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双槍の風走り  作者: 骨の和
風が走り出す
3/12

『槍を拾う者』

■ 戦場の朝

霧が薄く立ち込める丘陵地。

昨日までの戦で、草も土も踏み荒らされていた。

敵は歩兵隊。重装の盾を揃え、ゆっくり前進してくる。

周囲の味方は、まだ息を整えている。

彼だけは、軽く肩を回し、短槍とジャベリンを手にした。

「一本目は挨拶や」

自分に言い聞かせる。

■ 開幕

右手のジャベリンを投げた。

狙いは…感覚任せ。

盾の縁をかすめ、

敵の肩を貫く。倒れた。

だが、まだ密集は崩れない。

一歩進むと、左手の短槍が自然に構えられた。

突く。間合いを削る。

敵が避け、盾を振る。

でも、距離は詰まったまま。

■ そして拾う

倒れた敵から、ジャベリンを抜く。

血で滑る。

感覚が覚えていた。

投げて、突いて、拾う。

「まだ一本ある」

このループが、戦場で最も怖い行為となる。

■ 周囲の声

歩兵の誰かが、叫んだ。

「あいつ、抜きやがった!」

「背中からまだ持っとるぞ!」

「槍を回収する者や…!」

その瞬間、

自分の動きに名前がついた。

『槍を拾う者』。

■ 隊列崩壊

味方は距離を置きつつ支援。

敵は間合いに戸惑い、盾を重ねる位置が乱れた。

一本目で牽制

二本目で刺す

三本目で心理を揺さぶる

敵の歩兵は、隊列が壊れる感覚を初めて味わった。

■ 回収と撤退

数分の激闘。

体力は減ったが、槍はすべて回収。

後退しつつ、背中の予備ジャベリンを再装填。

再び備え、息を整える。

「まだ、戦える」

■ 戦後の評判

味方からは囁き

「双槍の風走りがやった」

敵は恐怖

「あの野郎、槍を拾いやがった」

酒場での噂

「三本目を抜く男」

まだ戦士本人は、

名前の重さを理解していなかった。

■ 夜の思索

焚き火の前で、槍を磨く。

血と泥を拭いながら考えた。

一本だけじゃ、迷う

二本あれば、間合いを失わない

でも、三本目を抜くと、戦場に名前が残る

槍は道具やない。

間合いを支配する意思。

■ 最後の一文

戦い方に名前はついた。

だが、戦士はまだ、走り続ける。

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