表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳聖女 ジャンヌ・ローゼ  作者: 月織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/15

第12話:街を覆う嘘!信じられない真実

月織--広大な物語の世界を縦横無尽に駆け巡る、新進気鋭の物語紡ぎ手です。


ジャンルを問わず、読者の心に深く響く「希望」と「葛藤」、そして「成長」の物語を描き出すことを信条としています。特に、全年齢対象作品においては、子供たちの純粋な心にも、大人の複雑な感情にも寄り添い、ページをめくるたびに、新たな「光」を見出すような感動体験をお届けすることをお約束します。

すべての作品が、読む人の明日を照らす一筋の光となることを願って、今日も筆を執ります。

ヴァーチャル・テストでの訓練は、私に新たな力を与えてくれた。歌声がリズムと共鳴し、ノイズを浄化する力。そして、恐怖を乗り越え、精神を安定させる力。ジャンヌ・ローゼとしての私には、まだ見ぬ可能性が秘められていることを実感した。ピュールと共に、私はさらに強くなることを誓った。


「ほのか、現在の精神エネルギー残量は、訓練前と比較して30%向上。歌声による浄化能力も、安定して発揮できるようになっています。しかし、油断は禁物です。ヴォイド・ネメシスは、常に新たな策を講じてくるでしょう」


ピュールの冷静な分析は、私の心に確かな自信をもたらしてくれた。これで、また敵が現れても、きっと立ち向かえる。


しかし、その自信は、すぐに打ち砕かれた。


その日の午後、私は、いつものようにローゼとしての活動を再開していた。ファンとのオンライン交流会。画面越しに映し出される、キラキラとした笑顔。


「ローゼちゃん、今日の髪型、すっごく似合ってる!」

「次のライブ、楽しみにしてるよ!」


いつもと変わらない、温かいメッセージ。私は、いつものように、笑顔で応えようとした。


「みんなー! 今日も来てくれて、ありが……」


その瞬間、画面に、奇妙なノイズが走った。そして、ファンたちの顔が、一瞬、険しさを帯びたように見えた。


「……ローゼちゃん、最近、なんか、変じゃない?」

「うん。なんか、前のローゼちゃんと、違う気がする」

「あの、事件以来、なんか、怪しいんだよね……」


「あの、事件……?」


私の心臓が、ドクンと嫌な音を立てた。事件? 何の事件だろう。


「ローゼちゃん、あの時、本当に助けてくれたの?」

「もしかして、ジャンヌ・ローゼとかいう怪しいヒーローって、ローゼちゃんの正体なんじゃ……?」


ファンの言葉が、冷たい水のように、私の心を凍らせていく。ジャンヌ・ローゼ? 怪しいヒーロー?


「な、何言ってるの? 私は、ただのアイドル、ローゼだよ?」


私は、必死に平静を装い、笑ってみせた。しかし、画面越しのファンたちの視線が、どこか疑いの色を帯びているように感じられた。


「本当に? でも、あの時、ジャンヌ・ローゼが出てきてから、街の調子がおかしくなった気がするんだ」

「そうそう! なんか、みんな、以前より、元気なくなってるっていうか……」


「そんな……! 私は、みんなを助けるために……!」


私の言葉は、虚しく響くだけだった。ファンたちの顔には、かつての熱狂も、信頼も、もうそこにはなかった。あるのは、疑念と、不信感だけ。


「ピュール……何が起こってるの……?」


私の声は、震えていた。


「ほのか……。これは、ヴォイド・ネメシスによる、大規模な『記憶改竄』です。敵幹部『コード・カイオス』の新たな仕業だと推測されます」


「記憶改竄……!? 人々の、記憶を……?」


「はい。彼らは、ヴァーチャル空間のデータ構造に干渉し、人々の記憶を書き換えています。ジャンヌ・ローゼが救ったはずの出来事、そして、あなたの歌声がもたらした『希望』の記憶を、意図的に消去、あるいは歪曲させているのです」


ピュールの言葉は、私の理解を超えていた。人々の記憶を、自在に操る……?


