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策士令嬢に踊らされた令息は、その感情の名前を知りたい

作者: 満原こもじ

 小柄な可愛らしい令嬢だなと思っていたけど、貴族学院の同級生であること以外、特に接点がなかったんだよ。

 フレデリカ・アンヴィル男爵令嬢とは。

 今思い返してみると、一番最初にフレデリカのことが気になったのはあの瞬間だったか。

 学園祭の片付けで遅くなって、迎えの馬車が来ているならそこまで送ろうとした時。


「ジェフリー様って、背が高いのですね」

「えっ? そ、そうかな」

「うふふ」


 これだけ。

 だから何だってことではないけど、少しドキッとしたというか。


 次も似たようなシチュエーションだった。

 貴族学院にいて雨が降ってさ。

 僕は傘を持ってたから、校舎から迎えの馬車までフレデリカを送る機会があって。


「ジェフリー様って、胸板厚いですよね」

「えっ? 毎日剣の素振りしているからかな」

「逞しいです。うふふ」


 それだけ。

 でもその日から素振りを倍にした。

 僕って単純なんだと思ったけど、だからと言って自分の性格なんか変わらない。

 もうこの時は完全にフレデリカを意識していたね。


 あまり選択講義では一緒にならなくてさ。

 どんな講義入れてるんだろうと、調べてみたりした。

 そうしたら令嬢らしくない、文官狙いみたいなカリキュラム組んでて。

 へえ、勉強家なんだなと思った。


 三回目は運命を感じさせられた。

 母上が人気歌劇の入場券をもらったのだけれど、たまたま欠席できないお茶会と被ってしまって。

 歌劇の方は僕が見に行くことになったのさ。


 いや、僕は歌劇なんて全然興味ないよ?

 でも『楽しみにしていたのです! 後で内容について聞きますからねっ!』と鼻息荒く言われてしまうと、見るのをサボるわけにもいかなくて。

 そうしたら劇場でニコニコしているフレデリカに会って。


「あら、ジェフリー様ではありませんか」

「えっ? フレデリカ嬢?」

「隣の席ですか? わあ、奇遇ですね」


 こんなことある?

