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双槍の風走り  作者: 骨の和
風は止まるか
10/12

『槍を失う夜』

夜の闇は戦場を覆い尽くしていた。

焔の光がときおり、鉄の鎧や盾をかすかに照らすだけ。

風走りは荒れた地面を踏みしめながら、右手にジャベリン、左手に短槍を握る。

背中の予備ジャベリンは底をつき、メインの短槍もすでに擦れ、先端には細かい欠けがある。

足音も息も、闇に吸い込まれるようだ。

敵の動きは音や影だけで察するしかない。

目を凝らすたび、敵がほんの少し見え隠れする。

「止まれば終わりだ…止まるわけにはいかない」

■ 夜襲の始まり

闇の中、敵兵が忍び寄る。

歩兵たちは小隊ごとに盾を構え、重心を低くしてじりじりと接近してくる。

ジャベリンを投げる。

だが闇のせいで狙いは狂い、ただ地面に突き刺さるだけ。

回収すら危険だ。

短槍で突こうと一歩前に出れば、視界の不安と敵の包囲で仲間が押し潰されそうになる。

一瞬、手が震えた。

だが、風走りは呼吸を整え、冷静に考える。

「道具は失う。だが動きは失わない」

■ 道具を失う恐怖

一投でジャベリンを失う

地面に落とした短槍は、すぐに拾えない

暗闇の敵は予測不能

恐怖が心をざわつかせる。

だが、足を止めるわけにはいかない。

全ての動作を無駄なく、素早く、正確に――

その一心で進むしかない。

■ 連携の極限

小隊の仲間と目で意思を通じ合わせる。

盾列の間に飛び込むタイミング、回避する角度、再投擲の瞬間。

ジャベリンを投げ、短槍で突き、回収して再び投げる。

一連の動きは、一秒たりとも無駄がない。

暗闇の中、速度と判断力が光る。

盾の金属が擦れる音、地面を蹴る音、敵の呻き…

すべてが耳に刻まれ、風走りの体に染み込む。

闇の戦場でも、意思は光を放つ。

■ 限界を超えて

仲間が盾列に押され、危うく囲まれそうになる。

瞬間、風走りは反応し、ジャベリンで敵の動きを止める。

短槍を手に再突入、仲間を救い出す。

「重装でも、止まらなければ崩せる」

闇の中、数秒の差で生死は分かれる。

道具を失い、体力も限界。

それでも前に出る意思だけは消えない。

■ 夜明けへの希望

戦場の一角で、焔の光が徐々に増してくる。

暗闇に沈んでいた敵兵の姿が見え、仲間の呼吸も整い始めた。

風走りは短く息をつき、背中を伸ばす。

ジャベリンがなくても、短槍が折れても、意思だけは誰にも奪えない。

■ 最後の一文

槍を失い、夜に包まれても、風は止まらない。

前に出る者の意思だけが、戦場を駆け抜けるのだ。

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