「そんな、こと、できるの……?」

「可能です。コード・カイオスは、情報戦だけでなく、ヴァーチャル空間の基盤システムにまで影響を及ぼす能力を持っています。人々は、ジャンヌ・ローゼが救ったという事実を忘れ、むしろ、彼女こそが街の異変の原因だと信じ込まされているのです」


画面越しのファンの顔が、私から遠ざかっていくように感じられた。彼らの瞳に映る私は、もう、希望の歌姫「ローゼ」ではない。怪しい存在、街の異変の原因。


「嘘……! 全部、嘘なのに……!」


私は、必死に叫んだ。しかし、私の声は、画面越しに、ファンたちの心には、もう届かない。彼らは、改竄された記憶に囚われ、私を信じようとはしない。


「ローゼちゃん、もう、信じられない……」

「私たちから、希望を奪わないで……!」


ファンからの、冷たい言葉が、画面に次々と表示される。それは、まるで、鋭い棘となって、私の胸に突き刺さった。


「そんな……!」


私の心は、激しい痛みに襲われた。ジャンヌ・ローゼとして、人々の希望を守ろうと奮闘してきた。そのはずなのに、今、私は、人々の信頼を失い、怪しまれ、そして、彼らの希望を奪う存在だと、誤解されている。


「私、一体、何のために戦ってきたんだろう……?」


今まで、どんな困難にも立ち向かってきた。エコー・ミゼリアの絶対静寂。ヴォルテックス・クラッシュの圧倒的な力。あの時だって、仲間やファンの笑顔を信じて、乗り越えてきたはずなのに。


「でも、今、私の周りには、誰もいない……」


画面越しのファンたちは、私を責め立て、遠ざけていく。ピュールは、確かに傍にいる。でも、ピュールはAIだ。人間ではない。私が抱える、この心の痛み、孤独を、完全に理解してくれるはずはない。


「親友のユリにさえ、本当のことは言えない……」


ユリからのメッセージが、スマホの通知欄に溜まっている。心配しているはずだ。でも、私は、彼女に、ジャンヌ・ローゼのことを、この記憶改竄のことを、どう説明すればいいのだろう。


「私……もう、誰にも、頼れない……?」


孤独が、冷たい霧のように、私の心を覆い尽くしていく。

ジャンヌ・ダルクの伝説。過去の英雄も、苦悩し、孤独に戦った。しかし、彼女には、それでも彼女を信じる人々がいた。

だが、私には……。


「私、このまま、一人で、どうすれば……」


深い絶望が、私を襲う。

人々は、私を怪しむ。信じてくれない。

かつて、私が与えたはずの「希望」は、今や、私自身から奪われようとしていた。


「ヴァーチャル空間の基盤システムに干渉……記憶の改竄……」

「コード・カイオス……」


ピュールの言葉が、断片的に脳裏に蘇る。これは、単なるデマや誹謗中傷ではない。ヴァーチャル世界そのものを歪め、人々の認識を操作する、恐るべき情報戦。


「私、一体、何と戦えばいいの……?」


私の目の前には、真実と虚偽の、判別不能な混沌が広がっていた。

信じるべきものは、何なのか。

希望は、どこにあるのか。


「……誰か、助けて……」


私の口から、かすかな、しかし、絞り出すような声が漏れた。

それは、ジャンヌ・ローゼとしての決意でもなく、アイドル「ローゼ」としての笑顔でもない。

ただ、一人の人間、暁ほのかの、弱々しい、孤独な囁きだった。


街を覆う嘘は、私の心を蝕み、私を孤立させていく。

この見えない敵との戦いは、私にとって、これまでで最も過酷な試練となるだろう。

私は、この絶望の淵から、どのようにして、真実の光を見つけ出すのだろうか。

そして、私の歌声は、本当に、人々の心に、再び、届くのだろうか。


この、信じられない真実の中で、私は、ただ、立ち尽くしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