいつ…馬ごと止めたぞ」
「槍を拾う者や…」
「双槍の風走りか…」
■ 焚き火の前
槍を拭きながら、考える。
「重い装備は、速さを殺す」
「軽ければ、間合いは支配できる」
「止まらなければ、誰も追いつけない」
背中の予備ジャベリンを手に取る。
まだ戦える。まだ前に出られる。
■ 最後の一文
騎士は速くない。
双槍の風走りは、今日も勝利より先に間合いを支配する。




