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電脳聖女 ジャンヌ・ローゼ  作者: 月織


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第15話:新たなる力!ローズブレード覚醒!

ナビゲーターとアルテミスとの間に生じた、あの苦い亀裂。コード・カイオスが仕掛けた「心のノイズ」は、私の信頼の絆を試す、卑劣な罠だった。あの時、私は、ピュールとの信頼、そして、私自身の「信じる心」を信じることで、一歩を踏み出した。その結果、記憶改竄の危機は脱し、仲間たちとの絆も修復の兆しを見せ始めている。


「ナビゲーターさんから、限定データパッケージを受信しました。解析を進めます」

「ピュール、ありがとう。アルテミスさんにも、私の映像を送ってくれたのね」


ピュールが、私たちの間の溝を埋めるための橋渡しをしてくれたおかげで、緊張は少しずつ解けていた。彼女が送った、ローゼとしての純粋な感情が詰まった映像は、アルテミスの心を動かしたようだ。


けれど、この束の間の平和が長くは続かないことを、私は知っていた。ヴォイド・ネメシスは、必ず、次の手を打ってくる。そして、その予感は、すぐに現実となった。


「ほのか! 緊急警報です! ホープタウン、第二エリアで、ヴォルテックス・クラッシュが再出現しました! 今回は、単独ではなく、複数の強化兵を引き連れています!」


ピュールの声が、私の部屋に響き渡る。ヴォルテックス・クラッシュ。あの鋼鉄の壁。前回の戦いでは、必殺技すら封じられ、かろうじて逃げ帰った相手だ。


「また、あの質量歪曲……!?」


私の心臓が、嫌な音を立てて跳ね上がる。前回は、精神的にも消耗していたけれど、今回は、精神的には回復傾向にある。しかし、それでも、あの圧倒的なパワーの前に、勝ち目があるのだろうか。


「ピュール、今の私とローズブレードで、奴に対抗できる確率は?」

「現状のデータでは、ヴォルテックス・クラッシュ単体に対して、有効打を与える確率は15%未満。強化兵を引き連れている場合、生存確率も極めて低くなります」


絶望的な数字だ。それでも、私は立ち上がった。


「正義と希望”の結晶!」


迷いはなかった。私が守るべき日常がある。笑顔を信じてくれる人々がいる。


「電脳聖女!」


光が私を包み込み、純白の聖衣が身体に馴染んでいく。


「ジャンヌ・ローゼ!!」


ホープタウン第二エリアに降り立つと、そこはまさに戦場だった。ヴォルテックス・クラッシュの巨大なシルエットが、街の中心で、無慈悲にビルを粉砕している。周囲には、数体の小型ながらも強力そうな強化兵が、破壊の舞を踊っていた。


「愚かな光よ。また、戯れに来たか」


ヴォルテックス・クラッシュの、重々しい声が響く。その傍らで、強化兵たちが、まるで意思を持った鋼鉄の塊のように、一斉に私へと襲いかかってきた。


「させない!」


私は、ローズブレードを抜き放ち、迎撃する。強化兵たちの攻撃は鋭く、前回よりも連携が取れているように見える。彼らの放つ衝撃波は、前回よりも質量が強く、私の光の障壁を容赦なく打ち砕いていく。


「くっ!」


私は、強化兵たちを捌きながら、ヴォルテックス・クラッシュへと肉薄しようと試みる。しかし、彼の周囲には、常に質量歪曲のフィールドが展開されており、近づくだけで、身体が歪められるような圧力を受ける。


「お前のか細い攻撃など、不要だ! 私の『破壊の舞踏』こそが、この世界の真理!」


ヴォルテックス・クラッシュが、巨大な右腕を振り下ろす。回避は間に合わない。私は、全身の力を込めて、その一撃を、ローズブレードで受け止めることを選んだ。


ドオオオオオンッ!!


衝撃が、私の全身を襲う。ローズブレードが、その衝撃を受け止めきれず、金属を擦るような甲高い悲鳴を上げた。


「警告! ローズブレードのエネルギーバッファが限界に達しています! 物理的負荷が、刀身構造に深刻なダメージを与えつつあります!」


ピュールの悲鳴にも似た警告が響く。私の手に伝わる振動は、尋常ではなかった。刀身の表面に、目に見える亀裂が走り始めている。


「まだ……まだ諦めない!」


私は、強化兵たちの連携攻撃を捌きつつ、ヴォルテックス・クラッシュに必死に反撃を試みる。しかし、私の攻撃は、彼の分厚い装甲に弾かれ、僅かな火花を散らすだけ。


「無駄だ、ジャンヌ・ローゼ! その剣は、もうすぐ砕け散る!」


ヴォルテックス・クラッシュは、嘲笑うかのように、さらに質量歪曲のフィールドを強めた。周囲の地面が盛り上がり、空間そのものが、重力に押し潰されるかのように変形していく。


