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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魂等級ゼロと嘲笑された俺は、異世界で規格外でした

作者: maruhiro

初投稿です。

至らない点もあるかと思いますが、楽しんでいただければ幸いです。

注意:暴力・流血表現あり






 気がつくと、真っ白な空間に立っていた。

どこなのか分からない。生きているのか死んだのかすら曖昧だった。


透明の柱の前で、奇妙な服を着た男が魂たちを並べている。


「次、天野蓮あまのれん


それが俺の名前だとしか思わなかった。

状況を理解する余裕もなく、ただ前へ進む。


男は俺の顔を見た瞬間、舌打ちした。


「……濁ってる。等級測るまでもねぇ。“残りカス”魂じゃねぇか」


周囲が笑い、胸が痛んだ。


生前の記憶がよぎる。

俺は誰も傷つけたことはない。

ただ、人に好かれようとして……裏切られ、損な役回りばかり押しつけられた。


その積み重ねが、間違った恐怖を植えつけた。


――俺と関わると、相手が損をする。


その恐怖は、この正体不明の空間でも消えなかった。


男(その名を知るのはずっと後だ)が杖を振る。

柱が光り――


バキィン!!


水晶が砕け散った。


「魂等級ゼロ。最低。価値なし。次!」


俺は光に呑まれ、意識が落ちた。


その瞬間、小さな声がどこかで囁いた。


――“魂純度、規格外値”。


その意味を知るのは、かなり後だ。



目を開けると木の天井が見えた。

体は動かず声も出ない。赤子になっていた。


ここがどこか分からない。

ただ、俺が泣くと部屋の火がふっと消えた。


「え……?」


父が灯した光魔法も、俺の近くで消えた。


「この子……魔力を飲んでる?」


そんな声が聞こえた。


しかし、両親の体から魔力を奪うことはなかった。

後に分かるのだが、魔力には種類がある。


火や光の魔法は“自然魔力”“精製魔力”で――

魂から切り離された“外の力”。


俺はそれを無条件で吸ってしまう。


だが人の体内にある“生体魔力”は、

相手を怖がったときだけ吸われる。


赤子の俺は両親を怖がっていなかった。

だから吸わない。


ただし村には噂が広がった。


「呪われた子だ」「魔力を奪う」


まだ言葉も話せない俺に石が投げられた。


(まただ……俺は、誰かを不幸にするのか)


前世の恐怖が心に根を張った。



8歳のときだった。

段差から落ちかけた子を助けようと手を伸ばした瞬間――


パシュッ!


光の粒が男の子から吸い込まれ、膝をついた。


「っ……力が抜けた……」


「アイツだ!! 魔力を食ったんだ!!」

「触られたら終わるぞ!」


俺は、ただ助けたかっただけなのに。


(やっぱり……俺は誰かを不幸にする)


村は本気で俺を避け始めた。


だが一人だけ、俺の前に立つ子がいた。


「レンは悪くない!! 助けただけだよ!!」


リナ。

俺を唯一、人として見てくれる存在。


俺は顔をそらした。


「……俺といると嫌われる」


「もう嫌われてるよ?」


あっけらかんと言って笑った。


「だからいいの。私はレンといるから」


胸が締めつけられた。



成長するにつれ、俺の力は異常になった。


薪は触れただけで砕け、

鍬は石を割り、

魔獣は拳一つで沈む。


自分が怖かった。


だがリナだけは隣にいた。


「レンは怪物なんかじゃないよ」


その言葉だけが、俺を繋ぎとめた。



十歳。魔獣の群れが村を襲った。


逃げ遅れた子供をかばい、魔獣を殴る。


地面が割れ、魔獣が沈んだ。


村人は恐怖し、リナだけが泣き笑いした。


「ありがとう、レン!」


俺は気づかないふりをした。

強くなっていくほど、人が離れていく。



十七歳。

山から異様な魔力が迫り、ロックブルの群れが村へ突進する。


「レン!!頼む!!」


「……一人で十分だ」


リナが袖を掴む。


「死んだら許さない」


「死なないよ」


ロックブルを掴み、地面に叩きつけ――

吸った魔力が体に巡り、筋力が跳ね上がる。


群れが吹き飛んだ。


リナが駆け寄る。


「レン!」


空が裂けた。


黒白の光が降り、皮膚を焼く。

聞き覚えのある嘲笑。


「効かない!?なぜだ!? 等級ゼロの分際で!!」


あの声。

忘れるはずがない。


(……あいつだ)


魂深層に刻まれていた“声の記憶”が蘇る。


「お前が強くなると俺の測定ミスがバレるんだよ!!

 俺の地位が終わる!!」


エルド――

名は知らずとも、声だけは覚えていた。


俺は手を伸ばし、迫る神力を吸い込む。


骨が焼けるような痛み。

だが――吸える。


吸った神力が俺の魂核で形を変える。

世界を砕く力へと。


そのまま、逆流。


光の鎖がエルドを掴み上げる。


「やめろ!!下等が俺に触るな!!」


「触られたくなかったら、最初から嘲笑うな」


「俺の人生が終わる!!」


「終わらせたのはお前だ」


光が弾け、エルドは消えた。


静寂。


リナがそっと俺の手を握る。


――魔力が吸われない。


「……あれ? 私、吸われてないよ?」


「たぶん……俺が“怖いと思わない人”の魔力は吸わないんだ」


リナの目が揺れる。


「じゃあ……私は?」


俺は手を握り返した。


「俺が……信じた人だ」


リナは泣きながら笑った。


「じゃあ、これからも手、つないでよ。

 レンがもう怖がらないように」


俺は頷く。


「……ああ。

 俺も、自分を少し信じてみる」


魂等級ゼロと嘲笑された俺は――

初めて、“触れてもいい手”を見つけた。


世界は、少しだけ優しく見えた。


――終わり。

お読みいただきありがとうございました。

初投稿の短編になりますが、少しでも楽しんでいただけていたら嬉しいです。


今回はひとまず短編として区切っていますが、

反応が良ければ続き(学院編・天界側の視点など)も考えています。


もし面白いと思っていただけましたら、

感想や評価をいただけると、とても励みになります。

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