 仲良く観劇して。

 終わった後に感想を語り合って。

 ノルマをこなすつもりだけの観劇が、とても楽しい一日になった。


 その後は普通の展開だよ。

 フレデリカもきっと僕のことを気にしていてくれたんだと思う。

 アンヴィル男爵家から婚約の申し入れがあって。

 そして僕とフレデリカは婚約したんだ。


          ◇


 ――――――――――フレデリカ・アンヴィル男爵令嬢視点。


「ジェフリー様っていいと思いません?」


 ジェフリー・ボイド男爵令息は、わたしの友人達の中では優良物件とされている殿方だったのです。

 真面目ですし背が高いですし、剣術が達者でお強いのですよ。

 しかもボイド男爵家の嫡男でいらっしゃいますし。


 ……ああいう方の婚約者になれたら素敵だろうなあ。

 一番真剣に検討していたのはわたしだったと思います。

 お父様が仰いました。


「フレデリカもそろそろどこに嫁ぐかというのを考えねばいかん年齢だが」

「はい。ボイド男爵家の嫡男ジェフリー様がいいなあと思っているのです」

「む? 具体的な名前が出てくるとはな。可愛いフレデリカを狙っている男がいるのか。不届きな」

「もう、お父様ったら」


 狙っているのはわたしの方なのですよ。


「ボイド男爵家なら問題ないではないか。富裕という話であるしな」

「ええ。でも逆にボイド男爵家から見ると、わたしは魅力的ではないのではないかと」


 皆がいいと思うくらいなら家格の上の令嬢をもらおう、というのが普通の考え方だと思うのですよ。

 うちアンヴィル男爵家と結んで、取り立ててメリットがありそうでもないですし。


「フレデリカが魅力的ではないなどということがあるものか。腹立たしい」

「そうではなくてですね。婚約の打診をしてもらいたいのですよ」

「構わんが……」

「でも半年待っていただけますか?」

「半年? 何か意味があるんだな?」

「あります。成功率を高めてみせます」


 わたしだって誇りある貴族家の娘。

 そしてわたし自身のプライドもあります。

 どうせなら望まれたいではありませんか。


 一つ取っ掛かりがあります。

 うちのお母様はボイド男爵家の御夫人、ジェフリー様のお母様と親友なのです。

 仕掛けてみせますよ。


 まず貴族学院の学園祭があった時、その片付けで。

 ジェフリー様は真面目で力持ちですから、遅くまで手伝っていると思ったのですよ。

 なるべくジェフリー様の側にいるようにして。

 作戦通り、校門のところにいる迎えの馬車まで送ってもらいました。


「ジェフリー様って、背が高いのですね」

「えっ? そ、そうかな」

「うふふ」


 最初はこれくらいでいいでしょう。

 次はやはり貴族学院でのことでした。

 雨の日に、たまたまジェフリー様が傘を持っていらしたので、チャンスだと思いました。

 傘を忘れたふりをして、前と同じように馬車まで送っていただきました。

 

「ジェフリー様って、胸板厚いですよね」

「えっ? 毎日剣の素振りしているからかな」

「逞しいです。うふふ」


 ちょっとは意識してもらったのではないかと思います。

 ジェフリー様、チラチラと私を見ていらっしゃいましたから。

 もっと見てくださってもよろしいですのに。


 頃合いだと思いました。

 お母様とジェフリー様のお母様を巻き込んで作戦会議です。


「まあ、フレデリカちゃん。うちのジェフリーと同じクラスだったの? ジェフリーったら何も言わないものだから」

「はい。わたしを婚約者にしてもらいたくてですね」

「こちらこそお願いしたいくらいだわ。私もフレデリカちゃんのような可愛い娘が欲しいもの」

「ありがとうございます。そこで協力してもらいたいのです」

「主人とジェフリーを説得しろということね?」

「ではなくて……」


 人気歌劇のチケットをどうこう。

 隣の席にホニャララ。


「……わかりましたけれど、迂遠ではなくて?」

「フレデリカ。直接頼んだ方が早いと思うわよ」

「はい。でもわたしはジェフリー様を惚れさせたいのです」

「「そうよねっ!」」


 二人は大喜びで協力してくださいました。

 恋愛事が好きなのですから。

 歌劇の日に楽しい一日を過ごして。

 満を持してお父様に婚約の打診をしてもらって。

 承諾をもらった時は小躍りするほど嬉しくて。


 今日は婚約後初めてのジェフリー様とのお茶会です。

 もうここからはいいんです。

 焦る必要なんか全くありません。

 ジェフリー様に居心地よく、まったりと過ごしていただければ。

 わたしもジェフリー様を眺めているだけで落ち着いた気分になりますし。


 わたしは頑張ります。

 せっかくわたしを選んでくださったのです。

 メリットを感じてもらわねばいけませんからね。

 貴族学院でも今年から商業や法学の選択講義を取ってるんです。

 ジェフリー様が将来ボイド男爵家を継いだ時、弱い部分かなと感じましたから。


 お茶を口に含み、しみじみとジェフリー様が言います。


「フレデリカと婚約できて嬉しいよ。運命かと思ってるんだ」


 はい。

 ジェフリー様のことは初めからお慕い申しておりまして。

 色々心を揺らすために操作するよう計画しまして。

 お母様達に協力してもらってまで作り上げた……。


「運命ですね」

「ロマンチックなことが多かった気がして」

「うふふ、ロマンチックでしたか」

「この感情の名前を知りたい」


 思わず目を見張りました。

 何と詩的な表現なのでしょう。


「……学院でジェフリー様は人気があるのですよ」

「そうなの?」

「はい。でもわたし、ますます好きになってしまいました」

「ええ?」


 その照れたような少年っぽさもいいですね。


「わたし以外に素敵なところを見せてはダメですよ」

「約束しよう」


 恋なのはわかっているのです。

 それよりもシチュエーションに揺さぶられる、この感情の名前をわたしも知りたいと思いました。

 ジェフリー様とわたしの秘密です。

 初めてAIを使いました。

 『エモいシチュエーションを教えて』って聞いただけですけれど(笑)。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
キャッチフレーズは『運命は作れる♡』、って感じかな。 余計な背景や外野がなく、すっきりまとまっていて読みやすかったです。 末永くお幸せに〜 それにしてもAIですか…… 最近、◯oogleで検索すると…
あっまーい! 策士のフレデリカちゃん、可愛いですね 甘酸っぱくてよきよき。
まさかAIにエモシチュを指南されるとは・・・! AIめ・・・やりおる
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