「うぐっ……!」


私は、その場に膝をついた。心臓が破裂しそうだ。身体の細胞の一つ一つが、この重圧に耐えきれず、悲鳴を上げている。


「ほのか! このままではローズブレードが砕け、あなたも深刻なダメージを受けます! 戦闘継続は困難です!」


ピュールの声が、現実味を帯びて響く。


「耐えろ……! 私の剣が砕けても、私の心は折れない!」


私は、眼前に迫るヴォルテックス・クラッシュの巨体を、必死に見据えた。彼の全身を覆う装甲の亀裂――そこから、微かに、内部のエネルギー反応が見える。


「あそこだ……! 彼の装甲の、僅かな隙間!」


それは、彼が衝撃波を放つ際、一時的に歪曲フィールドが弱まる、ほんの一瞬の綻びだった。前回は、その一瞬にすら到達できなかった。


「ピュール! 私の歌声のエネルギーを、全てローズブレードに集中させて! 必殺技じゃなくていい! 剣を『強化』するんだ!」


「しかし、それは、あなたの全エネルギーを枯渇させるリスクがあります!」


「構わない! 奴の装甲を、この剣で、叩き割る!」


私は、自分の全てを、この一撃に賭ける。ジャンヌ・ダルクの魂が私に与えた希望。人々と築いた絆。それら全てを、私の心の歌に変え、ローズブレードに注ぎ込む。


「正義と希望”の結晶!」


私の内側から、今まで感じたことのないほどの熱が湧き上がる。それは、燃え尽きる寸前の炎のような、激しく、官能的なまでのエネルギーの奔流だった。


「電脳聖女!」


ローズブレードが、純白の光を放ち始めた。それは、以前の「ローゼ・シンフォニー」のような拡散する光ではない。一点に収束し、一点を貫くための、極限まで研ぎ澄まされた、神聖な光だった。


「ジャンヌ・ローゼ!!」


私は、最後の力を振り絞り、ヴォルテックス・クラッシュへと突進した。強化兵たちの攻撃を、文字通り光のオーラで弾き飛ばしながら。


「小賢しい足掻きを!」


ヴォルテックス・クラッシュは、その最後の攻撃を放つべく、エネルギーを集中させ始める。彼が質量歪曲フィールドを最大化する、まさにその瞬間。


「今だ!」


私は、その歪曲フィールドの最も弱い一点を狙い、渾身の力を込めて、強化されたローズブレードを突き立てた。


ギチギチギチッ!!


信じられない光景が展開した。強化されたローズブレードは、ヴォルテックス・クラッシュの分厚い装甲に、まるで紙を破るかのように、深い亀裂を入れたのだ!


「な、何だと……!? この痛みは……!」


ヴォルテックス・クラッシュの叫びが、ヴァーチャル空間に響き渡る。彼の装甲にできた亀裂から、黒い内部エネルギーが噴き出し始めた。


「私の歌声は……決して無駄じゃない!」


ローズブレードが、輝きを増し、刀身全体が、神々しい白銀へと変化した。その輝きは、ヴォルテックス・クラッシュの質量歪曲の力を完全に打ち消し去るほど強大だった。


「解析! ローズブレードが、ほのかの精神エネルギーと共鳴し、一時的な『絶対防御・絶対貫通』の強化形態へ覚醒しました! 形態名:ローズブレード・アブソリュート!」


「ローズブレード・アブソリュート……!」


新しい力の覚醒。それは、私が全てを賭けた一撃がもたらしたものだった。


私は、覚醒したブレードの力を、そのまま残りの強化兵たちへと叩き込んだ。ブレードから放たれる一閃は、全てを断ち切り、強化兵たちは、光の粒子となって崩壊していく。


「貴様……! その剣をどうやって……!」


ヴォルテックス・クラッシュの動きが鈍い。彼の装甲が、覚醒したローズブレードの力によって、内部から崩され始めているのだ。


「これで、終わりよ!」


私は、渾身の力を振り絞り、ヴォルテックス・クラッシュの核らしき部分を、強化されたローズブレードで、渾身の一撃で斬り裂いた。


バキィンッ!!


轟音と共に、ヴォルテックス・クラッシュの巨大な装甲が砕け散り、内部から噴き出したエネルギーが、爆発的に拡散した。


「ぐあああああッ!!」


彼の叫び声が響き渡り、ヴォルテックス・クラッシュは、巨大な光の塊となって爆散し、ホープタウンから、その脅威は完全に消え去った。


街は、再び静寂を取り戻す。人々は、破壊の光景に怯えながらも、無事でいることに安堵の声を上げていた。


私は、その場に、へたり込むように倒れ込んだ。ローズブレードは、眩い白銀の輝きを失い、再び、元の美しい剣の姿に戻っていた。


「ほのか……! やりましたね! 生存確率が絶望的だった状況から、まさかの逆転勝利! ローズブレードの覚醒、成功です!」


ピュールが、私に駆け寄ってくる。


「ローズブレード・アブソリュート……」


私は、その言葉を噛みしめた。全ての力を使い果たした。全身の感覚が麻痺しているようだが、心は、何よりも満たされていた。


「私、諦めなくて、よかった……!」


コード・カイオスのデマの渦中で、絶望の淵に立たされた私。それでも、仲間の協力を得て、自分自身の力を信じ、この覚醒を掴み取ったのだ。


この勝利は、物理的な力だけではない。コード・カイオスの情報戦に対する、私自身の心の勝利でもあった。


私は、勝利の余韻に浸りながらも、固く決意した。


この新たな力「ローズブレード・アブソリュート」と共に。

私は、もう、誰にも、何も、奪わせはしない。

コード・カイオスの嘘も、ヴォルテックス・クラッシュの暴力も、全て打ち破ってみせる。


それが、正義と希望の結晶、電脳聖女ジャンヌ・ローゼの、新たな誓いだ。

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